私はコレで会社をやめました…「ファンシー絵みやげ」で振り返る喫煙ブーム(2/2)

2017/5/26 12:00 山下メロ 山下メロ


■ 灰皿

喫煙具がファンシー絵みやげに非常に多い理由は、喫煙者が多かったからだけではありません。これは修学旅行などで、ファンシー絵みやげのメインターゲットである子供たちがお小遣いを持って観光地に来ているためです。子供たちは、お小遣いをくれた人に何かしらお土産を買って帰らなくては……と思うわけですね。当時、小中学生の親だった世代は喫煙者も非常に多かったこともあり、お小遣いをくれた親がタバコを吸っているのであれば、子供は選びやすいので灰皿を買って帰ったのです。


↑陶器の灰皿はかなりの種類が存在するが、ここでは当時感のある京都新撰組のパール加工灰皿、十和田湖のスターと呼ばれる星空のような加工や、石のようなプリントの妙高高原など、当時に流行したものを紹介している。


↑定番の金属の灰皿。右側の佐渡のたらい舟は珍しい樹脂製。

陶器の灰皿は種類に商品数も多くて紹介しきれませんが、他にも六角形や砂目、浅いモノ深いモノ色々あります。そして重要なのは、どれも安価なことです。子どもでは有田焼やら萩焼やら焼き物の価値は理解できないため、比較的安価な瀬戸物でも買います。さらに、子供に持たせるお小遣い程度でも、瀬戸物にイラストがプリントしてある灰皿であれば買いやすいのです。他にも、陶器で2頭身のキャラクターが口を大きく開けている「口開け灰皿」というジャンルもあります。


↑ライターと灰皿がセットで売られることも多い。


↑定番キャラクターBARiPARi FOXの灰皿。このように上部にスリットの入った灰皿も少数ながら存在した。


↑定番キャラクター Donguri Clubの灰皿。いわゆる煙草盆のような仕様。片方が灰皿、片方が煙草入れ。

陶器に限らず、金属製の灰皿にも色々な種類が存在します。さらに携帯灰皿などもあります。


↑上の取っ手(?)を押し下げると、下のフタになっている円形状の金属が高速回転し、遠心力で灰を下に落とせる灰皿。こんなものにまでファンシー絵みやげのイラストは印刷されていた。


↑長野県木曽路のきそうまらんど灰皿。非常に大きい。中に入れたミニディスクことMDと大きさを比較して、サイズを感じて欲しい。

■ 暖簾

主にスキー場で売られていた暖簾です。2017年では考えられないような文言が書かれてます。


↑新潟県は越後時の暖簾。ニコチン中毒者協力店や世界たばこ産業指定地区など、よく分からないことが書かれている。ここに喫煙者のイラストが入っているが、実は喫煙しているイラストは珍しい。


↑全国ニコチン推奨協会という恐ろしい団体による暖簾。書かれていることの自由闊達さが時代を物語っている。


↑記念すべき第一回目の連載でもスキー場のファみやげとして取り上げたものを再掲。さきほどの犬のキャラクターがニット帽をかぶってスキー場に来ているようだ。

では最後に驚きの白虎隊ファンシー絵みやげを紹介します。

白虎隊は幕末ブームにくわえ、個人が特定できないこともあり、かなり自由に色々なイラストが描かれ、商品が作られました。少年たちが追い詰められて自害をするという悲劇の物語にも関わらず、F-1に乗せられちゃったりしている白虎隊などを以前にも紹介しました。しかし、今回はテーマに合わせてこちらです。


↑提灯はお土産の定番ですが、ファンシーイラストが入ったものは珍しい。会津若松。

白虎隊は未成年なのですけども……タバコ吸わせて大丈夫なのでしょうか。当時の商品開発の幅広さや自由度に驚かされます。

では、また次回。

(文と写真:山下メロ“院長”)

■ 保護のお願い

私は全国の観光地で保護活動を行っていますが、現地から消滅したファンシー絵みやげについては、皆様の家に残されたものが頼りです。もしご実家などの学習机の引き出しの中に眠っているものなどが見つかりましたら、是非ともご一報ください。ハッシュタグ #ファンシー絵みやげ での報告も待ってます。

《グッズ発売のお知らせ》

卒業生代表さんの民芸みやげ風な通行手形ICパスケースに、私がファンシー絵みやげイラストを描いた最高なコラボ商品が完成しました!ヴィレッジヴァンガードのオンラインショップで購入できます☆

【卒業生代表×山下メロ】通学手形ICパスケース


    


《イベントのお知らせ》
7月13日(木)の夜に阿佐ヶ谷ロフトAで、旅するイラストレーター キン・シオタニさんのイベントにゲスト出演いたします。TVKの街歩き番組「キンシオ」でもおなじみのキンさんと、ともに全国を旅する2人がどんなトークをするのかお楽しみに!

キン・シオタニpresents「描き語り34」

OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥2,100 / 当日¥2,600(共に飲食代別)
前売はローソンチケット【Lコード:34390】から ※5/27~発売
【出演】キン・シオタニ
【ゲスト】山下メロ院長(ファンシー絵みやげ研究家)

旅するイラストレーター、キン・シオタニのトーク&パフォーマンスライブ。
今回は前回に引き続き、1980年代に国内の観光地にあふれていたファンシーイラストのおみやげ「ファンシー絵みやげ」を収集している山下メロ院長がゲスト。前回参加できなかった方ももちろん大丈夫。2人の不思議なコンビネーションは必見です。 ドローイング・シアターも、もちろんあります。     


《関連コラム》

・「見たことある!」ファンシー絵みやげで振り返るスキーブーム(連載 第一回)
・80年代にはグランブルーファンシーがあった……「ファンシー絵みやげ」で振り返るマリンスポーツ(連載 第二回)
・波の数だけ抱きしめたい!「ファンシー絵みやげ」で振り返るサーフィン文化(連載 第三回)
・ファンシーが心の中を通り抜ける…「ファンシー絵みやげ」で振り返るシーサイドリゾート(連載 第四回)
・短冊シングルにミリオンセラー…「ファンシー絵みやげ」で振り返る音楽CD(連載 第五回)
・ラジカセにカーステレオ…「ファンシー絵みやげ」で振り返るカセットテープ(連載 第六回)
・ウォークマンからマメカラまで…「ファンシー絵みやげ」で振り返るポータブルカセット(連載 第七回)
・エリマキトカゲにラッコにコアラ…「ファンシー絵みやげ」で振り返る動物ブーム(連載 第八回)
・ネッシーブームの足跡を追って…「ファンシー絵みやげ」で振り返るUMAブーム(連載 第九回)
・天狗に狸に鬼に竜…「ファンシー絵みやげ」で振り返る妖怪ブーム(連載 第十回)
・中嶋悟にアイルトンセナ…「ファンシー絵みやげ」で振り返るF1ブーム(連載 第十一回)
・ビーバップも湘爆も観光地にいた!?…「ファンシー絵みやげ」で振り返るツッパリ・ヤンキー・暴走族ブーム(連載 第十ニ回)



  1. 1
  2. 2