ラジカセにカーステレオ…「ファンシー絵みやげ」で振り返るカセットテープ(1/2)
お久しぶりです。平成元年あたりのカルチャーを発掘調査している山下メロと申します。80年代とも90年代とも違うその時代を、平成レトロとして愛好しております。
当連載では、80年代から平成初期に流行した「ファンシー絵みやげ」から、当時の流行を紹介していきたいと思います。「ファンシー絵みやげ」とは80年代からバブル経済期~崩壊を挟んで90年代まで、日本の観光地で若者向けに売られていた、かわいいイラストが印刷された雑貨みやげのことです。
「ファンシー絵みやげ」については連載第一回をご覧ください。
前回の連載で、コンパクトディスク(CD)を扱いましたので、今回はコンパクトカセットをとりあげたいと思います。カセットテープという大きいカテゴリの中の一種がコンパクトカセットなのですが、一般的にカセットテープと呼ばれているものがそれにあたります。
↑これがコンパクトカセット。磁性体の違いでノーマルポジション、ハイポジション(クローム)、メタルポジションなどのグレードがある。
■ コンパクトカセットの歴史
磁気記録テープによる録音媒体は、分かりやすい例でいうと、8mmフィルムなどのようにむき出しのリールにテープが巻かれたものが主流でした。しかしこれでは手軽に扱いづらいこともあり、それをケースに収納したものが多数考えられたのです。その中でも一番普及したのが1962年に開発されたコンパクトカセットでした。後にLDやCD、Blu-ray Discも手がけたオランダのフィリップスによって開発され、特許の無償化によって普及しました。
↑このようにラジオと一体化したラジカセでカセットテープを再生する。1980年代にはカセットが2つついていてダビングできるダブルラジカセも主流だった。さらにテレビも内蔵したラテカセというものも存在した。
■ マイコンパソコンファミコンとテープ
コンパクトカセットはオーディオ用の録音メディアでしたが、コンピュータの世界でも記録メディアとして使われるようになりました。マイクロコンピュータや初期のパーソナルコンピュータでは、当時まだ高価であったフロッピーディスクに代わる外部記憶媒体として音楽用のカセットテープにデータレコーダでデータを書き込んでいました。
↑1984年に、任天堂のファミリーコンピュータでBASIC言語を扱える『ファミリーベーシック』が発売され、外部記憶媒体としてデータレコーダも発売されました。 ※写真はミニチュア
■ ファンシー絵みやげとカーステレオ
ファンシー絵みやげが観光地で主流だった1980年代~1990年代前半にはCDも台頭してきますが、録音メディアではMDが普及するまでカセットテープが主流でした。特にカーステレオにおいては、自分で編集できて、120分などの長時間流せるためカセットテープデッキから買い替えない人も多かったのではないでしょうか。
↑三重県は伊勢志摩の木製カセットボックス。フタが斜めになっているところがオシャレで実用的。
ファンシー絵みやげの時代、観光地や行楽地には自家用車で出かけることも多くありました。そのため、ファンシー絵みやげにはカー用品が多いのですが、カーオーディオの主役であるカセットテープ関連の商品もこれまた多いのです。ファンシー絵みやげ全盛期はCDでミリオンセラーが続発する時期と重なるのですが、CD関連よりカセットテープ関連商品が多いというのは、旅行と関連するカーステレオではカセットテープが主流だったためでしょう。また、カセットテープ関連のファンシー絵みやげには、カセットボックスなど収納のための商品は多数ありますが、カセットテープそのものをモチーフにしたものはほとんど見つかりません。
↑このようにカセットテープそのものをモチーフにしたキーホルダーもある。右のものは観光地で売られていたもので、電子音が鳴る。左はSONYのカセットテープのキーホルダー。
それに対してCDについては、CDラックや、CDファイルなどが見つかっておらず、CDそのものをモチーフにしたものしか確認できていません。
↑前回の記事で紹介したCDモチーフのキーホルダーたち。
ここから、いかにCDが新しいメディアとして珍重されていたか、それに対するカセットテープがすでに陳腐化していたかが分かります。カセットテープについては、すでにその形状そのものを珍しがってモチーフとすることはなく、あくまで実用的な商品が作られていたのです。