「ネシ子が会う」田島ハルコ(連載 第十二回)(5/5)

2016/12/13 11:00 フレネシ フレネシ



● 田島ハルコさんにお会いして ●

本人すらも内容を覚えていないほどおびただしい量のノイズが日々垂れ流されている彼女のTwitterアカウント。そのIDが「dokusya_model(ドクシャモデル)」…これこそ「田島ハルコ」の為人を体現した文字列、いや、体現していないからこその「dokusya_model(ドクシャモデル)」なのか…。

Twitterを通して、彼女の頭の中で起こっていることをリアルタイムで追いかけているうち、反射的に「いいね」してしまうのだけれど、その瞬間、ただの傍観者ではなくなったことに気が付いて、今度は自分の頭の中を見られているような気もして、ふと緊張感に襲われる…。しかしそれがどうしたといわんばかりに、こちらが情報を取捨選択するスピードを遥に上回る量のノイズをまだまだ吐き出し続けている彼女。それがもうずっと続いている。「そんなに生き急いでどうするの?」と不安になってしまうほどに。



そして、それだけの量のノイズですら彼女の発する全ノイズの一部にしか過ぎず、作品という形で世に出るさらに込み入ったノイズは、ともすれば「悪趣味なオマージュによる食べ合わせの悪さ」のような部分ばかりが目立ってしまうけれど、実は音楽としてはとても純粋だと私は思っている。アカデミックな小手先の器用さで取り繕った引用ありきの文化圏とは距離を置く、エモーショナルでプリミティブな動機に直結した、感情表現豊かな音楽に感じられる。

また「フスid」について、「これまで悪意ばかり撒き散らす人生を送ってきた自分が今、この世界に対してちょっとだけ出来る治癒のようなもの」と彼女は言うけれど、テーマソングのMVを見た感じだと、やっぱり「撒き散らした悪意」の延長線にフスidがあるように思えてならない。しかし、それはまだ私の読みが浅く、彼女の意図を理解していないということだろう。

今回のインタビューでは、「今のスタイルの日本のアイドルはメジャー、インディーズ問わず10年以内に全員いなくなったほうがいい」という告白が、とても衝撃的だった。そんな世の中、私は想像したこともなかったから。適度に刺激的で、不快要素が少なく、聴き手としては都合が良い、そんなぬるま湯のようなアイドルカルチャーをつまみ食いするうちに、私の受容体はすっかり能動性を欠いていったのかもしれない…。



しかし誰が望まずとも、もしかしたら90年代初頭のようなアイドル氷河期が、今後10年以内に反動的に訪れるかもしれない。(すでに2016年の紅白のアイドル枠が減ってきているあたりにその予兆を感じなくもない…)

「田島ハルコ」という情報のノイズ発生装置から目を離してはいけない気がする。見逃した瞬間にさっきまでとは違う議題が上がっていて、そこから先は処理しようのない量のノイズが、ただただ、山積みになっていくだけ。生き急いでいるのではなくて、それが彼女の日常なのだと、お会いして気づいたのだった。

文:フレネシ
写真:ヨシナガ

● 田島ハルコ 今後の予定●

12日24日(土) @渋谷LOFT9
【読者MODELの「山ちゃん」】
op12:00/st 13:00

前売¥2,000 / 当日¥2,500(税込・要1オーダー500円以上)
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/53042

※にゃにゃんがプーレコ発、トーク&ライブイベント
出演:にゃにゃんがプー、田島ハルコ、読者MODEL(にゃプ、田島のユニット) ゲスト:山ちゃん



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