「ネシ子が会う」漁港(連載 第二回)

こんにちは。フレネシです。
連載第一回に登場していただいたぱいぱいでか美さんと同様に、テクマ!生誕祭で共演した「漁港(※“港”の文字を反転したものが正式名称)」というバンド。
漁港デビューシングル / 鮪 マグロ節
チークダンスあり、マグロの解体ショーありと、エンターテインメント性の極めて高いステージにすっかり魅了され、インタビューを申し入れたところ、快く受けてくださいました。
インタビューのロケーションは、森田釣竿氏の仕事場である浦安魚市場。日曜の朝6時台の東西線に乗って、現地へと向かいました。
既に活気付いている早朝の魚市場。

漁港の森田氏は、マグロ・クジラ専門店「泉銀」の三代目。

店頭には、森田氏のブログで見かけた千葉県外房捕鯨のツチクジラが!

仕事の合間を縫って、インタビューを進めていきます。
フレネシ(以下フ):ジャンルって、何になるんですか?
森田釣竿(以下も):フィッシュロックだね。もともとは、THE般若というプログレッシブロックバンドから始まってる。下町ヘッポコプログレ。
もともと俺はベース弾きなんですよ。演奏よりもビンタをする、される練習にこだわっていた。「ワシントンDCで吉幾三さんとキング・クリムゾンを間違えて解釈した人のバンド」というテーマでバンドを創造。音源を売らずに手作りスライムを売ったりとか。もうワケわかんないですよ。

フ:楽器関係ないですね。
も:音楽に楽器なんて関係ないと思っていた。歌がうまいへたとかもそう。
フ:でも、歌はお上手ですよね。
も:大人達のカラオケの影響があるのかも。父親は漁師の家に生まれたので必然的に海の演歌を。母親はスナックを経営していたので、流行の演歌を聞いたりしていました。それから軍歌。
あれ?何でこんな話になったんだっけ?

●漁港さんに50の質問
フ:じゃあ仕切りなおして。漁港さん、改めましてフレネシです。イベントではご一緒しましたが、こうしてお話するのは初めてですね。これから50の質問に答えていただきます。
―――フ:【質問その1】まずはお名前の由来から…「漁港」というユニット名はどなたがつけたのですか?
も:私がつけました。海や魚をテーマにするバンドなのだから、もうこれしかないと。
―――フ:【質問その2】「港」が逆さになっているのですが、それが意図するところは?
も:売れ残っていた毛蟹、ABBA、メタリカ、B&Bのイメージ。

フ:なるほど、つまり「左右対称」ってことですね。
―――フ:【質問その3】そもそも、なぜバンドを始めようと思ったのですか?

も:親から家業を継いだときに、このまま魚屋という職業で生活をしていくのは難しいと思った。自宅で魚料理をするという人も減っているし、浦安魚市場の営業時間が朝から正午までというのも難しかった。
一体どうすれば市場に人がきてくれるかと悩んだ挙げ句浮かんできたのが「漁港」というアイデアだった。ライブハウスに魚介類の営業にいく。そんな気持ちで乗り込むしかないと。
市場だと若いお客さんは少ないけど、ライブハウスに行けばたくさんいるじゃないですか。そこで海の偉大さだとか、魚の尊さ、人間の小ささ、そういったものを表現できれば面白いのではないかと。
音楽から水産に興味を持ってくれたら最高じゃないですか。ライブハウスから港や魚屋に足を運びだす音楽ファンなんて最高じゃないですか。
フ:じゃあ、魚の広告塔になろうっていうことですか?
も:水産業界を盛り上げたいという一心のみ。一人でも多くの人に、海とか魚の大切さを知ってもらいたい。魚を食べてもらいたい。そう思って始めただけです。若者よ!市場に来てくれ!と。ライブハウスもいいけど、市場もいいぞ!と。

フ:市場も、ある種のライブハウスですよね。
も:浦安魚市場の場合、スーパーの鮮魚コーナーに飽きた人たちが来場するって感じなんですよ。テレビのミュージシャンに飽きた人たちが、ライブハウスのミュージシャンに興味を示すようなね。
―――フ:【質問その4】世界が注目する「フィッシュロック・バンド」漁港。数々の偉業について、武勇伝を語ってください。
も:水産庁でのアルバム発表記者会見。築地市場ライブ。日本武道館マグロ解体ライブ。大日本水産会さんから魚食普及貢献者の感謝状もいただきました。海外からの取材も多いかな。特にドキュメンタリー。ロイター、BBC、ABC、MBC、CANAL PLUS……。食への意識が日本よりも外国の方が高いからね。
―――フ:【質問その5】合言葉「日本の食文化を魚に戻し鯛!」に込めた思いをどうぞ。

も:日本は海洋国家です。海に囲まれた島国で我々は生活をしているのですから、魚介類への対応力には優れている。しかし、都会で生きているとその能力が薄れてしまう。街には世界中の食品が溢れかえり、廃棄され、飽きられ、食べることが面倒だという人も出てくる始末。
豊かになったことで失ったこともあるわけで。先人達が魚食で繋いでくれたこの命を、また次の世代に繋ぎたいのです。
―――フ:【質問その6】ライブ=「漁業」、チケット=「乗船券」と呼ぶあたり、PASSPO☆の場合のライブ=「フライト」、ファン=「パッセンジャー」とも通じるセンスですが、「漁港用語」には、他にどのようなものがありますか?

も:
・ステージ=船
・客席=海
・歓声=波
・満員=大漁
・男性ファン=漁師
・女性ファン=海女
―――フ:【質問その7】ライブで流れていたトラックがとてもかっこよかったのですが、音源はどんな楽器やソフトを使って、どのようにレコーディングしていますか?
も:SONARを使ってます。漁港ですから。ディレクションは俺が、たとえば包丁でトントンとやっていて「あ、これいいな」と思ったら携帯で録音して、深海光一に送信。
ただね、まとまんないんですよ。テクノ好きの俺とフラメンコ好きの深海光一だから。
以前はHIP HOP好きなメンバーがいて、彼と作ってた。「Public Enemyみたいでかっこいいじゃん」、「Jungle Brothersみたいじゃねえ?」って、興奮しながら作ってたんだけど、彼が抜けてしまったから。
そんときの深海君の役柄は、ライブでだた座っているだけだった。
フ:じゃあ深海さんは、そこからご自身でDTMを覚えたってことですか?
も:そうそう。音楽は好きなんだろうね。打ち込みの音楽に興味ないだけで。
フ:前のライブで拝見したときに思ったのですが、いろんな要素がありますよね、楽曲に。

も:魚の数だけ音楽性がある。それが「FISH ROCK」、「SEA ROCK」だと。
―――フ:【質問その8】前回のイベントで、鮪の頭部を解体するパフォーマンスがあり、大変驚きました。しかし、そうしたパフォーマンスを抜きにしても、サウンド自体に独特のテイストがあり、純粋に音楽としてもすばらしいと感じました。そこで、漁港さんのサウンドのルーツについてお聞かせください。
も:村田英雄さんの「蟹工船」と、Run-D.M.Cの「Walk This Way」ですね。
村田英雄 / 蟹工船
―――フ:【質問その9】映画「アナタの白子に戻り鰹」が上映で主演をされている森田さん。「MOOSIC LAB 2013」で観客賞・最優秀男優賞を受賞されていますが、作品の観どころを教えてください。
映画「アナタの白子に戻り鰹」特報
も:オルタナ人情喜劇ですね。水産業界の「アウトレイジ」と言う人もいる。
今井真監督と漁港ってすごい似てる部分があると思うんです。本気か冗談かのギリギリのところで仕掛ける。その絶妙なバランスに注目してほしい。
それからもう一つ、もともと漁師町だった浦安が舞台なので、魚を食べたくなる映画であるのは当然です。映画を見た後、魚をガッツリ食べて欲しいですね。
―――フ:【質問その10】演技をするにあたって、苦労したのはどんなことでしょうか。
も:どんだけ素でいけるか。です。
フ:のっけの森田さんの登場シーンから、「漁港」さんじゃないですか。あれがプロモーションビデオみたいに見えて、すごくかっこよかったんです。
も:浦安の旧江戸川で撮影しました。メチャクチャ寒くてね。雪の降る船の上で6時間くらい。凍えちゃってるから、音と口を会わせるのが大変でした。
フ:ではここから、よりプライベートな質問に入っていきます。森田釣竿さん自身について、お聞かせください。
―――フ:【質問その11】血液型は?
も:O型。
―――フ:【質問その12】星座は?
も:牡牛座。
―――フ:【質問その13】ご自身をお魚にたとえると?
も:イルカって言われる。
フ:笑顔がかわいいからですかね?顔が似てる気がします。
も:自分ではマグロかなぁなんて。止まると死んでしまうみたいな。

フ:さっき「エイっぽい」って言われて驚いたんですけれど。ちなみに、ヨシナガさん(カメラマンとして同行)は何ですか?
も:えっと、タチウオ。
フ:華奢だからですか?
も:でもほら、何か持ってるじゃないですか、目の奥に。ギラギラした。だから、サヨリとかサワラじゃないんだよね、タチウオかな~って。
―――フ:【質問その14】小学生の頃、どんな少年でしたか?
も:軍歌を歌う子供。
―――フ:【質問その15】子どもの頃憧れていた職業は?
も:魚屋。爺さんと親父の背中を見て。かっこいいじゃないですか。
―――フ:【質問その16】得意科目は何でしたか?
も:お楽しみ会。
―――フ:【質問その17】中学生の頃、反抗期はありましたか?
も:腕に母親の歯型がいっぱいある。
フ:すごい(笑)
も:親子だから甘えられるんですよ。母親とは今でも風呂に入れると思う。全く恥ずかしくない。

―――フ:【質問その18】初めて買った邦楽は?
も:あのねのねの「みかんの心ぼし」
あのねのね / みかんの心ぼし
―――フ:【質問その19】初めて買った洋楽は?
も:Sex Pistols。
God Save The Queen / Sex Pistols
―――フ:【質問その20】初めて買った楽器は?
も:ベース。スタジオにあったレンタルベースを気に入っちゃって。それをそのまま譲ってもらった。
―――フ:【質問その21】弦高の具合とか、よかったんですか?
も:神輿を担いでいるような重たさが気に入った。ベースはウェイトが重要だから。今持っているベースが、レッチリのフレアが使ってるのと同じメーカーだって言うけど、そんなの関係ない。神輿感が大事。
―――フ:【質問その22】初めて行ったコンサートは?
も:コンサートは田中星児。ライブハウスは狂人病。
―――フ:【質問その23】一度共演したい憧れのミュージシャンは?
も:鳥羽一郎さんとFISH BONE。
―――フ:【質問その24】一番かっこいいと思うジャケットは誰のどの作品ですか?
も:Weenの「The Mollusk」といえば漁港らしいかな。

―――フ:【質問その25】今一番ほしいもの、教えてください!
も:発言力。
―――フ:【質問その26】好きなお酒は?
も:意外とワイン。
フ:お魚に合うとなれば、白ですか?
も:赤でも魚にあうよね。クジラとかマグロとかカツオとか赤身系。銘柄にこだわらないけど、国産を買おうとは思ってる。
―――フ:【質問その27】好きな季節は?
も:夏かな。着るものが少なくてすむ。
―――フ:【質問その28】好きな港は?
も:日本の港。
―――フ:【質問その29】注目して欲しい海産物は?
も:クジラ。ほんと美味しいですよ。陸上生物ではカバに近いんだけど、魚を食べてる哺乳類だから他の哺乳類では味わえない感動がある。
もちろん、牛や豚なんかと一緒で、部位によって食べ方も違うし、味も違う。高たんぱく低カロリーで、女性ファンも多く、疲れも取り、持久力も高める。
昔の母子手帳には、妊婦さんはクジラをたくさん食べましょうって書いてあったくらいだよ。アレルギー症状もほとんど出ない食品としても注目されてる。
―――フ:【質問その30】さばくのが楽しいお魚は?
も:アカマンボウ。すっげえ楽しかった。すっげえ難しかったけど。
フ:アカマンボウって、回転寿司でよくマグロの代わりに使われている魚ですよね。
も:マンダイと呼ぶ人が多いね。標準和名はアカマンボウ。マンボウって名前に付くけど、リュウグウノツカイに近いみたい。
Twitterで「緊急アカマンボウ解体ライブ開催!」ってつぶやいたら本当に5人来てくれて。で、漁港の衣装を急いで家に取りに行って、着替えて、ここで赤マンボウの解体ライブやったの。
これが赤マンボウ解体したときの写真。

フ:わ、思ったより大きい。不思議な形をしていますね。
も:サイケじゃないですか。
フ:色使いと、テカリ具合がサイケですね。
も:身がピンク色で、マカジキみたいな。美味しいの。すごいさっぱり、ねっとりしていて。胸びれの肉が凄かったね。
金目とか胸びれの肉が美味いじゃない。あれが巨大化した感じ。
フ:その肉はどうやって食べるんですか?
も:フライが美味しそうだったなぁ。
フ:(写真を見ながら)骨が凄いですね。
も:喉の骨が凄くてね、食べた魚が逃げないように鋭利な返しがメチャクチャ付いてて、怪我しそうになっちゃった。
そうそう、骨格フェチなんですよ。体見て、ああこういう骨格なのかと。フレネシさんこういう骨格なのかと。鎖骨とか。あ、結構良い鎖骨してますね。
フ:あははは。
も:骨格で見ちゃうんですよ。魚もそう。

―――フ:【質問その31】死ぬまでに一度食べてみたい幻の魚は?
も:スケーリーフット。硫化鉄でできたウロコをまとったアンモナイトみたいなやつがいるの。それかなぁ。
―――フ:【質問その32】ブログに掲載されていた「ツチクジラ」が気になりました。どんなお味ですか?
も:クジラの風味が爽やかなんだよね。焼いても柔らかいクジラ肉はツチクジラが一番。千葉県南房総の特産品でもあるツチクジラのタレも美味しい。
―――フ:【質問その33】白いごはんと最高に相性が良いごはんの友は?
も:鰹節。しょうゆをちょっと垂らしてね。
―――フ:【質問その34】今が旬の魚、食べておくべきは?
も:東京湾のサメ。
―――フ:【質問その35】一番好きな寿司ネタは?
も:コハダ。店ごとの自主制作性が出るしね。
―――フ:【質問その36】ザ・ベスト・オブ・酒の肴は?
も:焼魚。

―――フ:【質問その37】口癖は?
も:いらっしゃい!
―――フ:【質問その38】好きな女性のタイプを教えてください!
も:静かな人。
―――フ:【質問その39】初恋のお相手は、どんな人でしたか?
も:すっごい性格の悪い女。

フ:うふふふ。では彼女を魚に例えてください。
も:サメ。サメ女だったね。性格の悪いぽっちゃりしたサメ。
―――フ:【質問その40】初めての彼女は、いつできましたか?
も:中学生。
―――フ:【質問その41】初めてのキスは?
も:中学生。
―――フ:【質問その42】憧れの女性有名人は?
も:いないなぁ。
―――フ:【質問その43】恋人とはどんなデートがしたいですか?
も:逆に肉食いに行きたいね。肉の美味しい店を知らないから、連れて行って欲しい。
―――フ:【質問その44】告白は自分からする方?相手からされる方?
も:自分からするね。
―――フ:【質問その45】ぐっとくる女性の仕草は?

も:疲れてる様。疲れてるな…って思うと、笑かせてあげたくなっちゃう。ほぐしてあげたいじゃん、そういう人。
―――フ:【質問その46】幻滅しちゃう女の子の言動は?
も:食に関してセコいことを言う人はダメだね。

―――フ:【質問その47】草食女子と肉食女子、タイプなのは?
も:どっちも好き。
―――フ:【質問その48】好きな女性のファッションは?
も:柄があった方がいい。豹柄までいかない柄。豹柄もいいけど。魚と同じだよね。柄のある魚っていいじゃないですか。

―――フ:【質問その49】森田さんにとって、海とは、魚とは何ですか?
も:原点。
―――フ:【質問その50】では、最後にファンの皆さんに一言、お願いします!
も:魚食えよ!FISH ROCK!!!

●インタビューを終えて
森田さん、長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくださった森田釣竿氏。
瞳がキラキラしたフォトジェニックな方ですがちょっとコワモテ、かつ迷いのない鋭い語気に、声の小さい私は最初萎縮していたものの、時折見せるユーモアや嘘のない真摯な眼差しと向き合ううち、森田さんの魚への熱き思いにぐいぐいと引き込まれて、次第に
「漁港さんかっこいい!」
から、さらにそこを通り越して
「お魚食べたい!」
と感じるようになりました。

さて、そういうわけで、店頭に並んでいた珍しい海産物を買って帰ることに。
私の住んでいるエリアのスーパーではまず見かけない、
「ツチクジラ」の新鮮な赤肉に惹かれて、この日の手土産としました。
帰宅後、早速昼食として調理してみました。
軽く炙って、塩、胡椒、バター、醤油で味を調えると…

全く臭みのない、ジューシーな食感。
牛肉の赤身よりずっとやわらかな肉質ですが、
霜降りのようなこってり感がないので、いくらでも食べられます。
濃厚な「海の肉」の味わいを堪能しました。
皆さんもぜひ一度、浦安魚市場まで足を運んでみてください。
そこには、今まで体感したことのないような「ライブ感」が溢れています。
●漁港 プロフィール
史上初「フィッシュロックバンド」としての魚食啓蒙活動が注目を集め
'04年ユニバーサルミュージック より1stシングル『鮪』でメジャーデビュー。
翌年2ndシングル『鰹』をリリース。
森田釣竿名義では、レコードを包丁に持ち替えてスクラッチした楽曲を集めた
インスト作品集『砥石』 もリリースするなど、多種多様にわたる音楽を発信。
・オフィシャルサイト:漁港
●漁港 イベント情報
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