ウォークマンからマメカラまで…「ファンシー絵みやげ」で振り返るポータブルカセット(2/2)

2017/4/14 12:00 山下メロ 山下メロ


■ カセットケースのファンシー絵みやげ

ウォークマンの登場によって、どこでもカセットテープが聴けるようになりました。そうなると次に替えのカセットテープを持ち歩く必要が出てきます。


↑このように斜めストライプなど、かわいいカセットテープケースが多数あった。こちらは窓がついていて外から中身を確認できる。


↑バドガールの衣装でおなじみ、平成レトロの時代に人気が爆発したビール「バドワイザー」。その飲料パッケージモチーフの商品が多数売られ、ビールも飲めない未成年までが使っていた。こちらは金属のカセットケース。

車での旅であればカーステレオですが、ウォークマンの登場によって電車でも好きな音楽を聴きながら旅ができるようになりました。そして、旅先の土産店で売られるファンシー絵みやげにも、カセットテープを持ち歩くための商品が作られるようになります。


↑三重県は伊勢志摩のカセットケース。数本だけ持ち歩くのに特化したカセットケース。サーフボードを担いだカップルのイラストがプリントされている。


↑福島県は会津若松のカセットケース。天地を逆さに2本のカセットテープをコンパクトにまとめることができる珍しいケース。こんなものにまで白虎隊のイラストをプリントして売っているのだから酔狂である。

■ ファンシー絵みやげのイラストに見るウォークマン

ファンシー絵みやげで使用されるイラストには、その時代の流行が色濃く反映されています。中でもウォークマンは分かりやすくイラストに登場しますので、それを紹介したいと思います。

まずは栃木県日光東照宮の「見ざる聞かざる言わざる」のいわゆる三猿です。実は世界的に存在する三猿みやげですが、ファンシー絵みやげでは「見ざる」をサングラスで、「聞かざる」をウォークマンのヘッドホンをした猿で表現しているものが、偶然の一致なのか、それとも影響を受けてなのか、いくつも見られます。


↑NIKKOのおちゃめなSANZARUタペストリー。赤地に黄緑という当時でさえド派手すぎる配色。

「見ざる」が「かくれんぼの鬼」役で、目を隠しながら「MO~I~KAI!」と言っているのは非常に良いアイディアなのですが、「言わざる」が「MA~DADAYO!」と言っています。「言わざる」なのに。「KUSU KUSU」と考えているフキダシで、「ウフフ」的に口に手を当ててるポーズということで、それは「言わざる」感がありますが、あきらかに「MA~DADAYO!」は言ってます。それは良いとしても「聞かざる」にいたっては、かくれんぼに参加してるのかしてないのか「MONKEY DANCE!」と言いながらウォークマンを聴いています。わけがわかりません。

このように三猿の全体像を紹介するとツッコミどころが多すぎて大変なので、以下は「聞かざる」のみをご覧ください。


↑なぜか三猿を「ONE」「TWO」「THREE」とカウントしているタペストリー。やはりウォークマンのヘッドホンをして外の音を聞いてないという設定。


↑黒地に蛍光の暖簾。「NANKA URUSAI YATSU!」と言われちゃうKIKAZARU CHAN。1980年代前半までウォークマンに付属するヘッドホンはこのようなタイプでした。

さらにウォークマンがなぜか描かれる分野に「局部隠しミラー」と呼んでいるシリーズがあります。


↑子づれチン太にチン撰組と嫌な予感しかしない……。新撰組のパロディだと思うが、なぜか時空を超えてウォークマンを聴いている。さらに手にエレキギターと時代考証がよくわからない。


↑試しに右側の小坊主の顔をズラして鏡を開くと、なんとちりとりの下から焼き芋が!焼き芋を隠してたとは!食いしん坊!


↑こちらは人間もキツネも局部が露出。局部隠しミラーはその名の通りほとんどがこのパターンである。しかし新撰組は一体どんな袴をはいているのか……

この局部隠しミラーは、かなり色々な種類が出ているので、これ以上の紹介は割愛しますが、そのほとんどがウォークマンにヘッドホンをしています。そして、その理由も特に分からないのです。しかしこれだけ何度もイラストに登場させていることからも、いかに1980年代にウォークマンが流行っていたかがよく分かります。


↑このようにサイズや仕様も大小さまざまなものがあるが、やはりいずれもウォークマンにヘッドホンをしている。

■ 忘れてはならないカセットハンディカラオケ

野外でカセットテープを聴くだけではなく、歌うという需要もあります。8トラックカセットやレーザーディスクといった家庭用カラオケメディアの中で、音声多重のカセットテープを使ったものがありました。その音声多重のカセットテープを使って手軽にカラオケを楽しめたのがセイコーエプソンが発売したEPSON mamekara(マメカラ)でした。


↑花見シーズンの必需品。その後マメカラJr.という小型化したもの、他社もデュエットできるものなどを発売。

マイク、スピーカー、カセットプレイヤーが一体化し、手で持ちながら歌える軽量性を兼ね備えたマメカラは、その手軽さでヒットしました。CD全盛期の1995年に「MOON WALK」をカセットテープでリリースしたコーネリアスが、テレビ出演時すでに時代遅れだったマメカラをマイクに使っていたことが思い出されます。また近年では映画『サブイボマスク』でファンキー加藤演じる主人公が使っているそうです。

■ 最後に

自分でDJになりきって作ったラジオ番組の録音テープを探しています。お持ちの方はご一報くださいませ。では最後に私が一番キてると思うカセットテープを再度紹介します。


↑ケースも本体も蛍光イエローで、光GENJIの雰囲気と合っていないような。

では、また次回。

(文と写真:山下メロ“院長”)

■ 保護のお願い

私は全国の観光地で保護活動を行っていますが、現地から消滅したファンシー絵みやげについては、皆様の家に残されたものが頼りです。もしご実家などの学習机の引き出しの中に眠っているものなどが見つかりましたら、是非ともご一報ください。ハッシュタグ #ファンシー絵みやげ での報告も待ってます。

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