骸骨を愛でる美女?ミュシャのミューズ「サラ・ベルナール」の奇妙な私生活

2017/3/9 10:30 星野小春 星野小春




2017年3月8日(水)から6月5日(月)まで、国立新美術館(東京・六本木)で、アール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナーの 『ミュシャ展』 が開催され、話題になっています。

前回の記事、 「画家ミュシャのミューズ“サラ・ベルナール”は女優で超高級娼婦?色気溢れる写真と激動の生涯」 では、そんなミュシャを発掘し、自らの舞台『ジスモンダ』のポスターを描かせることによってスターダムに押し上げたサラ・ベルナールの波乱万丈な“女優人生”について紹介しました。



今回は、そんな彼女のちょっと変わったプライベートの噂について掘り下げて、“聖なる怪物”と呼ばれたミステリアスな人物像を浮かび上がらせてみたいと思います。


■正統派美人ではなかった? それでもナンバーワン女優で有り続けた個性

1844年のパリで、高級娼婦(クルティザンヌ)の娘として生まれたサラは、1923年に78歳の生涯を閉じる直前まで舞台に立ち続け、その妖艶さ失わなかった怪物級の女優ですが、実は若い頃から肺が弱く病弱で、死と隣り合わせの危うい日々を過ごしていたと言われています。

その反面、“生”や“性”がほとばしるような妖艶で情熱的な演技は不世出の名女優と呼ばれるほどで、1915年には足の怪我が悪化し右足を切断するも、ひとたび舞台に立つと娘のような華やかなオーラを醸し出す、ある意味人間離れした気力を持つ人物でもありました。



もともと、19世紀当時の基準としても、現代の女優のカテゴリの中でも、いわゆる“正統派美人”ではありません。

折れそうに華奢で病弱な体に怪物が憑依したかのような激しい気性。そんな性格によく似合う燃えるように赤い縮れ毛に対し、儚げな青白い顔。

角度によっては一重瞼にも見える重い瞼の下で爛々と輝く生命力あふれる瞳と、黄金や銀の鈴にも例えられた美しい声。そんなギャップに、ミュシャのみならず数々の芸術家が惹きつけられました。作家のマルセル・プルーストも彼女に魅せられ、作品の中に彼女をモデルとした人物を登場させた1人です。

悪戯な妖精のような個性で民衆を魅了したサラ・ベルナール。その奇妙な魅力は、1990年代にケイト・モスが巻き起こした“ヘロイン・シック”、“ウェイフ”と呼ばれる、不健康美を称えるムーブメントをも思い起こさせます。


■お好みのインテリアは本物の骸骨と柩

体が弱く“死を意識し続ける生活”が、サラのカリスマ性にどう影響を与えたのかは定かではありませんが、舞台の上で生命の輝きを表現する一方で、舞台袖には医師が待機していたこともあると言われる彼女は、”死”を思わせる奇妙なインテリアを好んでいました。



彼女の机の上には、ヴィクトル・ユゴーが詩を彫った本物の人間の骸骨が置かれており、床には自分の体ピッタリにオーダーした柩が転がっていてしばしば柩に横たわっていた……。当時の雑誌の取材記事によると、猫や犬の骸骨や、鉄の鎖に繋がれた人間の骸骨がぶら下がっていたという記述もあるようです。

「メメントモリ」(死を忘れるな)という言葉が流行した、ヨーロッパのルネサンス・バロック期の絵画のモチーフには度々しゃれこうべが登場しましたが、絵画や写真ではなく、「本物を部屋に常に置いておく」、となると、女性の趣味としては相当特殊であると言わざる得ません。

大蛇や虎を可愛がり、興業の際にワニを贈られて喜んだ19世紀の“聖なる怪物”は、オカルト的な趣味でもパリの話題をさらっていました。


■女優だけでなくプロデューサーでもあったサラ

生活の端々に、芸術家にありがちな奇行が見られたサラですが、その演技は、まるで多数の精霊が憑依する憑坐ように、10の時代の役を演じれば、10の違った個性を発揮する天才的なものだったと語り継がれています。



フランスの批評家・作家の、ジュール・ルメートルには「サラの演技はすなわち女そのものである」と評され、一方で、男役も見事にこなす。

そんな彼女は、強烈な個性で芸術家を魅了するだけでなく、芸術そのものを愛し、無名のアーティストを見出す才能にも長けた人物でした。ミュシャのみならず、駆け出しの劇作家のエドモンド・ロスタンの才能をも見出し、戯曲『遠国の姫君』を自ら舞台化するなど、プロデューサー的一面も持ち合わせていたと言われています。


アルフォンス・ミュシャは後に、彼が無名の画家から売れっ子になったきっかけのポスター『ジズモンダ』は、印刷所の経営者にダメ出しをされボツになりかけていた……、しかし彼の絵を一目見たサラが涙を流すほど気に入り、採用された、と語っています。

上記のような逸話を聞くと、ミュシャが描いたサラ・ベルナールのポスター連作の、夢見るような淡い色彩美と圧倒的な迫力……相反する個性が混在する魅力を、よりいっそう堪能できそうですね。


参考
※ ミュシャのすべて (角川新書)(堺 アルフォンス・ミュシャ館 - 堺市立文化館 著)
※サラ・ベルナールを見た: パリの世紀末、 ベル・エポックの 伝説的女優の目撃録(菊池 幽芳, 柳澤 健, 近代演劇研究会)


「近代芸能史を彩る美女たち」記事一覧

※ミュシャの傑作中の傑作「スラヴ叙事詩」全20点、初来日決定!
※全裸より妖艶な裸サスペンダー…シャーロット・ランプリングの成長を追ってみた
※今はなき美女たちの残像…妖艶すぎる100年前の美女写真がすごい
※あの永遠の処女も15歳で水着になっていた?昭和初期の水着美女達
※清楚可憐な“べっぴんさん”揃い!昭和初期の女子高生制服姿まとめ
※昭和の『君の名は』と言えば岸惠子!84歳の今も綺麗な絶世美女の若い頃まとめ
※19世紀から20世紀初頭のSEXYスター!バーレスクショーガールの写真まとめ
※早すぎた黒人女優?黒いモンロー“D・ダンドリッジ”のSEXYな美貌と歌声
※有馬稲子は短髪でも清楚でSEXY…昭和初期女優の真似したい髪型まとめ
※100年前の官能的美女写真…ギブソン・ガールのSEXYすぎるボディライン
※この可愛い娘は南北戦争時代の女の子?神秘的な19世紀の美女写真
※怖い絵を描く女性画家はなぜ美しい?レオノーラ・キャリントンと美女達のゾッとする絵の世界
※60年代ワンピブーム到来?「ビートルズ」&「ストーンズ」彼女達の着こなしまとめ
※ポスト松田聖子だった美少女・沢田富美子が数十億の資産を築くまでの波乱の半生
※13歳の覚せい剤と枕営業…美麗なる清純派ジュディ・ガーランドの闇
※【悶絶】日本映画史上最強のSEXYロリータ?過去の加賀まりこが妖精すぎた
※ボブ・ディランとアンディ・ウォーホルを虜にした60年代最強の妖精イーディ
※映画史上初めてヌードになった絶世の美女は天才理系女子だった
※あなたはどっち派?ビートルズの女VSストーンズの女・超絶美少女対決

(星野小春)