【ビニール傘】っていつからあった?使い捨て商品の歴史を探ってみた

2015/9/11 23:59 服部淳 服部淳


どうも服部です。この記事を書いている9月第2週は、台風18号と17号の影響もあり関東では雨続きの1週間でした。強い雨脚の中、ビニール傘を差して歩いていたとき、ふと「そういえばビニール傘っていつからあるんだっけ?」と疑問が浮かんだのを発端に、今回はビニール傘をはじめ、いわゆる「使い捨て」ジャンルの商品の起源について書きたいと思います(最近では「捨て」というワードがエコに反するからか、「使い切り」と呼び替えているものも多いようです)。

■割り箸

まずは、一番多く使用しているのではないかと思われる使い捨て商品、割り箸から(画像はAmazon。クリックすると商品ページへジャンプします)。割り箸の元祖はかなり古く、江戸時代中~後期に登場した「引裂箸(ひきさきばし)」という竹でできた箸だったといわれています。発祥の理由については諸説あるようですが、「吉野製箸工業協同組合」が作成した年表によると、「飲食店が流行し」たのが理由だったとか。まさに必要は発明の母です。江戸時代後期に編まれた百科事典的な書物「守貞謾稿(さだもりまんこう)」には、「引裂箸」は文政(1818~1830年)から使われていると記されているようですが、1700年代初頭に記された出納簿に「わりばし」の記載があるという説もあるようです。

その後、割り箸は木材の余材を使って作るようになり、現在に至っています。



■使い捨てライター(100円ライター)

喫煙者にはおなじみ、100円ライターという名でも親しまれている使い捨てライターは、株式会社東海(当時は株式会社東海精器)が1975年2月に「チルチルミチル」という商品名で製造開始(東海ホームページより)したのが始まりだそうです。100円ライターという呼び方は、発売開始から1991年(平成3年)まで100円ちょうどで販売されていたためですが、100円ではなくなった現在でも引き継がれています。

使い捨てライターの登場以前も、ZIPPO(ジッポー)ライターを筆頭とするオイルライターやガス注入式ライターは存在しています。しかし安価ではない上、自分でライターオイルやガスを補充し、ライター石を交換する必要もあり、ガスライターは特に長期間使用していると着火不良を起こすことがあるのでメンテナンスが欠かせないなど、いろいろと手間が掛かっていました。そんな中、100円で買えて使い捨てできるこのライターの登場はとても画期的だったようです。



■使い切りボールペン

最近のボールペン事情では、好きな色の芯を選んでペンケースに組み込み、自分好みの多色ボールペンに仕立てるというタイプのものも多くなってきているようです。インクがなくなった色は替え芯を購入するという具合で、1色使い捨てタイプは、逆に少なくなっているようにも思えます。

個人使用ではそのような変化が起きているのかもしれませんが、オフィスの備品や、郵便局や銀行など顧客に何か記入してもらうという環境では、現在もこのような使い切りタイプが利用されているのではないでしょうか。

そして、そんな使い切りのボールペンの第一号は、フランスのBiC社による「ビック・クリスタル」という商品でした。きっと昭和育ちなら見たことがある、あのボールペンです。同社ホームページによると、1950年に発売開始とのこと。



■レンズ付フィルム


お次は実際には「使い捨て」ではない(回収された後に部品がリサイクルされる)のですが、デジカメの登場、さらには携帯電話へのカメラの付帯によってすっかり影が薄くなってしまった「レンズ付フィルム」です。富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)が1986年(平成元年)に発売した「写ルンです(うつるんです)」が大ヒットし、普段はカメラに興味がない人たちが、旅行やお祝い事などのためだけにカメラを買って撮影するという新しい文化をも生み出しました。

「写ルンです」の登場以前には、恐らく同様の商品はなかったはずなので(日本には)、この商品が発祥の品かと思いきや違ったみたいです。Wikipediaによると、「1949年にPhoto-Pacという会社はH. M. Stilesが発明した$1.29で製造できるボール紙でできた使い捨てカメラ(8枚撮り)を販売」、「1960年代には、フランスのFEXという会社が"Photo Pack Matic"というプラスチック製の使い捨てカメラ(12枚撮り、4x4 cm)を発売」と、「使い捨て」のカメラはいくつも登場していたにもかかわらず、いずれも一般化することなく消えていってしまったのだそうです。

ネーミングやコマーシャルなども手伝っての流行となったのでしょうか。



■ビニール傘

最後は、「使い捨て」というジャンルでくくっていいのか悩むほど品質が良くなっているビニール傘です。現在では、雨の日には多くのビニール傘を差した人とすれ違うと思うのですが、いつ頃からこんなに多くなったのでしょう。おぼろげですが、1980年代の記憶には、ビニール傘はまったく出てこないんですよね。記憶をたどってみても埒(らち)が明かないので、映像で振り返ってみました。

雨の日で思い出されるというと、平成元年(1989年)2月7日に執り行われた昭和天皇の葬儀である「大喪の礼」。この日のニュース映像がYouTubeにアップされていたので見てみると、沿道に集った大勢の人々の中にわずかながらビニール傘を差した人はいました(こちらのリンクから。映像始まってすぐに映る左奥の女性)。が、ほとんどの人がビニール傘ではない傘を差しています。1980年代最後の年でこんな感じだったのですね。なるほど。

ビニール傘は、「ビニール傘のパイオニア」ことホワイトローズ株式会社によって1958年(昭和33年)に発売されたそうです。革命的な商品だったのですが、同社ホームページ内「ホワイトローズ物語」というページによると、奇抜すぎたのでしょうか販売店からは見向きもされず(さらに値段が一般の傘より高かったこともあり)、しばらくは人気商品になることはなかったのだとか。

その後、1980~90年代にかけて海外から安価な製品が入って来るようになり、ようやくビニール傘が売れるようになったようで、2014年に発表されたウェザーニューズ社の調査結果によると、現在日本では約14%(世界平均では8%)の人がビニール傘を使っているようです(20代が一番多く、約26%がビニール傘。男性に限ればもっと多いんじゃないでしょうか)。



安くて、無くしても壊れても替えがきき、お手入れ不要。現代生活には欠かせない「使い捨て」商品の歴史を駆け足でまとめてみました。今後も新たな「使い捨て」商品は登場するのでしょうか。

(服部淳@編集ライター、脚本家)



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