【40年前の物価】昭和49年、アレの値段は現在より高かった!?

2015/5/22 23:59 服部淳 服部淳



どうも服部です。昭和時代をあれこれ検証していくシリーズ、今回は昭和49年(1974年)の物価について見ていきたいと思います。

1974年ということで、今(2015年)から41年前のことになります。なぜ今回、この1974年という年を取り上げたかというと、その前年の1973年10月6日に第四次中東戦争が勃発し、それをきっかけに原油価格が約4倍に引き上げられた「第1次オイルショック」が起きた年でもあったからです(もう1つの理由は後ほど)。一般には、昭和20年代後半にはじまる「高度経済成長期」が終わった初年という扱いもされている年です。



■昭和49年という時代

昭和49年に何が起こったかをざっと見てみると、V9(9年連続日本一)時代にあった巨人(読売ジャイアンツ)の優勝が途切れ、中日ドラゴンズが優勝。同年に巨人のスーパースター長嶋茂雄が引退を表明、「我が巨人軍は永久に不滅です」という名言を残します。同年1月には、国民的ブームとなる「モンチッチ」が発売され、3月にはフィリピンのルバング島で小野田寛郎元少尉が発見され、5月にはセブン-イレブン1号店が東京都江東区豊洲に出店。また、「サザエさん」の朝日新聞での連載が終了し、ザ・ドリフターズに志村けんが加入した年でもありました。



■昭和49年の交通費

まずは、この年の一般運賃(東京都内)を見てみましょう(後半のカッコ内の値段は現在の価格)。

国鉄(現・JR)山手線1区間:30円(140円)
バス運賃(都営バス):40円→60円【同年10月に値上げ】(200円)
タクシー初乗り:220円(730円)

と、現在と比べるととても安いものでした(30円で山手線に乗れた!)。しかし、このオイルショックを境に、例えば国鉄運賃でいうと昭和50年に30→60円、昭和53年に60→80円、昭和54年に80→100円と加速度的に値上がりしていくという、いわばインフレ元年のような年だったのです。



■昭和49年の初任給

人事院が公表している「国家公務員の初任給の変遷」という資料によると、この年の高卒の初任給は5万9200円。平成26年(2014年)の同初任給は14万2100円なので、大ざっぱにいって現在の3分の1ほど、という時代でした。



■昭和49年頃の家賃

では、恐らく支出の中で最も割合が大きいと思われる家賃はどうだったのでしょう。国土交通省の資料によると、昭和40年代の平均支払い家賃(東京23区内)は7万1300円、昭和50年代は9万6200円、現在は15万8100円ということなので、だいたい現在の半額ぐらいだったようです。



■昭和40年代の銭湯代

次は入浴に関してですが、東京都の資料によると自家風呂保有率は昭和43年で42.2%、昭和53年で64.7%と、ほぼ半数の家庭に風呂がない状況でした(平成20年では97.6%)。よって、欠かせない存在だったのが銭湯です。その銭湯の料金を見てみると、なんと昭和49年は75円(さらに同年5月6日までは55円)! 現在の料金は460円(東京都)なので、約6分の1から8分の1の価格でした。



■昭和49年のスーパーの値札と現在の値段を比較してみると……

では実際に、一般商店での物価はどうだったのでしょう。以前もこのシリーズで紹介した、静岡県浜松市がYoutubeに公開している昭和49年(1974年)放送の「せつやくかあさん」という映像に、とあるスーパーの料金表示が出てくるので(もう1つの理由)、それを現在と比較してみたいと思います。

【動画】せつやくかあさん



まずは「しょうゆ」が1リットルで158円。


現在ではAmazonで280円。倍まではいかないようです。


グレープフルーツ1個88円。


同じくAmazonでは15~16個で3900円。1個あたり243円(16個の場合)。3倍ほどの値段になっています。

≪追記≫
著者は果物類の買い物をあまりすることがないため違和感がありませんでしたが、上記Amazonのグレープフルーツはちょっとお高かったようですね。近所のスーパーで4個430円《税込み》で売っていたので、1個あたり約107円。40年前とそれほど変わらない値段でした。ほぼ100%輸入のグレープフルーツだけに、後述の円安状態の問題が関係しているのでしょう。

その他の食品の現在の値段については、実際に近所のスーパー(東急ストア)に調査に行ってきました。


まずこちらは、食パンが「50円から40円に値引き」となっています。実際の食パンの大きさは映ってないですが。(東急ストア:162円《税込み》)。大きさの比較はできませんが約4倍でした。


次は、「プリマ皮なしウインナー」が超特価で1袋98円。(東急ストア:230gで297円《税込み》)。量の比較はできませんが約3倍の値段に。


続いては「シューマイ」が148円。(東急ストア:6個入りで313円《税込み》)。こちらもサイズ比較はできませんが、ほぼ2倍。


次はキュウリですが、このように曲がったものだと5本で55円(1本あたり11円)。(東急ストアでは販売なし)。


真っ直ぐに育ったキュウリだと、5本で125円(1本あたり25円)。(東急ストア:まっすぐなキュウリ4本で178円《税込みで192円》、1本あたり約48円)。2倍弱とそれほど高くなっていません。


肉売り場に移って、「並豚肉」が100gで100円。現在のように部位がどこなのかは記載されていません。(東急ストア:豚切り落とし250gで518円《税込み》、100gあたり207円)。ほぼ2倍とそれほど高くなっていません。


「牛上肉」が100gで350円。こちらも部位は分かりません。(東急ストア:黒毛和牛ステーキ用モモ肉で比較。100gあたり646円《税込み》)。1.85倍の値段です。牛肉は現在よりずっと高級品だったというのが分かります。


最後は食品から離れて「ワンタッチ長傘」です。「大投げ物市」(超特価ということでしょう)で490円でした。


Amazonにて、ビニール傘ではない一番安いジャンプ傘が691円。安くなったものです。

こうやってみると、給料が3倍になっているのに、それほど高くなっていないものもたくさんあるのですね。



■驚くべきは輸入洋酒の破格値

最後は輸入品の価格についてです。漫画「サザエさん」で、カツオが父親の波平を物置に誘い出して閉じ込めるという、個人的に印象的な回があるのですが(思い込みの記憶でなければ)、そのときカツオがエサにしたのは、ウイスキーの「ジョニーウォーカー黒ラベル(通称:ジョニ黒)」でした。なぜ、波平が息子の策にはめられてしまったかというと、Wikipediaによると「1957年当時、ジョニ黒は1万円で売られていた。当時の1万円は大卒初任給の二ヶ月分に相当」という、超超高級酒だったからでした。まさに、昭和の大人にとって憧れの逸品だったのです。

上記は1957年(昭和32年)のことで、国家公務員の高卒の初任給が6300円の頃です。同初任給が5万9200円にまで上がった昭和49年にはだいぶ割安感は出てきたでしょうが、昭和40年代も引き続き1万円(現在の価値で3万円ほど?)で売られていたようです。



現在価格は、Amazonだと2200円ほど。手軽に買える価格になっています。そもそも、なぜこんなにも高値だったかというと、主要因のひとつは為替の固定相場制にありました。昭和49年の前年までは固定相場制(昭和49年より変動相場制に)にあり、1ドル=360円(現在は約120円)、イギリスの1ポンド=約1000円(現在は約180円)で固定されていて、日本の景気がいかによくなろうと、その関係は同じだったので、外国製品がやたらに割高(円安状態)になっていたのでした。

さらに、当時の酒税法は焼酎に比べ、ウイスキーなどの洋酒は税率がとても高かったうえ、品質により特級、一級、二級に分類されていて、特級になるほど高税率が課せられていました。もちろん、ジョニ黒は特級だったので、酒税もがっつりと高かったのです。

引き続き、昭和のあれこれについて書いていきたいと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)



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