夏の疲れや夏バテを薬膳茶で撃退!【お手軽ズボラ薬膳】
こんにちは、国際中医薬膳師のsatominです。
病院に行くほどでもない体の不調や未病を、東洋医学をベースにした薬膳で改善できたらいいですよね。
薬膳というと「難しそう」「特別な食材を使うんでしょ?」といったイメージがありますがご安心を。本格的な薬膳茶の他にも、お手軽にコンビニで買える物を使った、ズボラ飯ならぬズボラ薬膳もご紹介します!
第1回目は夏バテを撃退!夏の薬膳です。
毎日暑い日々が続き食欲を落ちてやる気がでないという方もいるのでは?そんな時には夏の薬膳を取り入れてみましょう。
お手軽ズボラ薬膳file01:夏バテを撃退!夏の薬膳
東洋医学(中医学)では夏は立夏から立秋の前日までのおよそ3ヶ月間を指します。
夏の薬膳は体内の熱を冷ます「清熱」と、体内の水分のバランスを調整する「生津」の効能がある食物を用います。夏は心気を傷め易いので養心安神も大切です。
■お手軽!コンビニ薬膳編
まずは、手軽で簡単!コンビニやスーパーなどで買える物を使います。
夏の暑さやエアコンによる冷えでちょっとだるいという方や、未病を改善する夏の薬膳です。
「甘酒」が夏に飲むと良いというのは知れ渡ってきていますが、薬膳的にも生津と、疲れやすい時に気を補う「補気」の効能があり、夏に最適です。江戸時代の夏の定番ドリンク「甘酒」は現代でも夏に摂りたい飲み物です。暑い時はホットではなく冷やし甘酒もいいですよ。
第1回目なので基本的なことをお話しすると、薬膳では食物には「性味帰経」というのがあります。食性は温性、熱性、平性、寒性、涼性の五性あります。食性は体を温めたり冷やす性質のことです。食味は酸味、苦味、辛味、鹹味(かんみ)、甘味の五味あります。食味には、東洋医学的には私達が味わっている食物の味と、人体に効能がある「食味」という2つの意味があります。五味が体(五臓六腑)のどこに作用が伝えられていくかが帰経と言います。
前述の「甘酒」で言うと、食性は温性、食味は甘味と辛味、帰経は心肝肺胃になります。
また、薬膳の大切な考え方として「弁証」があります。季節だけでなく、その人その人の体質にあった食物を摂ることを大切にするという考え方を「弁証」と言います。
次の2タイプのうち、あてはまる方を見てみてくださいね。
【暑がりタイプ】
外でのお仕事や、暑くて暑くて仕方がない、という体内に熱がこもっているタイプの方は、清熱作用のある物を使います。
「甘酒」と同じくらい夏場にぴったりな飲み物があります!清熱生津作用がある「緑茶」です。「緑茶」をベースに同じ清熱作用のあるパイナップルを加えてアレンジティーにしてみてはいかがでしょうか。
・スパークリング パイングリーンティー
材料:緑茶(冷茶)、パイナップル(カットフルーツ)、さとうきび(きび糖)、炭酸水(無糖)
中医薬膳としての性味帰経と効能は、
緑茶(冷茶)(苦甘/涼/心肺胃肝)生津、清熱、安神
パイナップル(甘微酸/平/胃腎)清熱、解暑、補気
さとうきび(きび糖)(甘/寒/肺胃)清熱、生津
冷茶をソーダで割ったティーソーダーは清涼感があるので暑い時にはぴったりです。
グラスにカットしたパイナップルをいれ、冷茶と無糖の炭酸水を注ぐ。お好みでシロップなどで甘さを調整ください。シロップは清熱生津作用があるきび糖だとなお良いです。あれば清熱生津解暑のレモンや清熱の薄荷(ミント)を添えてもなお良いです。
緑茶は茶葉から淹れる場合、さっぱりとした釜炒り茶や、旨みと渋みもしっかりして軽い普通蒸しの本山茶や川根茶が合います。
◆それでも面倒な方は、こんなズボラ薬膳も!
外出先などで買うペットボトル飲料は緑茶を選びましょう。
最近ペットボトルやカフェなどで緑茶にレモンやミント(薄荷)がブレンドされたドリンクを見かけますが、清熱の効能がある食材なので、薬膳的にも夏向けです。
例えば、伊藤園の「グリーンティーモヒート」は、水出しミントジュレップ(ライムとレモン、ミント、砂糖を混ぜたシロップ)に緑茶(グリーンティー)を合わせています。緑茶だけよりも爽やかで、体の熱を冷ましてくれます。
【冷え性タイプ】
外は暑いですが、室内のエアコンで冷えも感じている方は、清熱作用がある食材に加えつつ、ベースは温性の紅茶を使いましょう。
・サングリア風紅茶
材料:紅茶(ホット)、桃、スイカ、パイナップル
中医薬膳としての性味帰経と効能は、
紅茶(苦甘/温/心肺)養心、安神
桃(甘酸/温/肺脾肝)生津、補気
スイカ(甘/寒/心胃腎)清熱、解暑
パイナップル(甘微酸/平/胃腎)清熱、解暑、補気
温かい紅茶を淹れ、カットしたフルーツを入れたティーポットに注ぐだけ!ミルクは入れずにストレートで飲みましょう。紅茶にフルーツの甘みがあわさり芳醇な味わいに。味だけでなく香りでも安らぐ一杯です。
生津補気の桃と、清熱解暑のスイカとパイナップルを使ったフルーツティーです。
蒸し暑くてイライラしている人にも養心安神作用のある紅茶は最適。紅茶はフルーツに合う、セイロン紅茶のキャンディやインド紅茶のニルギリなどがおすすめですが、家にある茶葉やティーバッグでOKです。
◆それでも面倒な方は、こんなズボラ薬膳も!
超簡単!グラスにアイスの実(桃・マンゴー)を入れて、アイスティーを注ぐだけ! 「簡単!ひんやりサングリア風紅茶」です。
紅茶をベースに生津補気の桃と、生津益胃のマンゴーをあわせています。
飲む時はスプーンで混ぜて、アイスの実を少し崩します。桃とマンゴーの香りで気分も上がります。口に含むと果実の甘みと紅茶の渋みとコクが広がり、アイスの実のシャリシャリ感が楽しいです。
紅茶はダージリン2ndフラッシュの水出しを使っていますが、紅茶は渋みがあって、水色が濃いもののほうが向いています。
また、外出先などでは、カットフルーツのスイカやパイナップルを紅茶と一緒に食べるだけでもOK!清熱解暑の効能があるスイカやパイナップルは、暑がりタイプも積極的に食べたい夏のフルーツです!
野菜で言うと、清熱生津の効能がある冬瓜と、健脾補気のとうもろこし、生津解暑のトマト、解暑(清熱解毒)の苦瓜、清熱解暑の緑豆などもおすすめ!肉では補気滋陰の豚肉を意識して摂りましょう。
毎年夏バテしてしまうという方や、外にいることが多い方は本格的な薬膳茶を飲んでしっかり養生しましょう。といっても、薬膳茶に使う材料は、薬事法で医薬品の対象ではないので漢方薬局や中華食材専門店などでも購入できます。いわば東洋のハーブティーです。
■夏バテ撃退!飲んで元気になる薬膳茶
暑いとついつい冷たいものを摂りすぎて胃腸の働きが弱まります。その上、暑くて汗をたくさんかいて汗と一緒に気も出ていってしまう為、気づいたら夏バテ!という方も。
ひどい夏バテの場合、漢方薬もあります。夏バテの代表的な漢方といえば清暑益気湯。含まれている生薬を見ると、熱を沈め、胃腸の調子を整え、体内の水分(津液)のバランスを調整する組み合わせになっています(清熱補気)。
清暑益気湯組成:
黄耆、人参、麦門冬、蒼朮(白朮)*1、当帰、五味子、陳皮、黄柏、甘草
*1 医学六要では白朮。ツムラの清暑益気湯のエキス剤では蒼朮を使用。
これらを参考に夏バテ向けの薬膳茶を作ってみましょう。
弁証:気陰両虚
施膳方針:補陰補気、益気生津、清熱袪暑
<材料1人分> (性味/帰経)効能
・竹葉 2グラム(甘淡/寒/心肺胃)清熱除煩、生津
・麦門冬 3.5グラム(甘微苦/微寒/肺心胃)潤肺養陰、益胃生津
・五味子 1グラム(酸/温/肺心腎)生津斂汗、寧心安神
・人参 1.5グラム(甘微苦/微温/脾肺)大補元気、補脾益肺、生津止渇、安神増智
・陳皮 1.5グラム(辛苦/温/脾肺)理気、調中、燥湿、化痰
補気の人参、理気健脾の陳皮、清熱生津の竹葉、生津の麦門冬と五味子をあわせています。人参と陳皮で健脾益気の効能があり、人参と五味子には安神作用もあります。
材料を急須やポットに入れ、お湯(240cc)を注いで3~5分程度待ちます。*2
時間が経ったら、茶漉しを使ってポットからカップに注ぎます。
お湯を足しながら2、3煎まで飲めます。
*2 薬膳茶の時間は目安として抽出しやすいもので3分、抽出しづらいもので5分程度待ちます。煮出す(沸騰してから10分程沸かす)と効率よく成分を摂取できます。ヨクイニンなど硬いものが入っている場合は煮出してください。
東洋医学では「薬食同源」という言葉があります。食べ物も生薬(中薬)も同じ、日々の食事で体の不調を治し、健康を増進する食養生が大切です。
夏には寒涼性の食べ物が適していますが、だからといって極端に冷たい物を摂取するのは控えましょう。ビールやアイスなど、冷たいものばかり摂っていると胃腸の機能が衰えて、体調がよくないと感じるようになります。そんな時にはぜひズボラ薬膳や薬膳茶を試してみてくださいね。
(satomin@国際中医薬膳師/お茶ライター Teawriter)
※監修:梁ペイ(中医営養・薬膳学研究会代表/国立北京中医薬大学日本校助教授)
→中医営養・薬膳学研究会ホームページ
※参考文献:『現代の食卓に生かす「食物性味表」』(日本中医食養学会)
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