『おかえりモネ』の夏木マリは何故いちいちカッコイイ?

2021/6/2 22:30 龍女 龍女




(おかえりモネからの1シーンから引用 イラストby龍女)

今回の役は、ヒロインの永浦百音が就職した宮城県登米市の森林組合を作った人である。
伊達家の家老の家に生まれた「姫」と呼ばれる大山主、新田サヤカである。

新田サヤカは毎朝貞山政宗公遺訓(貞山は独眼竜と呼ばれた伊達17代政宗の法名から採られた尊称)を読誦する。実は出所が怪しい。
登米は14代伊達稙宗の8男梁川宗清の子、白石宗直から始まる登米伊達家がある。
伊達の14代・15代は子沢山で、分家が多い。伊達政宗が東北の覇者になれたのも家臣団が各地にあったお陰だ。

新田サヤカの家に急に同居し始めた百音。
森林組合の人たちに孫だと勘違いされる。
百音の祖父永浦龍己(藤竜也)と知り合いで預かったという。

百音がとにかく実家の気仙沼沖の亀島から出ていきたい。何をして良いか分からない。
それを見守りつつ社会人として色々教えていく。

本人は独身で子供がいないと言うが、森林組合参事の川久保博史(でんでん)が台詞の中で結婚歴があることをほのめかしたので、誰か出てくるのか今後の展開が楽しみだ。

夏木マリの活躍を代表作を中心に追ってきた。
再デビュー曲の『絹の靴下』から一貫している。
一度、『絹の靴下』の歌詞を検索してほしい。

内容は裕福な育ちの女が束縛された上流生活から解放されたい。絹の靴下のある生活に比喩している。
作詞は阿久悠である。
夏木マリの個性にあてて書いたはずだ。
彼女に似合う高級な洋服の下着に象徴されている。
阿久悠もGSブームの末期に作詞家を始めている。

日本では1960年代にロックをめざす人は殆ど裕福な家の子息であった。
東京生まれで進学校出身の中島淳子こと夏木マリは、兵庫県淡路島の警官の子で明大から広告代理店勤務から放送作家に転じた深田公之こと阿久悠には、お嬢様に映ったに違いない。
どの程度裕福だったかは分からない。洋食のマナーが身についていた。

自分はどうしたいかは、最初から分かるわけではない。
試行錯誤を重ねているうちに徐々に見えてくる。
夏木マリも40代を過ぎてからようやく高校生に夢見ていた姿に一歩近づいた人生になった。
筆者も高校生の時、好きになった映画のスチール写真を見ながら絵を描いていた。
40代半ばになって急に同じ事を始めている。
若い頃は分からなくても、もがいて色々していれば何とかなる。

それを体現している夏木マリは、今でも我々の憧れの存在であり続ける。


※参考文献
春日太一 鬼才 五社英雄の生涯 (文春新書)
春日太一編集 五社英雄 (文藝別冊)


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