密を避けて優雅に楽しむ【洋館】巡りをしてみない?

2020/11/2 20:30虹

 カフェ開業を目標としている広告代理店勤務の春野藤(池田イライザ)と、ロマンティックでノスタルジックな「乙女建築」巡りが趣味の建築模型士・植草千秋(田口トモロヲ)が、東京の名建築を探訪しながら日々や人生について語り合い、さらにそこで味わえる絶品ランチも紹介するドラマ「名建築で昼食を」

▲ドラマを書籍化!2020年12月19日発売予定の
『名建築で昼食を 建築×おいしいもの』(CCCメディアハウス)

 惜しくも先月最終回を迎えましたが、このドラマを見て「名建築に足を運んでみたい!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 日本全国はもちろんのこと、東京にも「名建築」と呼ばれる建物は数多く存在します。残念ながら一般公開されていないものもありますが、公開されている施設に関しては都や区が管理しているものも多く、無料または手頃な価格で見学することが可能です。混みあうことも滅多にないので、密を避けて楽しめるのも嬉しいですね。

 秋の気配もだんだんと深まり、散策が楽しい季節となりました。今回はちょっと豪華な(それでいてお財布にやさしい)洋館を3邸ピックアップしてみましたので、秋のお散歩の参考になれば幸いです。


旧岩崎邸庭園

 上野恩賜公園は不忍池から、徒歩10分ほどでアクセス可能の「旧岩崎邸庭園」
 岩崎彌太郎の長男で三菱第3代社長・岩崎久彌の本邸として、1896年(明治29年)に建てられました。当時は20棟もの建物が敷地内に並んでいましたが、現在は洋館・ビリヤード場・和館の3棟。洋館とビリヤード場は、三菱一号館やニコライ堂を手掛けたジョサイア・コンドルの設計によるものです。


 館内にはさまざまな装飾が施されていますが、中でも「金唐革紙」と呼ばれる紙を用いた壁紙が見事! 和紙に箔を張り、模様を彫ったローラー状の木で凹凸をつけたものなのですが、見てくださいこの質感! この贅を尽くした壁紙が、部屋一面に貼ってあるわけです。控えめに言って最高とはこのことか。

▲いとも豪華な「金唐革紙」。これが部屋一面に!

 洋館は主にゲストを迎えるための空間であり、対する和館は岩崎家の居住空間でした。床の間や襖には、日本画の巨匠・橋本雅邦が下絵を描いたと言われる障壁画が残っており、組子や錺には三菱の特徴でもある「菱」をあしらったものが。
 華麗なる技に満ちた邸宅や庭園を400円で味わうことができるのは嬉しいですよね。

▲和館から庭園をのぞむ

 また、こちらは平日であれば写真撮影が可能です。ただし人物を入れた撮影等、シーンによっては許可が必要なものもありますので、事前に「岩崎庭園サービスセンター」へお問い合わせを。


▮旧岩崎邸庭園
・東京都台東区池之端一丁目
・03-3823-8340(岩崎庭園サービスセンター)
・午前9時~午後5時(入園は午後4時30分まで)
・年末年始休館
・一般 400円 / 65歳以上 200円



鳩山会館


 東京都文京区音羽にあることから「音羽御殿」とも呼ばれる鳩山会館。第52代~54代まで内閣総理大臣を務めた鳩山一郎の邸宅です。
 建物が完成したのは1924年(大正13年)、関東大震災の翌年でした。手掛けたのは鳩山一郎の中学の頃からの友人でもある、建築家の岡田信一郎「洋式建築の名手」と謳われた彼の作品には、明治生命館大阪中央公会堂などがあります。

▲陽光まぶしいサンルーム

   太平洋戦争では屋根に空襲の被害を受けることもありましたが、瀟洒な洋館は戦後、政治の舞台になったことも。
 建物には「鳩」の装飾が内外様々な場所にあり、それを探すのも一興です。中でも階段の踊り場に設えられた大きなステンドグラスは圧巻! 空舞う鳩と五重塔が見事です。

▲塔は法隆寺の五重塔をモチーフにしたと言われています

 近年老朽化が進んだこともあり、1995年(平成7年)に大修復が行われ、現在では当時の姿を忠実に再現した記念館として一般公開されています。また、建物はテレビドラマ「花より男子」や、アニメ「THE IDOLM@STER」に登場したことでも話題となりました。
 折しも庭園は秋バラのシーズン真っ盛り! こちらも入館料600円とお手頃です!


▮鳩山会館
・東京都文京区音羽1-7-1
・03-5976-2800
・午前10時~午後4時(入園は午後3時30分まで)
・火~日曜開館。※1、2、8月は休館。 ・一般 600円 / 65歳以上 500円 /高校生以上 400円


旧前田家本邸(旧前田侯爵邸)

 井の頭線・駒場東大前駅から歩いて10分ほど、駒場公園内に建つ華麗なレンガ造りの洋館と隣に建つ和館が旧前田家本邸です。日本民藝館のすぐ近くということもあり、はしごをする方もいらっしゃるのでは(民藝館といえば旧柳宗悦邸も名建築)。
 現在は駒場公園となっているこの土地ですが、明治時代は東京帝国大学(現在の東京大学)の農学部(帝国大学農科大学)の校地でした。その後農学部は本郷に移転することになり、代わりに本郷に居を構えていた旧加賀藩の前田侯爵がこの地にやってくることになったのです。

▲堂々たる大階段は細工も豪華絢爛

 前田家16代当主前田利為が建てたこの邸宅は、地上3階地下1階の洋館と純日本風の和館から成り立っています。洋館と和館は通路で結ばれていますが、現在通路は非公開。その代わり、それぞれの入り口から入ることが可能です。当時は「東洋一の大邸宅」と呼ばれていたそうですが、中に入ってびっくり! これはすごいわ。東洋一と言われるのも納得です。

▲夫人室は邸内でも最も華麗な部屋。家族や親類が集まる空間でもありました。

 滞欧が豊富で駐英大使館附武官も務めた利為は、「日本には外国からの賓客を迎え得る邸宅がない」ことを嘆いており、そのため住居を兼ねた迎賓館をと、この洋館と和館の設計を決めました。旧岩崎邸では和館を居住スペースにしていましたが、こちらの和館は「日本文化を海外からのお客様に知ってもらうため」にも使っていたそうです。
 しかし華やかな時間も長くは続きません。第二次世界大戦で利為が戦地で死去、終戦後は連合軍に接収されてしまいます。その際、内装もだいぶ変わってしまいました(現在は建設された当時の姿に修復)。その後昭和32年に接収が解除され、39年には土地と洋館を東京都が買い取り、42年には洋館が東京都近代文学博物館として公開されます。そして月日は流れ、平成25年に重要文化財に指定され、名称を「旧前田家本邸」と定められたのです。

▲食堂

 旧前田家本邸は工学博士の塚本靖をはじめ、平安神宮を手掛けた佐々木岩次郎や、高島屋東京店を手掛けた高橋貞太郎ら、当時最高の技術者たちの手によって作られています。そのため何処も彼処も見事なのですが、こちらなんと入館料無料! 嘘でしょ? 本気? と思ってしまうのですが、本当なんです。ありがたや……!


▮旧前田家本邸(旧前田侯爵邸)
・東京都目黒区駒場4-3-55
・03-3466-5150(洋館)/03-3460-6725(和館)
・午前9時~午後4時30分(洋館)/午前9時~午後4時(和館)
・水~日曜・祝日公開(洋館)/火~日曜・祝日公開(和館)
 ※いずれも年末年始を除く
・無料



 以上3つの洋館をご紹介しましたが、ほかにも東京には「名建築で昼食を」の劇中でも紹介された東京都庭園美術館自由学園明日館はもちろんのこと、食事だけでなく宿泊もできてしまう学士会館、ガイドツアーも充実の旧古河邸など、たくさんの素晴らしい建築があります。今回は洋館を主に紹介しましたが、旧安田楠雄邸庭園をはじめとする和館も捨てがたいですね。

▲庭園美術館


 冒頭にも書きましたが、密を避けて充実した時を過ごせるのが嬉しいところ。そしてお財布にやさしいのも大きなポイントです!
 ドラマの原案でもある甲斐みのりさんの『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ 』(エクスナレッジ)を片手に歩いてみるのも面白そう。この先もずっと多くの人に開かれる施設であるように、見学の際はルールを守って建物を大切に。身近な名建築を愛でてみてはいかがでしょうか。

▲旧前田家本邸



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▲『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ 』甲斐みのり・著(エクスナレッジ)