横浜、鎌倉、湘南、箱根-神奈川のエリア別おススメ美術展ガイド

2018/10/12 12:00 yamasan yamasan

ようやく秋らしくすがすがしい天気になってきましたが、アートファンのみなさま、いかがおすごしでしょうか?
東京・上野界隈では西洋絵画の展覧会で盛り上がっていて、さらに年末にかけて西洋絵画ラッシュが続きますが、私が住む神奈川県内でも、けっして派手さはないものの、これは見逃せないという展覧会が数多く開催されています。
そこで今回は、都内や関東近県のみなさまにもぜひ神奈川にお越しいただきたいと思い、これから開催されるものも含めてエリア別におススメの展覧会を紹介してみました。

横浜エリア

この秋の「私の一押し」はこちら
室町時代から江戸時代にかけて日本の絵師たちが憧れ、描いた、中国・杭州にある西湖。その西湖を描いた作品をいくつも見ることができるのが金沢文庫 特別展「西湖憧憬」
金沢文庫 特別展「西湖憧憬」
会  期   9月22日(土)~11月11日(日)
休館日   月曜日
開館時間  9:00~16:30(入館は16:00まで)
観覧料 一般 700円、20歳未満・学生 500円、65歳以上 200円、
      高校生 100円、中学生以下・障がい者の方は無料 他
前期は10月19月(金)まで、後期は10月20日(土)~11月11日(日)まで。 展示替えリストほか詳細は同館ホームページをご覧ください→金沢文庫




「金沢文庫」というと、東京方面にお住まいの方は「ちょっと遠いなあ」と思われるかもしれませんが、けっして遠くはありません。 京急品川駅から金沢文庫駅まで快速特急だと30分あまり、さらに金沢文庫駅からは徒歩12分。

金沢文庫駅東口を出て海の方向に向かってなだらかな上り坂をしばらく歩いていくと見えてくるのが古刹・称名寺(しょうみょうじ)の赤門。


赤門をくぐって桜並木の参道を通るとその先に見えるのは仁王門。




迫力満点の仁王さんたちにご挨拶をしてから境内に入り、「浄土庭園」を右手に見ながら左方向に向かいます。


そしてまるでタイムマシンの入口のようなトンネルをくぐると、


金沢文庫の入口が見えてきます。
(住宅街を通って金沢文庫の建物の反対側から入る近道もありますが、称名寺の境内を経由するルートがおススメです。)

この看板の作品は伝・雪舟《西湖図》(静嘉堂文庫美術館)で、前期のみの展示ですが、展示室内の落ち着いた山水画の世界を代表しているようで、今回の展覧会のPRにはうってつけの作品と言えるでしょう。
ぜひこの機会に金沢文庫にお越しになってみてはいかがでしょうか。


他に横浜エリアで注目の展覧会はこちらです。

横浜美術館「駒井哲郎-煌めく紙上の宇宙」展(10月13日~12月16日)
   現代銅版画のパイオニア・駒井哲郎の展覧会です。10月13日(土)から始まります。コレクション展も充実しています。こちらもぜひお立ち寄りください。

横浜市歴史博物館「寄木細工 Art&History」展(9月22日~11月11日)
市の中心からは離れていますが、幕末から明治にかけての家具の超絶技巧が展示されているので、見逃せない展覧会です。

横須賀まで足を伸ばせばモダンアートの展覧会も開催されています。
横須賀美術館「モダンアート再訪」(9月15日~11月4日)
こちらは福岡市美術館のコレクション展です。

鎌倉エリア

鎌倉エリアでおススメするのは、四季折々に季節感あふれる展覧会を開催している鏑木清方記念美術館。
賑やかな小町通りから路地を少し入った閑静な住宅街の中にあるこじんまりとした美術館です。


鏑木清方記念美術館 企画展「色づく秋、色めく秋-清方の美」
会  期   9月1日(土)~10月17日(水)
休館日   月曜日
開館時間  9:00~17:00(入館は16:30まで)
観覧料 一般 200円、小中学生 100円 他
アクセス 鎌倉駅下車、小町通りを北に徒歩7分左折



チラシの作品は《桜もみぢ》。桜と言えばもちろん春ですが、そこは清方。紅葉した桜の葉を画面に散らせて秋の風情を表しています。
こちらは10月17日で終わりますが、次回の展覧会も楽しみです。

鏑木清方(1878-1972)~同館チラシより
明治から昭和にかけて活躍した近代日本画の巨匠。粋と品格をあわせもつ美人画で知られ、市井の人々の生活や文学に取材した作品も多く描きました。平成10年(1998)、晩年を過ごした鎌倉雪ノ下の旧居跡に記念美術館が開館しました。


鏑木清方記念美術館 特別展「泉鏡花生誕145年記念 清方描く、鏡花の世界」
会  期   10月20日(土)~11月25日(日)
休館日   月曜日
開館時間  9:00~17:00(入館は16:30まで)
観覧料 一般 300円、小中学生 150円 他

講演会や展示解説はじめ関連イベントもありますので、詳細は同館ホームページをご覧ください→鏑木清方記念美術館



鎌倉では「ミュージアムめぐりスタンプラリー」を実施中。詳しくは6月に「いまトピ」に掲載されたコラムをご参照ください。
梅雨の鎌倉-アジサイとミュージアムめぐり

秋の鎌倉と言えば楽しみなのが建長寺と円覚寺の「宝物風入」。
収蔵している絵画や書状、青磁や仏具などの文化財の虫干しを兼ねて展示する毎年恒例の行事で、今年は11月3日(土・祝)から5日(月)まで3日間限定で開催されます。堂内に宝物が所狭しと並べられるさまは壮観です。
詳細は鎌倉市ホームページをご覧ください→かまくら観光

また、長谷寺の観音ミュージアムでは《長谷寺縁起絵巻》が公開中。
展示替えがあるので、詳細はこちらでご確認ください→長谷寺 観音ミュージアム

湘南エリア

湘南エリアではすでに茅ヶ崎市美術館「小原古邨展」が大ブレイクしていますが、せっかく湘南まで来られるのなら、JR東海道線の各駅で降りて湘南ミュージアムめぐりの旅をしてみてはいかかでしょうか。
モデルコースは、東京方面から見て遠い方から順に、午前 平塚駅に下車して平塚市美術館「小倉遊亀展」、午後 茅ヶ崎駅に下車して茅ヶ崎市美術館「小原古邨展」、そして最後に、19時までオープンしている藤沢市藤澤浮世絵館。こちらは辻堂駅下車です。

藤沢市藤澤浮世絵館「やじきたが来た!見た!食べた?藤沢・東海道の名所と名物」
会  期   9月8日(土)~11月4日(日)
休館日   月曜日(祝日、振替休日の場合は翌平日)
開館時間  10:00~19:00(入館は18:30まで)
入館料無料
今回の展覧会はすべてが同館所蔵作品なので撮影ができます。ただし、11月10日(土)から始まる「松竹大谷図書館所蔵 3D浮世絵 歌舞伎組上燈籠の世界」は松竹大谷図書館の作品が展示されるので写真撮影ができません。作品を撮影するなら今がチャンスです。

同館ホームページはこちら→藤沢市藤澤浮世絵館


辻堂駅東口改札北口出口を出て広い道路を北に向かって5分ほど歩くと右側にCocco Terrace(ココテラス)湘南というオフィスビルが見えてきます。藤澤浮世絵館はこの7階です。


エレベーターに乗って7階で降りると、そこはもう浮世絵ワールド!

長細い展示室に入ると、十返舎一九作『東海道中膝栗毛』をもとに、文を仮名垣魯文、絵を落合芳幾が担当した『東海道中栗毛野次馬』が展示されています。

日本橋から始まって、それぞれの宿場町での名物や弥次さん、喜多さんのドタバタ劇まで面白おかしく描かれています。解説パネルも大きくて読みやすいのが助かります。

続いて広重の張交絵(はりまぜえ)のコーナー。

張交絵とは、次の写真のように一枚の絵の中に数種類の絵を配置したものです。

あッ、鞠子宿だ!(次の写真の左下は鞠子宿のとろろ汁)。

広重の鞠子宿と抽象画家の創始者の一人、カンディンスキーとの深~い関係はこちらのコラムをご参照ください→もうすぐオクトーバーフェスト!ミュンヘンも横浜も、カンディンスキーもモネも広重も、みんなつながっていた!?(バイエルン美術紀行3)
他にも江の島を描いた浮世絵のコーナーがあったり、江戸時代に印刷された十返舎一九の『東海道中膝栗毛』が展示されていたりします。
こちらは江戸時代の旅人たちの旅の道具。
さあ、旅の道具も出てきたところで、みなさんも弥次さん、喜多さんと一緒に東海道の旅をしてみませんか?

参考までに、平塚市美術館「小倉遊亀展」の詳細はこちらをご覧ください→平塚市美術館「小倉遊亀展」

茅ヶ崎市美術館「小原古邨展」の詳細はこちらです→茅ヶ崎市美術館「小原古邨展」

箱根エリア

湘南からさらに箱根まで足を伸ばすと、それぞれ個性的な美術館が多くありますが、今回は開館5周年を迎えた岡田美術館を紹介したいと思います。

岡田美術館「美のスターたち-光琳、若冲、北斎、汝窯など名品勢ぞろい-
会  期   9月30日(日)~2019年3月30日(土)
休館日   会期中無休(12月31日、1月1日休館)
開館時間  9:00~17:00(入館は16:30まで)
観覧料 大人 2,800円、小中高生 1,800円 他


同館ホームページはこちら→岡田美術館


岡田美術館に行ったらポーラ美術館にも寄りたいですね。 公式ホームページはこちらです→ポーラ美術館「ルドン展」
「ルドン展」は12月2日(日)まで開催されています。

これから紅葉の時期を迎え、観光には絶好のシーズンになります(箱根は紅葉の時期は道路が渋滞するので要注意ですが)。
神奈川のミュージアムも充実した展覧会を開催しています。この機会にエリア別にミュージアムめぐりをしてみてはいかがでしょうか。

(関連コラムのご紹介)
この秋はアートファンにとってはうれしい悲鳴をあげたくなるくらい、行きたい展覧会が盛りだくさん。
東京都内の西洋絵画や仏像展のレビューはこちらが参考になります。いまトピアート部 KINさんのコラムです。

芸術の秋、何を観たら良い?東京のオススメ展覧会12選。殿堂入り?仏像展が凄い?
https://ima.goo.ne.jp/column/article/6280.html

東京都内の近代日本画の展覧会も充実してます。
【秋のおススメ近代日本画展】3つの美術館でたどる巨匠たちの軌跡
https://ima.goo.ne.jp/column/article/6312.html