『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ、高橋一生主演『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は〇〇ファンとしてのリテラシーが試される内容!?

2023/6/2 17:30 龍女 龍女

ヨハネス・フェルメール(1632~1675)本名ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト。
オランダで陶器が有名な都市デルフトで生れ、そこで死んだとされる。
43年の短い生涯で、現存が確実な作品は37点と言われる。
もし新たに真作が見つかれば、オークションで億は超えるであろうとされる画家である。
フェルメールの作品は、第二次大戦時にはメーヘレン事件で多くの贋作のネタ元になった。

このフェルメールの代表作が
『真珠の耳飾りの少女』(青いターバンの女)マウリッツハイス美術館所蔵である。

今回、イラストを描いていて気がついた。
パンフレットから引用した泉京香のポーズが『真珠の耳飾りの少女』にそっくり。


(泉京香に扮する飯豊まりえ イラストby龍女)

ちなみにこの名画の別名が北欧のモナ・リザである。

ルーヴルが所有しているのは、『天文学者』(1668)と『レースを編む女』(1669~1670)の2点である。

ルーヴル所蔵の『天文学者』には、日本から輸入された着物をガウンのように着ている天文学者が描かれている。
江戸時代、西欧各国で唯一日本と直接貿易の関係にあったのが
通称オランダことネーデルランド連邦共和国(1581~1795当時。1830年からネーデルラント王国)であった。

「黒い絵」の作者、山村仁左衛門は当時日本にあった様々な流派の絵画を柔軟に取り入れていたが、特に心酔していた画法が「蘭画」と呼ばれる西洋の陰影を付けたモノだ。
つまり、山村仁左衛門が描いた「黒い絵」は、水墨画とは違う顔料で描いた西洋画風のモノである。
しかし、この時代に抽象画というモノはない。
だから、画題が具体的に何かを描いたモノになる。
恐らく山村仁左衛門は18世紀の江戸後期の人のハズだから、ルネサンス以降の西洋画法を輸入された油絵か、銅版画を集めた書籍で知っていたはずだ。
岸辺露伴が観た「黒い絵」の本物は、奈々瀬が黒い髪を振り乱して、鑑賞者を絵の中へ誘いこうでいるような不気味な構図であった。


(奈々瀬に扮する木村文乃 イラストby龍女)

実はあの『モナ・リザ』を観ているとどこの場所からもモナリザに見つめられられた錯覚をする。
山村仁左衛門が描いた黒い絵はいわば日本のモナ・リザがあったらこういう絵ではないかと生み出されたフィクションである。


さて視点を映画本編から、現実に変えよう。
何故ルーヴル美術館は「美の殿堂」なのだろう?

さっきあげた名品を作られた年代を古い順に並べてみよう
『サモトラケのニケ』
『モナ・リザ』
『天文学者』
『レースを編む女』

どれもフランス人が作ったモノではない。
フランス革命以前は、王侯貴族が購入し寄贈されたもの。
『サモトラケのニケ』は1863年にギリシャのサモトラケ島(現在のサモトラキ島)で発見された。

『モナ・リザ』は1911年8月21日に盗難事件があった。
2年後に発見されたが犯人はイタリア人ビンセンツォ・ペルージャで、愛国者で作品はイタリアで展示されるべきモノだという動機だったが、返却された。
フランスにあるのはレオナルド・ダ・ヴィンチが晩年までずっと持っていたからだ。
最後のパトロンがフランス国王フランソワ1世(1494~1547)だった。
ルイ14世が1682年にベルサイユ宮殿に遷宮するまで歴代の王宮があった場所が、ル-ヴル美術館の前身である。

しかし、所蔵品の内、ナポレオン戦争時の略奪品、例えば古代エジプトの宝物は、エジプト政府から返却の訴えなどもあって、一部が返却され今も交渉中だ。


『岸辺露伴 ルーヴルに行く』に登場する「黒い絵」どころの話では無い。
ルーヴルは芸術至上主義の名の下に、世界各地から集められた歴史的なお宝は数多くの人々の心に傷跡を残した。
美に関する葛藤は、個人にも国家にも問題が多すぎて難しい。


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