『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ、高橋一生主演『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は〇〇ファンとしてのリテラシーが試される内容!?

2023/6/2 17:30 龍女 龍女

まずはシネマトゥデイからあらすじを引用 して、筆者の補足を加えて紹介する。

特殊能力を持つ、漫画家・岸辺露伴(高橋一生)は、青年時代に祖母(白石加代子)の元旅館の下宿で淡い思いを抱いた女性・奈々瀬(木村文乃)からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。

それは最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった。

時は経ち、新作執筆の過程で、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は、編集者の泉京香(飯豊まりえ)を連れて取材とかつての微かな慕情のためにフランスを訪れる。
しかし、不思議なことに美術館職員エマ野口(美波)すら「黒い絵」の存在を知らず、データベースでヒットした保管場所は、今はもう使われていないはずの地下倉庫「Z-13 倉庫」だった。
そこで露伴は「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することとなる……。

岸辺露伴と泉京香がルーヴルへ行くまでの件だけ少し詳しく述べよう。
「黒い絵」とは、モリス・ルグラン作のキャンバス一杯に黒く塗られた絵画作品であった。


(『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の高橋一生 イラストby龍女)

岸辺露伴はリアリティを追求するために様々な場所で取材をする漫画家である。
漫画に限らず創作物は0から生み出すことはない。

取材のために仕事の相棒である編集者の泉京香と共に「黒い絵」が売り出された日本のオークションに参加し、落札した。
この時競り合っていたワタベ(池田良)とカワイ(前原滉)が邸宅まで追いかけてきて、強奪した。
ところが二人とも逃げている最中の山中で何者かに殺されてしまった。

黒い絵を取り戻した岸辺露伴は、黒地の中に巣が貼っている様子が描かれたその絵画を観て、ガッカリする。

かつて奈々瀬が言っていた「黒い絵」とは似ても似つかない内容だったからだ。
ただ、絵の勢いから分かることは
「この絵は黒い絵を写したモノだ。本物はルーヴルにある」

実はこの詳しい場面は、原作には出てこない。


(小林靖子 イラストby龍女)

脚色したのは小林靖子である。
脚色したNHK特集ドラマ『犬神家の一族』はすばらしかった。
(ドラマのあらすじと観る前の解説は2023年4月21日のコラムを参照
『犬神家の一族』は犬神佐兵衛が残した遺言状を元におぞましい殺人が繰り返されていく。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ではそのアイテムが露伴の祖母がフランス人へ売ってしまった「黒い絵」にあたる。

実写化された時に、途中から出てきた編集者の泉京香を最初から相棒の設定に変更して、話のきっかけの相手役として本来の相手役であるジョジョ達の代わりを集約している。

ルーヴルは過去にモナリザ盗難事件もあった。
(盗難事件をモチーフにした作品が綾瀬はるか主演の『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』)
警護の観点からも限られた場所の撮影しか許可されない。
映画『岸辺露伴 ルーヴルに行く』に出てくる有名な作品は
ルーヴルの代名詞
レオナルド・ダヴィンチ(1452~1519)の『モナ・リザ』
彫刻はヘレニズム期(紀元前4世紀~1世紀)彫刻の代表作
『サモトラケのニケ』
が大々的に取り上げられている。
だからこの映画でルーヴル観光を期待するとガッカリするのは当然だ。

しかし許可が厳しいルーヴルの所蔵作品から、本編の伏線になりそうなモノを選んだはずだ…。

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