『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ、高橋一生主演『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は〇〇ファンとしてのリテラシーが試される内容!?
原作はそもそも何が言いたいのか?
筆者はズバリ「芸術至上主義」によって起る悲劇について描かれていると考えている。
まず岸辺露伴という主人公の名前から導き出される主人公像から考えてみよう。
日本文学をかじった人なら当然幸田露伴(1867~1947)を思い出すに違いない。
(幸田露伴 イラストby龍女)
国語の教科書で習う代表作は『五重塔』で
かつて谷中にあった天王寺の五重塔(1957消失)を作った二人の職人の葛藤を描いた
「芸術家の苦悩」を描いた日本の近代小説の元祖である。
『岸辺露伴 ルーヴルに行く』で、絵画作品以上に建物の描写に力を入れているのはそこだと考えられる。
ルーヴル美術館は王宮からフランス革命(1789年)で王侯貴族が去った後に市民に開放され美術館として今に至っている。
むしろ幸田露伴の功績は
娘幸田文(1904~1990)
孫青木玉(1929年11月30日生れ)
曾孫青木奈緒(1963年4月14日生れ)
の4代の文人一家の祖で、近代文学の基礎作りをした事だ。
だから、主人公岸辺露伴は漫画家と言うより
文人に近い。
しゃべり方が不自然なのも「書き言葉で喋る男」だからだ。
しかしそこに岸辺と言う名字を足したのは、秀逸である。
『ジョジョの奇妙な冒険』には、「スタンド」と呼ばれる特殊能力が存在し、原作の第3部の以降の主要登場人物はこのスタンドを持っている。
岸辺露伴のスタンドは、人間の過去の記憶が本となって読める
「ヘブンズ・ドア」である。
荒木飛呂彦本人は「岸辺」についてはなんとなく名づけたと言ったそうだが
岸辺とはあの世とこの世を繋ぐ場所を象徴する地形にはふさわしい。
あの世は実在すると言うより、人間の想像の中に存在する。
常に過去の記憶によって刻まれ、感情と結びついたモノが文字化することに着目しよう。
ちなみに岸辺露伴の相棒の編集者、泉京香の名前は
幻想文学の名手泉鏡花(1873~1939)が由来。
幸田露伴の6歳年下でほぼ同時代人である。
しかし、幸田露伴はまだ過渡期で、実は大正時代を代表する短編の名手
芥川龍之介(1892~1927)の書いた
映画の後半に明かされる黒い絵の因縁話に「地獄変」の方が、影響を与えているのではないか?
説話集『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀」を基に
「芸術の完成のためにはいかなる犠牲も厭わない」
を分かり易く描いた小説である。
絵師良秀は貴族の堀川の大殿(モデルは藤原基経)のために絵を描いていたが
性格が傲岸不遜で周囲からも嫌われる始末。
良秀の美しい娘は、大殿に気に入られ女房として奥に仕えるが、その事すら父の良秀は気に入らない。
ある時、地獄絵図を描くために大殿に相談した。
「燃え上がる牛車の中で焼け死ぬ女房の姿を描き加えたいが、描けない。
実際に車の中で女が焼け死ぬ光景を見たい」
数日後、大殿が用意した
火にかけられる牛車には良秀の娘が乗せられていた。
その場は顔をまんじりともせず、絵を描き上げた良秀だが
絵を納めた数日後自殺した。
と言う恐ろしいお話である。
(芥川龍之介 イラストby龍女)
これは『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では、「黒い絵」の作者、山村仁左衛門とその妻・奈々瀬の悲劇に置きかけられて、江戸時代後期の日本の歴史を背景として描かれている。
これも、歴史を知らないと、
「江戸パートいらないでしょ?」
となってしまうが、山村仁左衛門は何故地元のご神木の樹液で黒い絵を描くというタブーを犯してまで絵を描きたかったか?
理由が分からないだろう。
しかしその必然はある。
ヒントは本編の中で、黒い絵を模写したモリス・ルグラン(アルセーヌ・ルパンシリーズン作者モリス・ルブランのもじり)が、贋作を作る目的でもう一作品写していた。
その名は、フェルメール。
モリスの黒い絵を狙っていたワタベとカワイは、そのキャンバスの裏に木枠をハズした布地の本物のフェルメールの絵を高く売ろうとしていた。
岸辺露伴を追いかけた動機はそこにあった。
筆者はズバリ「芸術至上主義」によって起る悲劇について描かれていると考えている。
まず岸辺露伴という主人公の名前から導き出される主人公像から考えてみよう。
日本文学をかじった人なら当然幸田露伴(1867~1947)を思い出すに違いない。
(幸田露伴 イラストby龍女)
国語の教科書で習う代表作は『五重塔』で
かつて谷中にあった天王寺の五重塔(1957消失)を作った二人の職人の葛藤を描いた
「芸術家の苦悩」を描いた日本の近代小説の元祖である。
『岸辺露伴 ルーヴルに行く』で、絵画作品以上に建物の描写に力を入れているのはそこだと考えられる。
ルーヴル美術館は王宮からフランス革命(1789年)で王侯貴族が去った後に市民に開放され美術館として今に至っている。
むしろ幸田露伴の功績は
娘幸田文(1904~1990)
孫青木玉(1929年11月30日生れ)
曾孫青木奈緒(1963年4月14日生れ)
の4代の文人一家の祖で、近代文学の基礎作りをした事だ。
だから、主人公岸辺露伴は漫画家と言うより
文人に近い。
しゃべり方が不自然なのも「書き言葉で喋る男」だからだ。
しかしそこに岸辺と言う名字を足したのは、秀逸である。
『ジョジョの奇妙な冒険』には、「スタンド」と呼ばれる特殊能力が存在し、原作の第3部の以降の主要登場人物はこのスタンドを持っている。
岸辺露伴のスタンドは、人間の過去の記憶が本となって読める
「ヘブンズ・ドア」である。
荒木飛呂彦本人は「岸辺」についてはなんとなく名づけたと言ったそうだが
岸辺とはあの世とこの世を繋ぐ場所を象徴する地形にはふさわしい。
あの世は実在すると言うより、人間の想像の中に存在する。
常に過去の記憶によって刻まれ、感情と結びついたモノが文字化することに着目しよう。
ちなみに岸辺露伴の相棒の編集者、泉京香の名前は
幻想文学の名手泉鏡花(1873~1939)が由来。
幸田露伴の6歳年下でほぼ同時代人である。
しかし、幸田露伴はまだ過渡期で、実は大正時代を代表する短編の名手
芥川龍之介(1892~1927)の書いた
映画の後半に明かされる黒い絵の因縁話に「地獄変」の方が、影響を与えているのではないか?
説話集『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀」を基に
「芸術の完成のためにはいかなる犠牲も厭わない」
を分かり易く描いた小説である。
絵師良秀は貴族の堀川の大殿(モデルは藤原基経)のために絵を描いていたが
性格が傲岸不遜で周囲からも嫌われる始末。
良秀の美しい娘は、大殿に気に入られ女房として奥に仕えるが、その事すら父の良秀は気に入らない。
ある時、地獄絵図を描くために大殿に相談した。
「燃え上がる牛車の中で焼け死ぬ女房の姿を描き加えたいが、描けない。
実際に車の中で女が焼け死ぬ光景を見たい」
数日後、大殿が用意した
火にかけられる牛車には良秀の娘が乗せられていた。
その場は顔をまんじりともせず、絵を描き上げた良秀だが
絵を納めた数日後自殺した。
と言う恐ろしいお話である。
(芥川龍之介 イラストby龍女)
これは『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では、「黒い絵」の作者、山村仁左衛門とその妻・奈々瀬の悲劇に置きかけられて、江戸時代後期の日本の歴史を背景として描かれている。
これも、歴史を知らないと、
「江戸パートいらないでしょ?」
となってしまうが、山村仁左衛門は何故地元のご神木の樹液で黒い絵を描くというタブーを犯してまで絵を描きたかったか?
理由が分からないだろう。
しかしその必然はある。
ヒントは本編の中で、黒い絵を模写したモリス・ルグラン(アルセーヌ・ルパンシリーズン作者モリス・ルブランのもじり)が、贋作を作る目的でもう一作品写していた。
その名は、フェルメール。
モリスの黒い絵を狙っていたワタベとカワイは、そのキャンバスの裏に木枠をハズした布地の本物のフェルメールの絵を高く売ろうとしていた。
岸辺露伴を追いかけた動機はそこにあった。