次のNHK朝ドラ『らんまん』は宮﨑あおいが担当!美輪明宏、内村光良、竹内まりやから『舞い上がれ!』のさだまさしまで、朝ドラのナレーターを振り返ってみた

2023/2/10 17:00 龍女 龍女

『繭子ひとり』(1971)の石坂浩二(1941年6月20日生れ)


(石坂浩二 イラストby龍女)

このドラマは、筆者のうまれる前の朝ドラと言うだけでない。
まだマスターテープが高価で、重ね録りしたために収録した映像が残っていないので、どういう作品だったか?
再放送が観られない状態である。
内容は、八戸の高校から上京して、雑誌記者になった加野繭子(山口果林)が自分を捨てた母捜しと、恋に悩む物語だそうである。
筆者が重視しているのは、この作品のナレーターが石坂浩二であった事である。

石坂浩二の俳優の経歴の中で、ナレーターの仕事は重要な位置を占めている。
初期のナレーターの仕事で有名なのは1966年に放送された
『ウルトラQ』である。
このSFドラマシリーズは、ほぼ映像が残っている。
これはヴィデオ撮影ではなくフィルム撮影されているからである。
保存を当初から考えられた撮影方法だった。
製作した円谷プロが特殊撮影に使うフィルムを妥協せずに、お金をかけたからだ。

石坂浩二はその後、NHK特集で
『シルクロード』(1980年4月~1981年3月、1983年4月~1984年9月)
の悠久の歴史を淡々と語る口調が素晴らしかった。
筆者の幼少期に親と観ていた記憶がある。

もう一つ、ナレーターとしての代表作が
『渡る世間は鬼ばかり』(1990~2011)である。
橋田壽賀子の晩年のライフワークのホームドラマシリーズであった
長年橋田壽賀子と組んでいたTVプロデューサーの石井ふく子とは、デビュー当時からお世話になっている人である。

石坂浩二は、大河ドラマを3作品(『天と地と』『元禄太平記』『草燃える』)主演しただけでなく、朝ドラでも重要な仕事をしていたのである。


『雲のじゅうたん』(1976)の田中絹代(1909~1977)


(田中絹代 イラストby龍女)

大正時代の初の女性飛行士を題材にしたドラマである。
主演は、浅茅陽子(1951年4月2日生れ)。

ナレーターを務めたのは、サイレント時代から活躍した日本を代表する映画俳優の田中絹代である。
最近では、日本における女性映画監督のパイオニアの一人として、再評価されている。
坂根田鶴子(1904~1975)に次ぐ日本で2番目の女性映画監督である。
6本の作品を遺している。
俳優として、清水宏・溝口健二・成瀬巳喜男・木下恵介・黒澤明・市川崑などの日本映画の代表する監督と仕事をした。
国際的な評価としては、イラストで描いた『サンダカン八番娼館 望郷』で第25回ベルリン国際映画祭銀熊賞 (女優賞)を受賞している。

出演したドラマで遺作になったのは
『前略おふくろ様』の第2シリーズである。
タイトルにある「おふくろ様」とは、田中絹代が演じた主人公の板前・片島三郎(萩原健一)の母・益代の事である。

『雲のじゅうたん』のナレーターは、『前略おふくろ様』とほぼ同じ時期の仕事の一つである。

田中絹代の生涯を描いたTVドラマ『花も嵐も踏み越えて 女優田中絹代の生涯』(1984年、テレビ朝日)で、晩年の田中絹代を演じた乙羽信子(1924~1994)が、朝ドラのナレーションを務めた様子を再現していた。
バスに乗ってNHKに通う様子が描かれていて、非常に印象に残っている。


『てっぱん』(2010)の中村玉緒(1939年7月12日生れ)


(中村玉緒 イラストby龍女)

広島県尾道市を舞台に、母と祖母がやっていたお好み焼き屋を再開するために奮闘するヒロインを描いたドラマである。
ヒロインの村上あかりは、瀧本美織(1991年10月16日生れ)が演じた。

中村玉緒は日本映画黄金時代には、大映所属の俳優として数々の時代劇で脇を固めていた。
『座頭市』シリーズで大スターになった勝新太郎(1931~1997)と結婚して、一男一女をもうけるが長男の雁龍を2019年に亡くしている。
1994年以降は、明石家さんまの番組で強烈な天然ボケのキャラクターがあらわになり、バラエティ番組にも出演するようになった。

『てっぱん』でのナレーターも、ドラマの世界を覗いている大阪のおばちゃんのようなノリでやっていた。


『花子とアン』(2014)の美輪明宏(1935年5月15日生れ)


(美輪明宏 イラストby龍女)

『赤毛のアン』の日本語翻訳者である村岡花子(1893~1968)の半生を原案としたフィクションである。
村岡花子は吉高由里子(1988年7月22日生れ)が演じた。

美輪明宏のナレーションは、「ごきげんよう」と言う上流階級の女性が使う言葉で締めくくられる。
これは、主人公がミッション系の女学校へ進学したときに出逢うお嬢様達が使う言葉である。
こうした言葉を自然に使える人物、または大正から昭和のモダンな時代の空気を知っていると言うことで、美輪明宏が選ばれたそうだ。


次の頁では、コメディアンが朝ドラのナレーションを務めた作品を紹介する。

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