映画『レジェンド&バタフライ』のレジェンドは木村拓哉の織田信長。TVドラマ、トヨタのCM、そして映画。3度目の織田信長役でどんな伝説を作るのか?

2023/1/27 09:00 龍女 龍女

古沢良太(1973年8月6日生れ)は木村拓哉の一つ下である。
団塊ジュニア世代(1971~1974)に当たる。
ピークは木村拓哉が産まれた1972年だ。


(古沢良太 イラストby龍女)

『THE LEGEND & BUTTERFLY』は濃姫から観た信長が描かれるはずだ。


今回秀吉を音尾琢真(1976年3月21日生れ)が演じる点に注目してみた。

木村拓哉の演技方法を一言で言い表すならば等身大である。

木村拓哉に合わせて、家康も信長との年齢差と同じ9歳年下の
斎藤工(1981年8月22日生れ)が演じている。
音尾琢真は、1976年生れで筆者と同い年だが、早生まれで学年は1975年生れと同じなので、中谷美紀と同学年でもある。
信長と秀吉と同じ3歳の年齢差があるのと等しい。

1976年生れは、厳密には団塊ジュニアではない。
次の就職氷河期世代、もしくはロストジェネレーションの始めの年である。

音尾琢真は、ご存じ演劇ユニットTEAM NACSのメンバーである。
TEAM NACSは北海学園大学演劇部の先輩後輩の仲良しグループから結成されて、SMAPと全く同じ団塊ジュニア世代を中心に構成されている。
SMAPはメンバー全員10代の内に結成されたので、後発のTEAM NACSは「北のSMAP」と言われることがあるが、「北のドリフ」と例えた方が的確である。

何故なら、SMAPは解散するまでずっと続けたバラエティ番組『SMAP×SMAP』を観れば分かる。
ジャニーズ事務所はSMAPがバラエティに進出し始めた頃から
ザ・ドリフターズを意識して、グループを育てていった。
具体例として分かり易いのは
『夢がMORI MORI』のドリフ・エクササイズ
『SMAP×SMAP』で稲垣吾郎がバカ殿の化粧をした殿リーマン
数々のコントへの引用であろう。

音尾琢真は高校時代に新体操部の部長を務めるなど、運動能力は高い。
メンバー中、一番年下な所は志村けんと同じだが、体操経験者として仲本工事を意識しているところもある。

団塊ジュニア世代は物心ついたときにはドリフのコントを見て育った。
志村けんが加入して1976年にブレイクした東村山音頭以降である。

筆者が先週取り上げた『志村けんとドリフ大爆笑物語』(2021年12月27日、フジテレビ)で、志村けんの笑いの本質が真面目に描かれていた。
監督・脚本の福田雄一は、日常生活から面白い行動をする人
つまりあるあるネタの元祖が、志村けんであると指摘している。

SMAPに代表される団塊ジュニア世代は、親世代の志村けんを観ていた。
もっと等身大の笑いに進化した。

木村拓哉は、団塊ジュニア世代のスーパーエースである。
その演技がスーパーナチュラル(等身大)なのは当然の帰結である。

木村拓哉は大河ドラマの経験は一度も無いが、そもそもNHKのドラマに出演したことが一度も無い。
SMAPのメンバーでNHKのドラマに出ていないのは木村拓哉だけである。
ちなみに濃姫の父親・斎藤道三役は、『織田信長 天下を取ったバカ』では西田敏行、『THE LEGEND &BUTTERFLY』では北大路欣也と大河ドラマの常連である。

推測の域を出ないが、可能性として考えられるのは二つ。
SMAPの活動初期にドラマのオーディションに落ちた。
民放のドラマでブレイク後(『あすなろ白書』以降)はギャラが急激に上がった。
オファーが殺到して、NHKの予算では候補に挙げづらくなった。

『THE LEGEND & BUTTERFLY』で、再び共演した中谷美紀は『信長 天下を取ったバカ』の濃姫の頃は、初めての時代劇だったので着物がまだ馴染んでいなかった。
大河ドラマでは『軍師官兵衛』(2014)で、主人公の黒田官兵衛(岡田准一。『どうする家康』の織田信長)の妻、光(てる)を演じた。
この頃にはすっかり着物を馴染むまで着こなしていた。

『軍師官兵衛』には、秀吉役として竹中直人が『秀吉』(1996)以来、再び演じた。
『秀吉』では朝鮮出兵以降が省略されたので、『軍師官兵衛』では晩年の秀吉が独裁者に変貌してしまい、闇落ちした時代をしっかり演じている。

『THE LEGEND & BUTTERFLY』の監督の大友啓史(1966年5月6日生れ)は、大河ドラマ『秀吉』の監督の一人だった。

大友啓史は後に大河ドラマ『龍馬伝』(2010)のメイン監督になる。
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』のイメージで作り上げられた坂本龍馬のイメージを一新した。
龍馬の闇の部分も描いて、ただの快男児にはしなかった。
龍馬は信長同様、若くして死んだために生きていたら何をしたか想像させる。
しかし、暗殺した側の理屈もちゃんと描いた。
時の政府である江戸幕府から観れば、龍馬はテロリストに他ならなかった。
龍馬に抗った側を否定せず描いたところが画期的だった。
信長もその方向で描いてくれるだろうか?

木村拓哉は、信長の闇の部分を今回存分に演じるはずである。
それは木村拓哉本人がSMAPの解散以降、裏切り者扱いされた。
ジャニーズ事務所に現在でも残っている唯一の元メンバーとしての孤独とも相通じるはずだ。

ジャニーズのアイドルの最前線は幼少期に既にトップアイドルだった木村拓哉を観て神の如くあがめている世代である。
映画の番宣の為に出演した『林修の初耳学』での出来事である。
『インタビュアー林修』と言うコーナーがある。

いつもは、林修が単独で聴き手になるのだが、異例のケースで
Sexy Zoneの中島健人(1994年3月13日生れ)
が途中から参加している。
また、スタジオではKing&Princeの永瀬廉(1999年1月23日生れ)が収録したインタビュー映像を観ていた。
ジャニーズジュニア時代の木村拓哉がダンスの稽古を途中で帰ったことがある。
永瀬廉は、同じ行動をしたことを喜んでいた。
しかし、木村拓哉の場合は稽古が嫌で帰った。
永瀬廉は塾の時間が来たので帰った。
永瀬廉の方は学業を優先しただけなので、理にかなった行動である。
こうした木村拓哉の仕事をなめた態度は、蜷川幸雄の舞台『盲導犬』の経験で変わったそうだ。

筆者はSMAPの中で誰が好きかと問われれば
草彅剛と答える。
木村拓哉は好きか嫌いかという質問には
ハッキリと答えられない。
好き嫌いを越えた別格として、
団塊ジュニア世代を代表するスーパースターだからである。
しかし、後輩世代として、俳優として覚醒する前の何者でもない時を知っている。
憧れと言うより、怖い先輩のイメージも残っている。

木村拓哉個人としてみるより、木村拓哉が出ている作品なら「大好き!」と答えられるくらい、木村拓哉のドラマは脇役が輝く

木村拓哉がパーソナリティーを務めるラジオ番組、日曜の11時30分のTOKYO FMの「Flow」では、
リスナーから「キャプテン」と呼ばれている。

サーファーとしても有名で、海賊漫画の『ONE PIECE』も好きだ。
『SMAP×SMAP』でクイズ大会として『芸能界ONE PIECE王決定戦』が開催されていた。
司会ではなく、出場者の一人として参加していた。
7回開催されて、うち5回は木村拓哉が優勝している。

海の男で船乗りへの憧れはやがて船長になる夢に向かう。
木村拓哉は映像作品の中で、主役として数ヶ月の撮影期間で座長を務める様は、さながら航海中の船長と同じである。

『THE LEGEND & BUTTERFLY』の予告編の最後には、船が出てくる。
晩年の海の向こうへ憧れる男としての信長が描かれるのか?


筆者の疑問は深まるばかりである。
早く観たい。
木村拓哉の織田信長は、どんな伝説を作るのか?


※最新記事の公開は筆者のFacebookTwitterにてお知らせします。
(「いいね!」か「フォロー」いただくと通知が届きます)
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4