映画『嘘八百 なにわ夢の陣』中井貴一とW主演、佐々木蔵之介が酒を飲む仕草が実に旨そうにみえる理由とは?

2023/1/13 18:40 龍女 龍女

『嘘八百』には、主な脚本家は二人いる。

一人は足立紳(1972年6月10日生れ)。
日本映画学校(現・日本映画大学)卒業で、映画監督相米慎二(1948~2001)に師事した。
中井貴一は『東京上空いらっしゃいませ』(1990)『お引っ越し』(1993)で相米慎二と一緒に仕事をした。
相米慎二は、2002年に初の時代劇、浅田次郎原作の『壬生義士伝』を監督する予定だった。
しかし、2001年の9月9日に肺がんで亡くなった。

『壬生義士伝』で、中井貴一は主人公で新選組隊員の吉村貫一郎(1839?~1868?)を演じた。
壬生(みぶ)とは、新選組の駐屯地があった京都市内の地名である。

足立紳は相米慎二の元で映画が実現する難しさを知り演劇に行ったりした。
37歳の頃に生活に困って100円ショップにアルバイトを始めた。
その頃は既に結婚して妻子がいた。
妻はプロレス団体に働いており、この経験も後に生かされる。

山口県周南市の町おこしの映画祭『周南「絆」映画祭』のシナリオコンクール
第1回松田優作賞に応募したところ、グランプリを獲得した。
それが100円ショップとボクシングを組み合わせたアイデアが光る
百円の恋(2014)である。
足立紳は日本アカデミー賞最優秀脚本賞を獲得した。

『嘘八百』が実現したのは、この日本アカデミー賞受賞が鍵になっている。


その前年日本アカデミー賞最優秀脚本賞を獲得したのは、
『超高速!参勤交代』である。

この『超高速!参勤交代』の主演俳優こそが、佐々木蔵之介である。


もう一人の脚本家、堺市生れ今井雅子(1970年2月9日生れ)は2012年に堺親善大使になった。


(今井雅子 イラストby龍女)

地元の偉人・千利休が映画の題材になったことはあるが、現在の堺市が舞台になっていないことに不満があった。
しかし、千利休の堺市という全国的なネームバリューは絶大なので、現代の堺市と結ぶアイデアを千利休に詳しい堺市博物館の学芸員・矢内一磨に相談したようである。

今井雅子は、函館港イルミナシオン映画祭の1999年第4回の準グランプリを獲得した。
そのシナリオ『ぱこだての人』を元にした映画化作品
『パコダテ人』で脚本家デビューした。
2009年の朝ドラ『つばさ』では脚本協力。
これは、俳優は直接読むことは無いが、ドラマの流れを決めるプロットを書く仕事で、メインの脚本家を目指す人はまずこのプロットを書く事から始まる。
2010年の朝ドラ『てっぱん』では、寺田敏雄と関えり香と3人で共同脚本の名前に入っている。

2018年、第1作目の『嘘八百』が成功し、シリーズ化した。
特に、第2弾の直後、コロナ禍もあってすぐに製作できない期間が出来てしまった。
その間の2021年、脚本今井雅子、主演・佐々木蔵之介のドラマが、朝日放送で製作された。
『ミヤコが京都にやってきた!』(1月~2月)6回のミニシリーズと呼ばれる長さの連続モノである。

ドラマはバツイチの往診専門の開業医・柿木空吉(佐々木蔵之介)が、離婚して元妻が再婚以来久しぶりにあった娘・宮野京(ミヤコと読む。藤野涼子)と同居するホームコメディである。
京都の名所が数々出てくる。
出番は少ないが重要な脇役が、同級生の酒蔵の当主で登場する淳平を演じる
四代目市川猿之助( 1975年11月26日生れ)である。
猿之助は、前の名跡、亀治郎時代に初めてTVドラマに出演した大河ドラマ『風林火山』(2007年)で武田信玄を演じている。
佐々木蔵之介は、家臣の一人、真田幸隆を演じた。
幸隆の孫の真田信繁が、「なにわ夢の陣」の元ネタである大坂の陣に参戦している。
佐々木蔵之介と市川猿之助はこれがきっかけで親友になった。
猿之助のホームである歌舞伎に出演(スーパー歌舞伎Ⅱ 『空ヲ刻ム者』2014年)するまでになった。

酒屋の若旦那、淳平は
「うちの店は100年しか経っていないから京都では老舗に入らない」
という台詞がある。
これは佐々木蔵之介にちなんだものである。
「創業100年は老舗に入らない」は京都あるあるである。
京都ならではのジョークで、戦後と言えば応仁の乱(1467~1477)をさすとかもある。
ドラマの中でも、20になった娘と酒を飲むシーンがあるが、実に旨そうにお猪口で一杯やるのである。


ではご存じの方もいるだろうが、佐々木蔵之介がお猪口を飲む仕草が様になっている理由がある…。

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