最新主演作『峠』で役所広司が名付け親で師匠の仲代達矢と23年ぶりに共演。役所広司が師匠となるべく後継者はあの俳優か?
役所広司は、長崎県諫早市の出身である。
1978年に無名塾の二期生として数百倍の倍率を超えて合格した。
始めは無名塾の舞台を中心に出演し、映画も1979年から出ている。
大きな役を演じる様になったのはTVドラマである。
1983年の大河ドラマ『徳川家康』の織田信長役である。
(『徳川家康』の織田信長を演じる役所広司 イラストby龍女)
翌年の1984年にはNHKの新大型時代劇『宮本武蔵』が初主演である。
筆者はその頃に時代劇にハマり歴史好きとなった。
織田信長と宮本武蔵のイメージは役所広司で出来ている。
90年代に入ると、映画での名演が続く。
原田眞人監督『KAMIKAZE TAXI』(1995年)で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞。
1996年の周防正行監督の『Shall we ダンス?』が大ヒットする。
同年の細野辰興監督『シャブ極道』、小栗康平監督『眠る男』と会わせて、その年度の主演男優賞を独占する。
(『Shall we ダンス?』の役所広司 イラストby龍女)
7年連続日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、一時期日本映画は役所広司の時代であった。
今村昌平監督『うなぎ』(1997年)はカンヌ映画のパルムドールを受賞し、国際的に名前を知られるようになる。
2005年は『SAYURI』でチャン・ツィイーやコン・リー等の中華圏の俳優や、渡辺謙・桃井かおり・工藤夕貴と共演した。
菊地凛子が第79回アカデミー賞で助演女優賞候補になったことで話題になった『バベル』(2006)では菊地凛子の父親役で出演した。
2011年の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』ではタイトルロール(山本五十六)を演じた。
真珠湾攻撃の発案者としても知られる海軍元帥山本五十六(1884~1943)は、元長岡藩士高野貞吉の息子である。
大正4年に旧長岡藩主の後嗣・牧野忠篤の口添えで家老筋の山本家を相続する。
牧野忠篤とは『峠』で仲代達矢が演じた牧野忠恭の五男である。
原田眞人監督『わが母の記』(2012年)は映画や大河ドラマになった『風林火山』の原作者でもある井上靖(1907~1991)の自伝的小説である。
ちなみに井上靖は、毎日新聞記者時代、山崎豊子(1924~2013)の上司で、彼女の文章力は井上靖に鍛えられたという。
役所広司は井上靖の分身、伊上洪作を演じて、母親役は樹木希林(1943~2018)である。
この作品で、役所広司は久々に日本アカデミー賞優秀主演男優賞、樹木希林が最優秀主演女優賞を受賞した。
樹木希林は1961年の文学座付属演劇研究所の1期生である。
1964年の文学座分裂騒動で、付き人をしていた杉村春子(1906~1997)の説得で文学座に残ったが、1966年に退団して以来、映像の方で主に活躍する。
役所広司は、2018年の白石和彌監督『孤狼の血』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞する。
広島の呉を舞台に警察とヤクザの間に立って暗躍する清濁併せのむ刑事を演じた。
2020年の西川美和監督の『すばらしき世界』では、元ヤクザで出所してきた男を演じている。
日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。
西川美和監督は、フリーの助監督時代に是枝裕和監督の下で働いている。
役所広司主演の最新作『峠 最後のサムライ』の監督は
黒澤明(1910~1998)の晩年の3作(『夢』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』)の助監督を務めた、
(黒澤明 イラストby龍女)
小泉堯史(1944年11月6日生れ)である。
1970年から黒澤明に師事している。
(小泉堯史 イラストby龍女)
『峠』の中で、愛妻家であった河井継之助は、妻(松たか子)を芸者遊びに連れてきて、遊学先の長崎で覚えた踊りを披露するシーンがある。
役所広司は長崎出身なので、脚本の小泉堯史は彼を想定してこのシーンを足したのだろうか?
今回は仲代達矢と役所広司を軸にした師弟関係を紹介した。
最後に役所広司には後継者のような存在はいるのか?
考えてみよう。
役所広司は現役バリバリの俳優なので、多忙で後輩の俳優を教える時間的余裕はない。
仕事の中でそれらしき存在を見つけたように思われる。
役所広司は1本映画を監督している。
2009年の『がまの油』である。
役所広司は主演も兼ねている。
息子役に起用したのが瑛太(現・永山瑛太)(1982年12月13日生れ)である。
ちなみに無名塾の後輩の益岡徹も出演している。
一方、永山瑛太が初監督した短編『ありがとう』(WOWOWアクターズ・ショート・フィルムの第2弾の内の1本)の主役が役所広司である。
役所広司の最新作『峠』では、弟の永山絢斗(1989年3月7日生れ)が従者の役で共演している。
永山兄弟とは非常に縁が深いようだ。
ちなみに永山瑛太は原田芳雄の遺作『大鹿村騒動記』(2011年)にも出演していた。
(永山瑛太 イラストby龍女)
仲代達矢の主宰する無名塾は俳優養成の場所としては難関校でもあるので、少数精鋭ではある。
今後も無名塾からどんな優秀な俳優が出てくるか楽しみである。
無名塾で学ばなかった俳優にも、大きな影響を与えている。
そういう意味でも日本の最高峰の俳優養成所の一つなのである。
参考文献:春日太一『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』PHP文庫
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1978年に無名塾の二期生として数百倍の倍率を超えて合格した。
始めは無名塾の舞台を中心に出演し、映画も1979年から出ている。
大きな役を演じる様になったのはTVドラマである。
1983年の大河ドラマ『徳川家康』の織田信長役である。
(『徳川家康』の織田信長を演じる役所広司 イラストby龍女)
翌年の1984年にはNHKの新大型時代劇『宮本武蔵』が初主演である。
筆者はその頃に時代劇にハマり歴史好きとなった。
織田信長と宮本武蔵のイメージは役所広司で出来ている。
90年代に入ると、映画での名演が続く。
原田眞人監督『KAMIKAZE TAXI』(1995年)で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞。
1996年の周防正行監督の『Shall we ダンス?』が大ヒットする。
同年の細野辰興監督『シャブ極道』、小栗康平監督『眠る男』と会わせて、その年度の主演男優賞を独占する。
(『Shall we ダンス?』の役所広司 イラストby龍女)
7年連続日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、一時期日本映画は役所広司の時代であった。
今村昌平監督『うなぎ』(1997年)はカンヌ映画のパルムドールを受賞し、国際的に名前を知られるようになる。
2005年は『SAYURI』でチャン・ツィイーやコン・リー等の中華圏の俳優や、渡辺謙・桃井かおり・工藤夕貴と共演した。
菊地凛子が第79回アカデミー賞で助演女優賞候補になったことで話題になった『バベル』(2006)では菊地凛子の父親役で出演した。
2011年の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』ではタイトルロール(山本五十六)を演じた。
真珠湾攻撃の発案者としても知られる海軍元帥山本五十六(1884~1943)は、元長岡藩士高野貞吉の息子である。
大正4年に旧長岡藩主の後嗣・牧野忠篤の口添えで家老筋の山本家を相続する。
牧野忠篤とは『峠』で仲代達矢が演じた牧野忠恭の五男である。
原田眞人監督『わが母の記』(2012年)は映画や大河ドラマになった『風林火山』の原作者でもある井上靖(1907~1991)の自伝的小説である。
ちなみに井上靖は、毎日新聞記者時代、山崎豊子(1924~2013)の上司で、彼女の文章力は井上靖に鍛えられたという。
役所広司は井上靖の分身、伊上洪作を演じて、母親役は樹木希林(1943~2018)である。
この作品で、役所広司は久々に日本アカデミー賞優秀主演男優賞、樹木希林が最優秀主演女優賞を受賞した。
樹木希林は1961年の文学座付属演劇研究所の1期生である。
1964年の文学座分裂騒動で、付き人をしていた杉村春子(1906~1997)の説得で文学座に残ったが、1966年に退団して以来、映像の方で主に活躍する。
役所広司は、2018年の白石和彌監督『孤狼の血』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞する。
広島の呉を舞台に警察とヤクザの間に立って暗躍する清濁併せのむ刑事を演じた。
2020年の西川美和監督の『すばらしき世界』では、元ヤクザで出所してきた男を演じている。
日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。
西川美和監督は、フリーの助監督時代に是枝裕和監督の下で働いている。
役所広司主演の最新作『峠 最後のサムライ』の監督は
黒澤明(1910~1998)の晩年の3作(『夢』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』)の助監督を務めた、
(黒澤明 イラストby龍女)
小泉堯史(1944年11月6日生れ)である。
1970年から黒澤明に師事している。
(小泉堯史 イラストby龍女)
『峠』の中で、愛妻家であった河井継之助は、妻(松たか子)を芸者遊びに連れてきて、遊学先の長崎で覚えた踊りを披露するシーンがある。
役所広司は長崎出身なので、脚本の小泉堯史は彼を想定してこのシーンを足したのだろうか?
今回は仲代達矢と役所広司を軸にした師弟関係を紹介した。
最後に役所広司には後継者のような存在はいるのか?
考えてみよう。
役所広司は現役バリバリの俳優なので、多忙で後輩の俳優を教える時間的余裕はない。
仕事の中でそれらしき存在を見つけたように思われる。
役所広司は1本映画を監督している。
2009年の『がまの油』である。
役所広司は主演も兼ねている。
息子役に起用したのが瑛太(現・永山瑛太)(1982年12月13日生れ)である。
ちなみに無名塾の後輩の益岡徹も出演している。
一方、永山瑛太が初監督した短編『ありがとう』(WOWOWアクターズ・ショート・フィルムの第2弾の内の1本)の主役が役所広司である。
役所広司の最新作『峠』では、弟の永山絢斗(1989年3月7日生れ)が従者の役で共演している。
永山兄弟とは非常に縁が深いようだ。
ちなみに永山瑛太は原田芳雄の遺作『大鹿村騒動記』(2011年)にも出演していた。
(永山瑛太 イラストby龍女)
仲代達矢の主宰する無名塾は俳優養成の場所としては難関校でもあるので、少数精鋭ではある。
今後も無名塾からどんな優秀な俳優が出てくるか楽しみである。
無名塾で学ばなかった俳優にも、大きな影響を与えている。
そういう意味でも日本の最高峰の俳優養成所の一つなのである。
参考文献:春日太一『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』PHP文庫
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