最もハリウッドで成功した日本人俳優?『MINAMATA』出演の真田広之が師匠・千葉真一を超えたモノとは?

2021/9/29 22:00 龍女 龍女

⑥MINAMATA、公害病を取り扱った難しい題材に参加したのは?


(MINAMATAの1シーンから引用 イラストby龍女)

真田広之の最新作は実名ではないが複数モデルがいる役である。
水俣病の抗議活動のリーダーだ。

MINAMATAは、製作で主演のジョニー・デップを始め、名を連ねた制作陣が自費を捻出して作られた独立系の作品である。
題材は大企業がもたらした公害病とそれに取り組んだ写真家(ジョニー・デップは実在の人物ユージン・スミスを演じた)の晩年の人生が描かれる。
低予算作品であるために、真田広之は俳優として出演する以外に、日本に関する美術監修や考証に近い仕事をボランティアに近い形で引き受けた。

この映画のスタッフには、『ラストサムライ』にキャスティングディレクターとして関わった奈良橋陽子がいる。
ラストサムライが日本国内で興行成績がよかった理由に、日本人の誇りに自信を与えた点があろう。
しかし、この作品は対極にある近代日本の工業化が招いた闇が描かれている。
どういう反応が待っているのか?
興行成績や、それとは別の賞レースに関わることがあるのか?
興味をそそられる。


晩年の千葉真一はハリウッドで様々な企画を持ち込んでいたという。
映画評論家の町山智浩はツイッター(8月19日付)にて、
「シカゴでギャングスターになった最初の日本人、トーキョー・ジョーこと衛藤健の実話の映画化をハリウッドに売り込んでいましたが、残念ながら実現しませんでした。観たかった……。」
と記述している。


一方の真田広之が、千葉真一の訃報を受けての正式コメントはこうである。

子役の頃から、様々な事を学ばせて頂きました。
何よりも、夢を抱くことの大切さを。
志を受け継ぎ、走り続ける事が恩返しと心得ております。
本当にお世話になりました。
安らかにおやすみ下さい。
合掌。

であった。


実は、千葉真一と真田広之には大きな違いがある。
千葉真一は多才な才能を持っていたが、多才すぎて仕事を広げすぎて借金を抱え、1991年にJACを売却する。
俳優だけに限ると実はやり残した仕事があったのは前出の通りである。
実質一番弟子であった真田広之は子役から大人の俳優として大成したいという方向性が明確だった。
狭義における格闘技や殺陣をさすアクションの技能は、俳優としての売りとして更に高めたので、ハリウッドへ進出してもその点ではブレが無い。
60歳を過ぎて、年少の俳優を指導する立場に入っている。
千葉真一のように大風呂敷を広げすぎることはなく、製作スタッフとしての俳優のスタンスを崩していない。
しかし、これまで娯楽作が多かった真田広之がアジア系のスター、特に日本人の責任として、社会問題に食い込む作品に出たことは、また新たなステージにたったことも示している。
真田広之らしい「走り」とは何か?
その先にも道は続いている。


参考記事と引用
真田広之:“俳優の完成形”とJACの歴史を、ビデオ考古学者・コンバットRECが振り返る
映画ナタリー:2021年7月27日付



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