最もハリウッドで成功した日本人俳優?『MINAMATA』出演の真田広之が師匠・千葉真一を超えたモノとは?

2021/9/29 22:00 龍女 龍女

③ラストサムライ、ハリウッドへ渡る前の置き土産。


(『たそがれ清兵衛』より イラストby龍女)

たそがれ清兵衛(2002年)は、山田洋次(1931年9月13日生れ)監督が手がけた。
作品のジャンルとしては、1966年の『運が良けりゃ』以来の時代劇でその時は落語をベースにした人情喜劇であった。

一方、本作品は藤沢周平原作の『たそがれ清兵衛』をベースに他に『祝い人助八』『竹光始末』の2篇を加えた脚色である。
山田洋次と弟子の脚本家で映画監督の朝間義隆が、共同脚本で手がけている。
殺陣をクライマックスとする本格的時代劇としては初めて手がけた作品だ。
藤沢周平の時代小説に頻繁に登場する海坂藩は架空の名称である。
しかし、山形出身の藤沢周平は実在の庄内藩を参考にしたであろうとは容易に推測できるし、時代背景も幕末の1860年代半ばと明示されている。
演出プランはこれまで注目が集まらなかった庶民に近い下級武士に焦点を当て、リアリズムを追求する。
藤沢周平の作品を選んだ理由も、それまで現代劇で庶民を主人公にしてきた山田洋次監督の路線に親和性が高かった。

更に俳優の起用としては、殺陣のプロでもある主役の真田広之と、映画俳優としてはデビュー作だが前衛的な踊りのプロの田中ミン(氵に民)を組み合わせは新鮮な驚きであった。

この作品は日本アカデミー賞の最優秀賞を助演女優賞(『阿弥陀堂だより』の北林谷榮)を除き独占した。
更にアカデミー賞の外国語映画賞の候補にもなった。
公式に山田洋次作品が世界的に認められた初めての作品になった。


その直後に真田広之は『ラストサムライ』で日本側の俳優としては、渡辺謙に続く2番目の役で出演する。
撮影時は、渡辺謙よりも英語が出来たお陰もあって、俳優としても出演した映画監督の原田眞人(6年間ロサンゼルスで映画監督の修行をしたため英語が出来る)と共に、演出面で日本人から観ておかしな描写はないかスーパ-バイザーの役割を兼ねた仕事をした。
この経験は、最新作『MINAMATA』にも通じている。

その前にもう少し演出に則った俳優と製作者の関係について、ある作品を例に取り上げてみよう。

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