【鉛筆で描いてみた】あなたが見ている世界
こんにちは。shirokumaと申します。
このたび「被写体を通して自分の内面と向き合う」ことをテーマに、鉛筆でモノクロイラストを描く連載を始めさせていただくことになりました。
普段は色鉛筆で子どもたちの様子を描いていますが、こちらの連載では、鉛筆の黒と紙の白という限られた要素で写実的な描写をすることで、その描く対象や自分自身の心情や背景など、目には見えない内側の世界を描きたいと思っています。今回のイラストタイトルは「あなたが見ている世界」。
4月の早朝、まだ誰もいない幼稚園を門の外から見上げる娘。少しひんやりとした空気に、太陽が昇りきらずにやや薄暗い空と、人が外で活動を始める前の独特な静けさ。そんな中で、目の前に立つ娘の横顔を眺めながら、娘はその目でこれから何を見て何を感じるのだろう、と思いました。
本連載では、今まで公開していなかった私のイラストの制作過程を簡単にご紹介できればと思います。
「一番暗いところと一番明るいところがどこかを見る」、「暗いところと接しているところは明るい」、「ふくらみだけでなく、えぐれている部分も見る」などという、高校時代の美術の先生が言っていたことを思い出しながら、全体の陰影やバランスを確認しつつ、大まかに形をかためていきます。
一番白いと思ったところには鉛筆の粉を乗せず、紙の白さを残しておきます。今回は瞳の中の光、髪の毛の束の光、服の襟の光が当たっている部分を白く残しました。
ある程度、鉛筆で全体の濃淡をつけたところで、ガーゼで紙をなでて鉛筆の粉をなじませます。
全体のバランスをとった後は、個別に各パーツの細部を描き込んでいきます。毛穴や産毛、皮膚を少しずつ加えて人間を作っていくようなつもりでじっくり見つめます。
この時が、対象や自分とゆっくり対話できるような気がして、一番楽しいです。特に理由はありませんが、細部を描き込むとき、一番自分が「描きたい」と心が動いた部分から始めることが多いです。
今回は、何かを言いたそうに突き出した唇から始めました。唇や鼻と、背景の境目のようなところを、練り消しを使って鉛筆の粉を取ったり、鉛筆を走らせて粉を乗せたりしながら、横顔を浮かび上がらせます。
制作過程の拡大写真を撮り忘れてしまいましたが、練り消し効果で、唇の上の産毛のほわほわとした感じを出せたのが、今回の絵の仕上がりで唯一満足できたところです。
顎や耳の下、頬など、その下の骨などを意識しながら、鉛筆の粉を取ったり乗せたりしながら、お肉の付き加減などを調節します。
顎の下なども光と影の部分を意識しながら浮かび上がらせ、横顔がある程度かたまってきたら、髪の毛を描き進めます。髪の毛の光っている部分は紙の白さを残し、暗くなっている部分を意識しながら描いていきます。
肩に掛かっている髪の毛を浮かび上がらせるために、髪の毛の下の服の陰影を描き進めます。
再度、全体を見ながら鉛筆の粉を取ったり乗せたりしながら、黒と白のバランスを調整します。
細部の描き込み→全体のバランスを調整するという工程を繰り返しながら、服や髪の毛の陰影を描き込みます。
肩に掛かって毛先がカーブした髪の毛を描き足しました。
細い髪の毛を一本一本描くようなつもりで、光っている部分と影になっている部分を意識しながら描いていきます。
ガーゼで粉をなじませたり、細く尖らせた硬い鉛筆で引っ掻くように描いて、その上に軟らかめの鉛筆を重ねて細い線を浮かび上がらせたりと、試行錯誤しながら髪の毛の質感を表現しようとしています。
髪の毛が光って一本一本白く輝いているようになっているところは、鉛筆形の細い消しゴムの角を使って、力を抜いて素早く線を引くようにして、細く白い線を浮かび上がらせます。その白く抜いた部分は、鉛筆で一本一本髪の毛を描くようなつもりで、他の髪の毛と馴染ませます。
髪の毛を描き入れつつ、背景にも濃淡を付けていきます。
服の光が当たっている部分も調整します。
こちらでほぼ完成です!
最後に、魂を吹き込むようなつもりで、瞳の光や睫毛をもう一度描き入れます。背景の濃淡や、風になびく髪の毛、眼差しなどで、娘の不安や期待など(私の想像にすぎませんが)を表現しました。
今回は鉛筆のみで描きました。小学生が学校で使う一般的なノートと同じB5という小さめサイズです。夜中に中断しながら少しずつ描き進めたので正確にはわかりませんが、制作時間は20時間以上だと思います。