俳優・田村正和が『古畑任三郎』等でコメディを演じることに抱いていた本音とは?

2021/5/21 22:00 龍女 龍女




(『ニューヨーク恋物語』の田島雅之役 イラストby龍女)

バブル期のこの時代は、海外ロケで制作できるほど、予算が潤沢だった。
30代以上の大人向けドラマ枠『木曜劇場』で放送されたのが『ニューヨーク恋物語』(1988年10月~12月)である。
しかし、筆者は時間帯の21時に丁度同じ頃の放映が始まった『とんねるずのみなさんのおかげです』で石橋貴明が『それいけマサカズ!』でパロディーコントを演じていた方の印象の方が強い。


(古畑任三郎の得意のポーズ。 イラストby龍女)

90年代以降、筆者の同世代にとって、田村正和と言えばやはり『古畑任三郎』(1994~2006)である。
刑事コロンボと同じく倒叙ミステリである。
犯人は最初からわかっているので、主人公の謎解きに主眼が集まる形式である。
しかし、脚本家の三谷幸喜がイタリア系アメリカ人のコロンボの貧乏臭さと被らないように考えた。
裕福な育ちの刑事像という独自のキャラを田村正和に託したのが成功した。
三谷幸喜も世田谷出身で元々裕福なので、当て書きしやすかっただろう。
ちなみに筆者が大好きなエピソードは2006年のFinalの3部作の1作目の『今、蘇る死』だ。
石坂浩二が出演していて、彼が演じた金田一耕助のオマージュがある。
再映画化された『犬神家の一族』(2006年12月公開)では、1976年版では存命中だった原作者・ 横溝正史が演じた那須ホテルの主人役を三谷幸喜が演じた。

三谷幸喜は
「古畑を僕に書かせてくれたのは、紛れもなく田村さんです。
田村さんがいなくなってしまった今、古畑任三郎が事件現場に戻ってくることはもうありません」
とコメントした。

数年前に別の俳優で『古畑任三郎』を復活させるというニュースがあった。
元ネタの刑事コロンボもピーター・フォークあってのコロンボであった。
もし同じようなドラマを作りたければ、主人公のキャラクターを主役の俳優に合わせて新たに作り直した方がマシであろう。

三谷作品以外で特記しておきたいのは『さよなら小津先生』(2001)である。
田村正和がバスケ経験を生かして高校のバスケ部の顧問になる設定の学園ドラマである。
80年代生まれの若手俳優が数多く出演したことでも注目のドラマだ。
その中の出演者、永山瑛太がコメントした。
「私はドラマ初めてで、打ち上げの時に、私に沢山の事をお話しして下さいました。
『君は、とにかく俳優を続けなさい』
正和さんの御言葉、胸に刻み、俳優人生、続けていきます」

最後に一番知りたかった弟の田村亮のコメントを引用しながら、筆者の感想を交えよう。

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