NHK朝ドラ『おちょやん』で杉咲花の相手役を演じた成田凌が似た題材の作品に採用され続けている理由とは?

2021/5/19 22:00 龍女 龍女

①『わろてんか』の北村隼也
『わろてんか』(2017年10月~2018年3月)は吉本興業の創業者、吉本せい(1889~1950)をモデルにした北村てん(葵わかな)が主人公のドラマである。

吉本せいをモチーフにした登場人物が朝ドラに現れるのはこれが初めてではない。
1984年の『心はいつもラムネ色』が漫才作家秋田實をモデルにした赤津文平(新藤栄作)が主人公。
そこでは、福本桁乃(眞野あずさ)として登場している。

吉本せいの一代記は有名で、山崎豊子(1924~2013)が『花のれん』(1958)と言う小説にする位、死後まもなく取り上げられた。
第39回直木三十五賞を獲得している。
すぐに舞台化され、脚色・演出したのは、東宝の取締役でもあった菊田一夫(1908~1973)である。
菊田一夫は同じく朝ドラの『エール』(2020年)で『長崎の鐘』を作詞した池田二郎(北村有起哉)として登場する。

『わろてんか』には東宝の創業者小林一三の一部をモデルにした伊能栞(高橋一生)が登場するが、吉本興業と東宝はかなり昔から提携関係にあった反映であろう。



さて、成田凌が演じたのは、てんの一人息子、隼也である。
モデルとなったのは、吉本せいの一人息子・吉本頴右(えいすけ。1923~1947)である。
本編でも、親の希望と沿わない女性と駆け落ちして勘当されてしまう。
しかし、実際はもっとドラマチックな人生をたどった。
早稲田の学生時代から八歳年上の笠置シズ子(1914~1985)と交際した。
母親の吉本せいの反対に遭い結婚できないまま結核で亡くなった。
二人の間には一人娘が出来て、笠置シズ子は女手一人で育て、やがて『ブギの女王』と呼ばれて一世を風靡する。

筆者は、このエピソードを以前から知っていたから、『わろてんか』ではどういう風に描かれるか期待していた。
どうも吉本興業の歴史の中で懸案事項のようで、真正面から描かれなかったのは残念である。

『わろてんか』では、東宝をモデルにした映画会社が登場したが、『カツベン!』で出てくる映画会社は今のメジャーな映画会社に統廃合される以前の乱立期である。

その時代に活躍した活動弁士とはどんな人たちだったのだろう?

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