あれも若冲、これも若冲、おうちで伊藤若冲を!

2021/1/11 17:00yamasanyamasan

今年も若冲が熱い!

いまトピアート部のyamasanです。今年もよろしくお願いいたします。
さて、2021年最初の話題は、今年もホットな伊藤若冲。

新年に放映されたNHK【正月時代劇】「ライジング若冲~天才かく覚醒せり~」は、若冲と若冲を生涯支えた相国寺の僧・大典がラブラブの関係だったり、生真面目なはずの円山応挙がひょうきんな役回りだったりと、大胆な設定がSNS上でも話題になりました。

一方、小説『若冲』も負けていません。
生涯独身だったはずの若冲が、実は結婚していたという設定なのです。


『若冲』(澤田瞳子 文春文庫 2017年)

京都錦小路の青物問屋「桝源」の主・源左衛門(のちの伊藤若冲)に嫁いだお三輪は、姑の嫁いびりと、絵に集中するばかりで自分に無関心な夫・源左衛門のため、結婚2年で自ら命を絶ち、その後、源左衛門は悔恨の念から、お三輪を思いながら絵を描くというところから物語は始まります。


伊藤若冲《松梅孤鶴図》(東京国立博物館)

そして物語の中で重要な役割を演じるのが、お三輪の弟・弁蔵(のちの市川君圭)。
姉を死に追いやった若冲への復讐心から、弁蔵は本物と見分けがつかないほどの若冲の贋作を作り続け、若冲は弁蔵の影におそれ、同時に強いライバル意識をもちならが絵を描くという流れでストーリーは展開していきます。

大典は、そんな若冲の心底をうかがい知る洞察力のある僧として描かれています。


伊藤若冲《松梅群鶏図屛風》(東京国立博物館)

同時代の絵師たちも多く登場します。

天真爛漫で気さくな池大雅は、人付き合いが苦手な若冲の唯一の朋友ともいえる存在でした(『若冲』P52~54)。
「ライジング若冲」で描かれていた豪放磊落な池大雅は、大雅のイメージそのものだったのかもしれません。

中国絵画の影響を受けた南画を大成した池大雅らしい大作、重要文化財《西湖春景銭塘観潮図屛風》(東京国立博物館)。

こちらは右隻で、中国浙江省杭州にある名勝・西湖を描いた「西湖春景図」。


左隻は浙江省の銭塘江で中秋の名月の日、海水が河を逆流する様を見物する「銭塘観潮図」。




一方、「ライジング若冲」では軽いノリの円山応挙は、小説『若冲』ではどのように描かれているでしょうか。

伏見の石峰寺に隠遁していた若冲のもとに、応挙一行が伏見に梅見に出かけるついでに若冲を訪ねたいとの便りが届きました。

「円山応挙はその端正な画風通り、折り目正しい人物。石峰寺への寄り道も、若冲の隠遁場を素通りしては失礼と、彼が言い出したためであろう。

さりながら七十を三つも越え、生来の人見知りがますます激しくなった若冲には、そんな律義さがかえって迷惑であった。」(『若冲』P240)
結局、若冲は居留守を使って応挙一行をやり過ごすことになります。

こちらは「端正な画風」の応挙の作品《雪中老松図》(東京国立博物館)。

松の老木にかかる雪は白く塗ったのではなく、絹の白地を生かしたもの。それでも雪が浮かび上がって見えてくるのですから不思議です。


若冲が相国寺に寄進した《釈迦三尊像》(相国寺)三幅と《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館)三十幅、鹿苑寺障壁画や《鳥獣花木図屛風》はじめ若冲渾身の絵をめぐるドラマも展開されて、読む人を決して飽きさせることはありません。

我が家の《鳥獣花木図屛風》(原本は、現在、出光美術館蔵)。2013年に開催された「東日本大震災復興支援 特別展「若冲が来てくれました」~プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」の福島会場(福島県立美術館)のミュージアムショップで購入したものです。

コロナ禍で家にいる時間が多くなる状況が続きますが、このような時期だからこそ、『若冲』はじめ「絵師もの」時代小説を読んでみてはいかがでしょうか。

今まで「いまトピ」で紹介した「絵師もの」時代小説はこちらです。


長沢芦雪と曽我蕭白の絡みが面白い『ごんたくれ』
南紀で何があったのか?【奇想の絵師・長沢芦雪の旅路をたどってみた】

海北友松の生涯を生き生きと描いた『墨龍賦』
【大迫力!】建仁寺のあの雲龍の正体は〇〇だった!

長谷川等伯と狩野永徳のライバル激突を描いた『等伯』と『花鳥の夢』
【ライバル激突】巨匠たちの対決!!


そして、伊藤若冲をもっと知りたい人のための解説書が講談社学術文庫の『若冲』。

『若冲』(辻惟雄 講談社学術文庫 2015年)

《釈迦三尊像》《動植綵絵》全三十三幅のカラー掲載はじめ図版150点以上、若冲の伝記と画歴、作品の解説や年譜もあって、若冲の予習にピッタリです。

厳しい状況はまだまだ続きそうですが、みなさまぜひご自愛のうえ、アートをお楽しみください!


伊藤若冲《玄圃瑤華》のうち「山萩」(右)、「枝垂柳」(左) (東京国立博物館)