【ドレスデン】戦災からよみがえったバロックの街

2019/8/26 09:00 yamasan yamasan

1945年2月13日、ターゲットはドレスデン

第二次世界大戦末期の1945年2月13日、ドイツの主な都市が英米連合軍の空襲で大きな被害を受ける中、ほとんど空襲の被害を受けていなかったドレスデンにも運命の日がやってきました。
2月13日から3日間にわたる英米空軍の爆撃によって、かつてのザクセン王国の首都「バロックの街」ドレスデン市街は壊滅的な被害を受けたのです。

ドレスデン空襲の悲惨さを伝える映画「ドレスデン-運命の日-」

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戦後、ドレスデンもドイツの他の都市と同じく復興を始めたのですが、ドレスデンの人たちは、がれきの山の中から再利用可能な石を積み上げて、できるだけ戦災前の建物を復元しようという途方もなく根気のいる作業を始めたのです。

エルベ川沿いの大聖堂の尖塔(左)、正面奥がゼンパーオペラ


ツヴィンガー宮殿とその前を通る路面電車


ツヴィンガー宮殿の中庭


エルベ川に架かるアウグスト橋から見たドレスデン旧市街のシルエット


再建された聖母教会(Frauenkirche)

戦後の復興が進んだドレスデンでしたが、旧市街地の中でもひときわ目立つ存在だった聖母教会は、戦争の悲惨さを伝えるため、崩れ落ちたままで残されていました。その聖母教会の再建の議論がおこったのが東西ドイツが統一された1990年以降のこと。そのまま残すべきではとの意見もありましたが、2005年に再建が完了して、かつての荘厳な姿をよみがえらせたのです。
2006年に公開された映画「ドレスデン」では、聖母教会再建のセレモニーに主人公の女性が参加するシーンが最後に出てきます。


聖母教会の前に堂々と立つマルティン・ルターの像。爆撃で吹き飛ばされましたが、戦後、元の形の復元されました。映画「ドレスデン」では、当時のドキュメンタリー映像も使われていますが、被災後の聖母教会の様子やルター像が地面にたたきつけられたことがわかります。



壁の所どころに黒ずんだ石があるのにお気づきでしょうか。これは残されていたがれきの山から再利用した石です。
そして、両側の壁は全体が黒ずんでいますが、これは爆撃後も崩れずに残っていた壁。再建前は、この残された両側の壁の間にがれきが山になっていたのです。




ドレスデンの旧市街を歩いてみませんか

英米連合軍による空襲で大きな被害を受けたドレスデンですが、奇跡的に被害を免れたのが2万4千枚以上のマイセン磁器のタイルに描かれた長さ101mに及ぶ「君主の行列」。ここにはザクセンを支配した35人の君主と、59人の芸術家たちが描かれています。



中でもひときわ威風堂々とした姿で描かれているのが「強王」と呼ばれた選帝侯アウグスト1世(在位1694-1733)。(下にAugustⅡと書かれていますが、これはポーランド王に選ばれた時の称号。)
アウグスト強王は、ツヴィンガー宮殿などドイツ・バロック様式の建築物を次々と建設して、「バロックの街」ドレスデンの基礎を作った君主です。



このように先人たちの努力によって今でも「バロックの街」の雰囲気が感じられるのがドレスデン。
ドイツに行ったらぜひ訪れてみたい街の一つです。

以前に「バイエルン美術紀行三部作」も書いています。こちらもぜひご覧ください。

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