日本茶の新スタイル!ハンドドリップ日本茶カフェ「東京茶寮」がクールでカッコいい

2017/1/25 14:30 satomin satomin


こんにちは。365日毎日お茶を飲むsatominです。



この画像、一見コーヒーを淹れているように見えますが、実は日本茶を淹れているところです!

2017年1月5日にオープンした世界初のハンドドリップで淹れる日本茶専門店「東京茶寮」の店内です。


この旧来のイメージを覆した新しいスタイルの日本茶に、いま熱い視線が注がれています。国内のシングルオリジン(単一農園・単一品種)の煎茶を揃えているのも特長。オープンしたばかりですが、すでに行列ができているとか。

ということで、注目度上昇中の「東京茶寮」に行ってきました。お店を手掛けるLUCY ALTER DESIGNの谷本幹人さんにもお話を伺い、謎の多いハンドドリップの日本茶に迫ります!



■三軒茶屋に誕生!これまでにないNew Wave日本茶カフェ



お店は東京世田谷区の三軒茶屋駅から徒歩7分の場所にあります。

白い漆喰仕上げの壁に囲まれたスペースには、コの字型になったカウンターと、木製の座面と黒い脚の椅子が配置され、無駄を削ぎ落としたミニマルな印象。言われなければ日本茶のカフェとは思えない洗練されたお店です。




カウンターの中にはお茶を淹れるスペースがあり、バリスタが丁寧に1つずつお茶を淹れていく姿が見られるようになっています。店内は「茶室を再解釈した」とのことですが、なるほどカウンターに座っているとその意味が伝わってきます。


カウンターに座ると提供される四角い枠にはめられたお絞りと、お水のグラスもなんだかお洒落です。



木製ボードのメニューに目を向けると・・・

「煎茶2種飲み比べ + お茶菓子」のみ!
ガチでお茶を楽しむためのお店なのだ。

選べるお茶はシングルオリジンを中心とした煎茶7種類。その中から2つ選ぶのですが、これが悩ましい・・・。
谷本さんにオススメを聞きながら、お店の一番人気の「はるもえぎ」と、もう1つは個人的に好きな品種「香駿」を選びました。

お茶菓子は、ほうじ茶ブラマンジェ、ドライフルーツ寄せ、香るおはぎの中から1つ選びます。こちらも一番人気だというほうじ茶ブラマンジェをお願いしました。




お茶とお茶菓子を待っている間に、茶葉カードにあるQRコードから、スマホでお茶のストーリーが見られるといったしかけも。なんともイマドキ。
「お茶をゆっくりお淹れするので、その待ちの時間を楽しんでいただきたい。」(谷本さん)そんなちょっとした遊び心も楽しい。



■初!ハンドドリップで淹れた日本茶の味は?

2種類のお茶を2煎、どちらかのお茶を3煎まで提供されます。
良質なお茶の葉は3煎目まで淹れられますが、「お茶を3煎飲めるというのを知らない方や、どう飲んだら美味しいのかわからないといった方にも、簡単に飲めるんだということを体験してもらいたい」と、この提供方法にしているのだとか。


注文後ハンドドリップで日本茶が淹れられていきます。



天秤で計った茶葉をドリッパーの中に入れます。1煎目は湯温70度で1分20秒待ちます。




これが噂のハンドドリップで淹れる日本茶!!!

初めて見る光景に心の中では興奮MAXの筆者とは対照的に淡々とお茶を淹れていく谷本さん。




徐々にお茶の葉が広がっていくところが見えます。




砂時計で時間を測って1分20秒後、上のドリッパーを傾けると下からガラスのポットへとお茶が落ちていきます。


すべてのお茶が落ちきると茶碗に注がれ、目の前に運ばれてきます。水色(すいしょく)も違う2つのお茶からはそれぞれ違う香りが漂ってきます。
茶碗と一緒にお茶の葉がはいったドリッパーが目の前に置かれます。



グリーンのお茶の葉が鮮やかでしばらく見入ってしまうほどです。お茶の葉をこうやってディスプレイできるのもハンドドリップならではかもしれません。


~1煎目→2煎目→3煎目~



まずは1煎目。最初のお茶(画像左側)は、やぶきたの孫の品種「はるもえぎ」の中蒸しの煎茶。水色(すいしょく)は鮮緑色で、すっきり爽やかな香り。渋み苦み甘み旨みとバランスがとれていて、しっかりとしたお茶の味が感じられる。谷本さん曰く「和栗のようなフレーバーがする」とのこと。なるほどほっこりとした味わいのお茶だ。

次のお茶(画像右側)は、静岡県本山産の品種「香駿」の浅蒸し煎茶。水色は浅蒸しの透明感のある山吹色に近い黄緑色。品種特有の花のような香りがする一風変わった煎茶。


続いて2煎目。湯温は1煎目よりもやや高い80度で20秒程度浸出します。

「はるもえぎ」は1煎目よりも濃い緑色の水色で、甘みがあるとろりとした味わい。
「香駿」はほのかに漂う香りと、お茶らしい渋みの中に甘み旨みが感じられます。

香りを楽しみたいなら「香駿」、お茶を味わいたいなら「はるもえぎ」といったところ。






最後の3煎目は、2つのお茶のうち1つを選び、玄米をトッピングします。玄米は熊本産のニコマルという単一品種で、ここにもシングルオリジンのこだわりが。






3煎目も80度でさっと淹れます。お湯を注ぐと玄米の芳ばしい香りが立ち昇ります。美味しそうでどこか懐かしい香りです。1煎、2煎と飲んできた締めくくりには丁度いい香りの演出です。





■“ハンドドリップで淹れる日本茶”の誕生秘話

「東京茶寮」はLUCY ALTER DESIGNが展開するハンドドリップスタイルの日本茶ブランド「green brewing」の1号店です。同社の谷本幹人さんにハンドドリップスタイルの日本茶の誕生までのいきさつや日本茶専用ドリッパーのしくみ、今後の展開など、お話を伺いました。




――そもそも日本茶に目を向けた理由は何ですか?
谷本:
「二極化していたから。日本茶はペットボトルのお茶と、格式が高くてスタイルが確立された伝統的な茶道のような世界と二極化をしていて、その中間部分が抜け落ちていて、今のライフスタイルにあった日本茶がないなと思ったんです。」


――なぜ日本茶をコーヒーのようにハンドドリップで提供するスタイルにしたのですか?
谷本:
「日本茶に比べてなぜコーヒーが(特に若い人の間で)これほどポピュラーなのか?すごく不思議で…。
コーヒーはフェスやイベントなどでもよく淹れられていますが、あれはコーヒーが(日本茶に比べて)利便性があって合理性が高いから、色々なところで提供できるようになっているんです。まずシンクがいらない。コーヒーのペーパーを捨てれば次を淹れられ、上からお湯を流せば次に使えます。
日本茶は急須を洗うのにシンクが必要になり、茶葉を捨てるといった手間も掛かります。そういったハード面での課題があったからイベントなどに進出しづらい環境ではあったなと。且つ、次々にお客さんに淹れていく時には、効率的に合理的に淹れるという点で急須は業務用にはなってないなと思いました。それで作ったのがこのドリッパーになります。」






「ハードウェアとしてカッコよさを追求した」という日本茶専用ドリッパー「GREEN DRIPPER」。
その開発期間はわずか5ヶ月!というから驚きです。

もともとインターネットの会社にいた谷本さんはドッグイヤーで物事を進めてきたそうで、このお店作りも全て同時並行で進めて短い期間で作り上げていたという。

なんと試作品はすべて3Dプリンター!
あらかじめオリジナルのドリッパーやトレイの上の茶器やその配置まで、全て3CG上でシミュレーションを行い、角度や厚みなど細部を検証して問題ないことを確認してから3Dプリンターでモックを作製し、職人さんにモックを見せて実際のものを作ってもらったという。




いずれも日本各地の職人の技が光るものばかりで、脚は滋賀と大阪、磁器は長崎の波佐見焼き、茶漉しは新潟県燕と純国産にこだわる。
中でもドリッパーの木製ベースの加工が一番難しく、「これができたのが、全国津々浦々探して北海道に1社だけあった。その出会いがなければドリッパーは出来なかった」と言うほど。まさに奇跡の出会いです。


~ドリッパーのしくみ~

このドリッパー、上部の磁器と木製ベースの噛み合わせがポイント!



▲ドリッパーの断面


磁器には穴が1つ空いており、木製のベースに載せると穴が塞がりお湯が下に落ちないしくみになっています。




お茶の葉を入れた磁器の部分にお湯が溜まり、お茶の成分が浸出されます。
時間がきたら上部の磁器を傾ける、または持ち上げると、木製ベースに開いた3つの穴からお茶が下のガラスポットに落ちていきます。


ハンドドリップで淹れるときの注意点を聞くと「一番は湯温管理と時間管理」と話し、「東京茶寮」では、湯温は温度設定ができる電気ケトルでコントロールしている。HARIO製の電気ケトルは1℃単位で温度設定ができるので便利だ。また、1煎目の浸出時間(1分20秒)を測るための砂時計もオリジナルで製作している。




お客様に提供する場合、品質の安定は重要ですが、お湯の量はドリッパーがあらかじめ120CCになっているので計る必要がなく、コーヒーのように回しいれることがないので、誰が淹れても同じように淹れられクオリティーコントロールがきくようになっているそう。


「東京茶寮」の日本茶は、最新のテクノロジーと、細部にこだわったオリジナルデザインによりその品質が保たれていると言えそうです。



最後に今後について聞いてみました。

――今は茶葉が7種類ですが、今後、他の品種や産地も増やそうと考えていますか?
谷本:
「もっと県も増やしたいです。単純な美味しさ以外にも体験として面白いということが大事だなと思っているので、今後もいろんな産地の品種茶も入れていきたいと思っています。」


▲店舗では茶葉の販売もおこなっている


――煎茶以外の他の茶種は?
谷本:
「今も煎茶に専念していますし、これからも基本的には煎茶を考えています。
まだ「煎茶」が英語になっていないというか、そこまで海外でポピュラーになっていないので、国内外で煎茶をちゃんとしっかり啓蒙していきたいと思っています。
海外展開もいま一番日本茶にとってやっていくべきことかなと思っているので、そういったところも進められるようにしていきたいです。」




~まとめ「日本茶の新時代到来」~

最近、日本茶の海外輸出が伸びてきて注目されていますが、日本茶の海外進出にはその再現性が大きなハードルだなと感じていました。ビンで輸出する日本酒などと違って、茶葉を輸出しても、現地で急須や茶碗などの茶器というハード面と、それを使ってお茶を淹れることができる人=ソフト面が揃っていないと、日本で飲む日本茶が再現できない。

「東京茶寮」のハンドドリップで淹れる日本茶はそのハードとソフトの問題をクリアしているように思う。
良質なお茶の葉とお水があれば、誰にでも美味しい日本茶を淹れることができる。ニューヨークやヨーロッパ、アジアなど…世界各地で美味しい日本茶が飲める。この先、世界中に日本茶愛好家が増えていくかもしれない。日本茶好きにはうれしいInnovation(イノベーション)である。


ぜひ新しい日本茶のスタイル、ハンドドリップで淹れた日本茶を体験しに「東京茶寮」を訪れてみてください。

開店したばかりの今は行列ができていることも。比較的混み合っていない平日がねらい目だそう。
季節によってスイーツや器も変えていくそうなので、新茶の春や夏などの展開も楽しみです。



◆東京茶寮


ホームページ
住所:東京都世田谷区上馬一丁目34番15号
営業時間:平日 13:00~20:00 / 土日祝 11:00~20:00 (2017年2月1日から)
定休日:月曜日(祝日の場合翌日休み)
Menu:
・煎茶2種飲み比べ + お茶菓子 1,300円(税込)

<茶葉のラインナップ>
・001 HARUMOEGI はるもえぎ(鹿児島県「頴娃」/中蒸し)
・002 KOUSHUN 香駿(静岡県「本山」/浅蒸し)
・003 KOISHIZUKU こいしずく(やぶきた/静岡県「大原」/深蒸し)
・004 YABUKITA YAME やぶきた やめ(やぶきた/福岡県「八女」/深蒸し)
・005 OKUMIDORI おくみどり(鹿児島県「頴娃」/中蒸し)
・006 KOURAN 香蘭(ゆたかみどりベース合組品/鹿児島県/中蒸し)
・007 YOINO SHICHIYOUSEI 宵の七曜星(やぶきた/静岡県「俵峰」/浅蒸し)
※カッコ内:品種(商品名と同じ場合は記載なし)/産地/蒸し

<お茶菓子>
ほうじ茶ブラマンジェ/ドライフルーツ寄せ/香るおはぎ


(文・撮影/satomin@お茶ライター Teawriter)


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