横浜流星が映画『線は、僕を描く』で主役に選ばれたのは空手の達人だから?来年『巌流島』で演じる宮本武蔵にもヒントがあった!?

2022/10/28 17:00 龍女 龍女

水墨画は中国由来の東アジアを代表する絵画技法だ。
墨の濃淡だけで表現する。


先日、筆者は東京国立博物館の創立150周年記念特別展
「国宝 東京国立博物館のすべて」(10月18日~12月11日)に行ってきた。

この展覧会は、東京国立博物館が所蔵する国宝全てを公開する。
筆者が行ってきたのは開催2日目だった。
しかし、特別展の展示室は平成館の二階に限られている。
全て出せる面積がないので前期後期と展示替えが行われる。
東京国立博物館所蔵の89点がある中で、前期に展示されていた水墨画の国宝は

室町時代の画僧で明時代の中国に留学した雪舟(1420~1506?)が描いた
秋冬山水図

安土桃山時代の1593年~95年頃に描かれた長谷川等伯(1539~1610)の
松林図屏風

江戸初期の狩野派の画家久隅守景(生没年不詳)が描いた
納涼図屏風

が展示されていた。

東京国立博物館の国宝ではないので、展示されなかったが『線は、僕を描く』の原作の第一章で言及されていた伊藤若冲の水墨画を足すと、近代前の水墨画の歴史が分かり易い。

この三作品は日本が中国から水墨画を取り入れて、日本の風土に合わせて進化してきた過程を見せるのに非常に観やすい作品となっている。


『線は、僕を描く』で登場する水墨画は昔から伝えられた技術を使って描いている。
これらの国宝の子孫と言っても良い。
しかし、映画で使われている絵の印象は同じ水墨画に見えない。
特に日本の水墨画の開拓者の雪舟が描いた作品と今の水墨画は違う。
決定的に変わったのは、構図の取り方である。
雪舟の双幅の掛け軸『秋冬山水図』は実物を見てみると、サイズが小さいのにビックリする。
縦47.7cmと横30.2cmの絵が二つ展示されていたが、書き込みが細かくて
鑑定士の中島誠之助の言葉を借りれば
「良い仕事してますねえ」
と言う手先の器用さが目立つ。

日本の水墨画は、余白の美がより強調された画面構成に進化した。


また水墨画が見直されても良いと思える特徴が、他のジャンルの絵に比べて素早く描ける技法なのが大きい。
これは横浜流星が中学生の頃チャンピオンになった空手の試合の時の集中力の出し方にそっくりであった。

そして我々がよく知っているあの宮本武蔵は水墨画の名人であった。
その宮本武蔵を来年、横浜流星が明治座の舞台『巌流島』で演じることになっている。

次のページでは、宮本武蔵がどんな人物だったのか?
本当に強かったのか、何故水墨画を描いたのかをみていきたい。

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