崖が好きな刑事役?秋元康企画ドラマ『警視庁考察一課』の主役・船越英一郎が「2時間ドラマの帝王」と呼ばれる謎の鍵は共演の山村紅葉にあった!

2022/10/21 17:00 龍女 龍女

その船越英一郎の主演作とは
『赤ひげ』シリーズ第4作、
『赤ひげ4』(BSプレミアム11月から金曜20時開始)だ。
山本周五郎(1903~1967)の短編連作小説
『赤ひげ診療譚』(1958年)を原作とするTV時代劇である。
原作の8作ある短編の映像化は終わってしまったので、山本周五郎の他の短編小説を赤ひげの世界に組み込んで脚色している。

脚本家は2人いる。1人は川崎いずみ(1978年生れ)で
メインは朝ドラの『梅ちゃん先生』(2012年4月~9月)で医療モノは経験済みで
11月に監督作の映画『炎上シンデレラ』が待機中の
尾崎将也(1960年4月17日生れ)である。


(尾崎将也 イラストby龍女)

『赤ひげ』は何度も映画・TVドラマ化している。
最も有名な映像化は黒澤明監督と主演三船敏郎の最後のコンビ作、1965年の映画だ。

船越英一郎が2017年の第一シリーズから演じているのは
赤ひげこと小石川療養所の医師新出去定である。


(赤ひげこと新出去定 イラストby龍女)

小石川療養所とは、1722年に設立された小石川薬園内にあった無料の医療施設だ。
幕末にはなくなってしまったが、現在は小石川植物園として残っている。
この施設が開設された時代は、享保年間で幕府の将軍で言うと、徳川吉宗のご時世。
『暴れん坊将軍』の時代だ。

船越英一郎が主演した2時間ドラマで『外科医・鳩村周五郎』(2004~2016)があった。
この企画は、船越英一郎の所属事務所のホリプロの制作だ。
ホリプロのスタッフはいずれは船越英一郎に同じ医療ドラマである『赤ひげ』をやらせたかったのでは?
『赤ひげ』の船越英一郎版の制作会社もホリプロだからである。
『赤ひげ』は今で言うと総合診療医だが、外科手術のシーンもある。
なにより役名「鳩山周五郎」の周五郎は赤ひげの原作者「山本周五郎」から来ている。
山本周五郎作品の世界観は、庶民的な視点が特徴だ。
船越英一郎が若手の頃は、庶民的な気の良いお兄さんのイメージがあった。
彼が渋い中高年になった頃に演じて欲しいという待望論があったのかもしれない。
黒澤明版の『赤ひげ』で三船敏郎が演じた年齢は、45歳であった。
あのときの三船敏郎が筆者よりも若かったのに驚きを禁じ得ない。
高齢化した令和の時代は、50代半ばから似合う年齢である。
満を持しての『赤ひげ』のリメイク企画であったのだろう。

『赤ひげ』は何度も映像化されている医療モノの古典でも、
『白い巨塔』(原作・山崎豊子 1965年出版)
『華岡青洲の妻』(有吉佐和子 1966年)よりも古い。
医療に縁がないと思われる貧しい人を治療するという発想は
離島にいく医師の漫画『Dr.コトー診療所』等にみられる
医療が届かない人を助けようとする医者を主人公にしたジャンルの源流であろう。


船越英一郎は、俳優としての方向性をハッキリ自覚していた。
2枚目を気取ってはいるが少々間が抜けてしまう人柄の役が、自分に合っていると。
元々演出家を目指し、実際に劇団も主宰していた経験が生きている。
2時間ドラマという主戦場がなくなっても、生き残れるタフさがうかがい知れる。
『警視庁考察一課』は、連続ドラマの形式を借りた長編コントにも見える。
2時間ドラマを楽しんできたマニアにお勧めの新作だ。
一方で正統派の時代劇に挑む。
二つの船越英一郎の魅力を秋クールでは、楽しんでいこう。


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