藤原竜也も小栗旬も頭が上がらない?吉田鋼太郎が50代になってからメディア露出するようになった理由とは?

2022/7/29 15:30 龍女 龍女

吉田鋼太郎が次に蜷川演出のシェイクスピア作品に関わったのが、第14弾『お気に召すまま』(2004年8月6日~21日)である。
これは出演者が全員男性で構成されていた。
当然女性の役も男性が演じる。
この舞台の主役級に小栗旬が出演した。
シェイクスピア劇が初めての小栗旬に、シェイクスピアの特徴的な詩のような言い回しを慣れさせるために、吉田鋼太郎が指導するように、蜷川幸雄は指示した。


(小栗旬 イラストby龍女)

藤原竜也は、1997年に16歳で寺山修司作の『身毒丸』のオーディションで抜擢された。
蜷川幸雄が育てた俳優の中でも最も純粋培養の存在と言っても過言ではない。
藤原竜也は埼玉県秩父市出身だ。
おそらく西武池袋線を使って池袋に遊びへ行っていたところで、ホリプロの「児玉さん」にオーディションのチラシを渡されてスカウトされたのが、シンデレラボーイの誕生のきっかけになっている。
池袋という土地も演劇やその他の芸術も盛んな街である。

彩の国シェイクスピア・シリーズ2014年の第29弾『ジュリアス・シーザー』で主役のマーカス・ブルータスを演じた
藤原竜也は、蜷川幸雄に
「稽古場では言われ放題でした」
と述懐している。
通常の稽古だけでは足りないと感じた。
共演した吉田鋼太郎と横田栄司に一緒に残って稽古をつけて欲しいとお願いをしたそうだ。

番外編の2015年の『ハムレット』で2003年に演じたデンマークの王子を再び演じるが、師匠である蜷川幸雄との仕事はこれが最後になる。


(藤原竜也 イラストby龍女)

蜷川幸雄は2016年の5月12日に亡くなった。
蜷川幸雄は最後の演出作品、第32弾『尺には尺を』(2016年5月25日~6月11日)の本番を観る事が出来なかった。


蜷川幸雄が演出できなかった5作品を誰が演出するのか?
2代目の彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督に選ばれたのが吉田鋼太郎である。
晩年の蜷川幸雄からのバトンをしっかり受け継いだ男。

昨年上演された彩の国シェイクスピア・シリーズの最終作第37弾の題名は
『終わりよければすべてよし』である。
主演は藤原竜也である。

ただし、第36弾『ジョン王』(2020年6月8日~6月28日)は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により全公演中止になってしまった。
これは、小栗旬が主役の予定であった。
実は小栗旬は生前の蜷川幸雄と喧嘩別れして2010年代の蜷川作品には参加していない。
彼が演じる予定であったジョン王(1166~1216)は、別名失地王と呼ばれ、イングランドの歴史上、最も評判が悪い。
彼が今大河ドラマで演じている北条義時(1163~1224)と同時代人だ。
再び小栗旬がジョン王(追記・ジョン王ではなく、フィリップ・ザ・バスター)を演じる機会は訪れるのだろうか?
大河ドラマの後、主役の俳優は大役の疲れでしばらく休む事が多いので、慌てずにゆっくり待つしかないようだ。

藤原竜也も小栗旬も吉田鋼太郎に頭が上がらないのは理由がある。
藤原竜也や小栗旬は子役や若手と呼ばれる時代から俳優をしている。
世間は勝手なイメージで順調にいったようにみえたかもしれないが、実際にはそうではないだろう。
吉田鋼太郎は成人してから俳優として実績を重ねた。
特に俳優が演じて面白いと感じるのは悪役だそうだ。
藤原竜也の映像メディアの代表作『カイジ』(2009、2011、2019)シリーズを見ても、人間のどうしようもなく弱い部分を演じている。

吉田鋼太郎は他のシェイクスピアの作品も含めて、数多くの悪役を務めてきた。
どうやって悪役を演じたら良いのか?
自分なりの答えを見つけ出すためのヒントを与えてくれそうな先輩が吉田鋼太郎ではないのか?

吉田鋼太郎は今でこそ映像メディアに引っ張りだこだ。
40代までは蜷川幸雄の演出でシェイクスピア俳優としてガチガチの舞台俳優だった。
ブレイクが遅れたのはそんな理由がある。
シェイクスピア作品は人間の普遍的な行動を描いてきた凝縮された作品群である。
蜷川幸雄は日本でも最大のシェイクスピアの伝道者であった。
吉田鋼太郎はその役割を継ぐべく、有名になる運命を与えられたのかもしれない。


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