藤原竜也も小栗旬も頭が上がらない?吉田鋼太郎が50代になってからメディア露出するようになった理由とは?

2022/7/29 15:30 龍女 龍女

若い頃から端役では映像作品の出演があったが、大役が回ってきたのは2010年代に入ってからである。
TBS日曜劇場の大ヒットドラマ『半沢直樹』(2013年8月~9月)の第2部で、主人公半沢直樹(堺雅人)の上司内藤寛役、

そして、吉田鋼太郎の名前を全国に広めたのが
2014年度前期の朝ドラ『花子とアン』で演じた
九州の炭鉱王伊藤伝右衛門(1861~1947)がモデルの嘉納伝助役である。
吉田鋼太郎が演じた嘉納伝助はいわゆる悪役として配置されたが、それだけではない魅力があった。
脚本担当の中園ミホの構想時には少なかった出番が増えたそうだ。
それ位、金で結婚させられた20歳以上年下の後妻蓮子(仲間由紀恵)が嫌うだけではない人間的魅力に溢れた男を演じて、映像作品で起用したい機会が急激に増えたはずである。
この時、すでに50代になっているから、映像メディアで大ブレイクした俳優としてはかなりの遅咲きである。

ドラマ初主演はフジテレビの名物番組
世にも奇妙な物語 '14秋の特別編「未来ドロボウ」(2014年10月18日)である。
何故、映像メディアではブレイクが遅れたか?
実は売れない俳優だったからではない。
その理由は後述する。


(『花子とアン』の嘉納伝助を演じる吉田鋼太郎 イラストby龍女)


NHKでの初主演ドラマが、嘉納伝助のモデル伊藤伝右衛門と同じく九州出身の一代で財をなした大実業家の生涯である。

NHKラジオ・テレビを通じて90周年を記念したドラマだ。
土曜20時放送の5回シリーズ『経世済民の男』(2015年8月~9月)が放送された。
昭和に活躍した経済人を3人取り上げたドラマである。
第1作では大蔵大臣を歴任し日本経済の礎を築いた高橋是清(1854~1936)をオダギリジョーが演じた。
安倍晋三元総理大臣が今年の7月8日に暗殺された。
その前の総理経験者の暗殺を遡ると、高橋是清が殺された1936年の2月26日の226事件である。
脚本家はジェームズ三木(『独眼竜政宗』『八代将軍吉宗』『葵徳川三代』)。

第2作は宝塚を始めとする阪急東宝グループの創業者小林一三(1873~1957)を阿部サダヲが演じた。
脚本家は森下佳子(朝ドラ『ごちそうさん』大河ドラマ『おんな城主直虎』)。

そして、最終回の第3部は九州と中部の電力会社・東邦電力(1921~1942解散)の2代目社長で、「電力王」「電力の鬼」と呼ばれた人物だ。
70代となった戦後は電力再編に尽力した松永安左エ門(1875~1971)を吉田鋼太郎が演じた。
脚本家は池端俊策(1946年1月7日生れ)である。

松永安左エ門は、戦中東邦電力を解散させられた後に実業界を引退し、所沢市の柳瀬荘という別荘で隠居生活をしていた。
美術収集家、茶人としても知られ、雅号は耳庵とした。
若いときは美男子だったが、晩年は能面の一種で鬼を表す般若の面そっくりの風貌に変化した。
吉田鋼太郎は、特殊メイクで、実際の松永安左エ門に寄せて演じた。
しかしこの美術収集と趣味には、大きな問題がある。
最も有名な美術番組『開運!なんでも鑑定団』でもお馴染みの依頼人の家族あるあるがドラマのシーンで描かれる。
骨董収集にハマった既婚者の男は、気に入った品があってもなかなか妻には理解されず、無駄遣いにしかみえない。
松永安左エ門(吉田鋼太郎)は、妻の一子(伊藤蘭)にはとにかく頭が上がらない。
その一コマをイラストにしてみた。


(経世済民の男・第三部『鬼と呼ばれた男〜松永安左エ門』の主人公を演じる吉田鋼太郎 イラストby龍女)

ちなみに柳瀬荘を松永安左エ門は1948年に国に寄贈して、後に東京国立博物館の管轄になった。
建物の外観だけは毎週木曜日に見学が出来るそうである。

松永安左エ門の茶人としての活動は、小田原に別荘を作って、小田原三茶人(他は益田鈍翁、野崎幻庵)と呼ばれるようになったそうである。

さて、茶人で松永と聞いて、日本史好きならもう一人重要な人物を思い出した方はいないだろうか?
そう、戦国の梟雄松永弾正久秀(1508~1577)である。
源平合戦時の平重衡(1158~1185)に続く東大寺を焼いた2人目の人物と伝えられてきた。
歴史研究をすすめると、必ずしも松永久秀が直接手を下したそうではなかったらしい。
最新の研究も取り入れた、新しい松永久秀像を演じる俳優として、吉田鋼太郎は選ばれた。
『麒麟がくる』(2020年)の主人公明智光秀(1528~1582 長谷川博己が演じた)は最終的に信長を裏切る事になる。
松永久秀はその前に天下人になっていく信長を裏切った。
明智光秀の動機に大きな影響を与える重要な存在として、出番が多かった。


(『麒麟がくる』松永久秀を演じる吉田鋼太郎 イラストby龍女)

こうして、脚本家池端俊策(『麒麟がくる』でも脚本を担当)のお陰で、日本史上有名な二人の「松永」さんを演じた事になる。


さて、現在では映像作品でも大活躍中の吉田鋼太郎だが、40代までは主にどこで俳優の仕事をしていたのか?
一気に遡っていこう。

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