4000年の歴史をたどる世界遺産の旅

2022/6/28 19:20 yamasan yamasan

アッサラームアライクム、いまトピアート部のyamasanです。

今回はアラブ圏の世界遺産を訪ねる旅の第3弾、イラク編です。

チグリス川、ユーフラテス川が流れ、メソポタミア文明発祥の地となったイラクは世界遺産の宝庫。
現在のイラクは、ほぼ全土に渡って「退避勧告」「渡航中止勧告」が出されていて、とても観光旅行ができる状況ではありませんが、1990年代後半には比較的政情が安定していて団体ツアーも出ていたので、そのわずかな機会をとらえて世界遺産巡りをすることができました。

それではさっそくイラクの世界遺産巡りの旅にご招待したいと思います。

都市遺跡サーマッラー

「バベルの塔だ!」



バスの中から外の景色を眺めていたら、平原の中に忽然と現れてきたこの姿は印象的でした。

渦を巻いて天まで登るような階段が続いているこの塔は、イラクの首都バグダッドから北西に約130km、サーマッラーにある高さ約53mの尖塔「マルウィヤ・ミナレット」です。

かつては旧約聖書に出てくるバベルの塔の原型とも言われたこの塔は、アッバース朝が836~892年に首都をバグダッドからサーマッラーに移したときに建てられたもので、最盛期のサーマッラーを象徴しているかのようでした。

現在のイラクの不安定な政情のもとでは維持や保存活動が困難なため、世界遺産であると同時に、危機遺産リストにも登録されています。


隊商都市 ハトラ

霧のかなたからまるで幻のようにその姿を現した古代遺跡ハトラ。


イラク北部の街モス―ルの南西約100kmに位置するハトラは、メソポタミアとギリシャやローマを結ぶ交通の要所に位置していたので、紀元前3世紀頃から紀元3世紀頃にかけて隊商都市として栄えました。

東西文化の交流点に位置するので、ギリシャ式の神殿や古代メソポタミアの神殿などが混在しているとても珍しい遺跡なのです。

正面はギリシャ式の神殿。


こちらは古代メソポタミアの太陽神シャマシュを祀るシャマシュ神殿。


シャマシュ神殿を守る女神像。


ハトラ遺跡も内戦で破壊されたため、現在では「危機遺産リスト」に追加されています。

古代バビロニアの首都 バビロン

バビロンは、紀元前19世紀に成立したバビロン第一王朝の都。
紀元前18世紀には「目には目、歯には歯」のハンムラビ法典で知られるハンムラビ王が全バビロニアを統一しました。

その後、バビロンはアッシリア帝国によって破壊され、現在残っているのは紀元前7世紀に再建された新バビロニア王朝時代のものです。

イラクはバビロンの世界遺産登録を目指していましたが、当時はまだ世界遺産ではなく、2019年にようやく世界文化遺産に登録されました。

遺跡の入口には原寸大に再建されたかつての主門「イシュタル門」が建っています。


イシュタル門をくぐると、その先には行列道路が続いていて、両側には見上げるほどの高い壁がそびえています。


壁面には動物たちの浮彫がほどこされていて、王の行列の威厳を祝福しているかのようでした。


イシュタル門をご覧になって、「どこかで見たことある!」と思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

それは、以前いまトピのコラムで紹介したベルリンの博物館島にあるペルガモン博物館です。



ベルリンの博物館島を紹介したコラムはこちらです。ペルガモン博物館の中にはイシュタル門や行列道路の壁面がそっくりそのまま展示されているのです。

【自宅で楽しむ海外のミュージアム】古代の世界にタイムスリップしてみませんか。
https://ima.goo.ne.jp/column/article/8186.html

ドイツだけでなく、国内にもバビロンの栄華を感じることができる場所があります。

それは、シリアのパルミラ遺跡のコラムでも紹介した古代オリエント博物館です。
公式サイトはこちらです⇒古代オリエント博物館
   
そこにはハンムラビ法典が楔形文字で刻まれた石碑(複製)が展示されているのです。


2020年9月から10月にかけて同館で開催されたクローズアップ展「エヌマ・エリシュ 古代メソポタミアの天地創造神話」では、古代バビロンの1/2000模型が展示されていました。


イシュタル門も、行列道路も、バベルの塔の原型とされるジッグラトも見えます。
奥の白い模型は古代オリエント博物館が入っているサンシャインシティですが、これと比べても、かつてのバビロンがいかに大きかったかがよくわかります。

団体ツアーで行ったイラクですが、当時はバグダッド空港が閉鎖されていたので、アエロフロートでモスクワ経由でイランのテヘランまで飛び、さらにテヘランからは国内便でケルマンシャーまで行き、そこから先はバスで延々何時間も走ってイラクに入るというハードな行程でした。

イランとイラクの国境には緩衝地帯があって、帰りは国境の100m手前でバスを降り、各自が荷物を持って歩いて国境のゲートに向かわなくてはならなかったのですが、重たい荷物を持ちながら振り返るとイラク国内を案内してくれたガイドさんがずっと手を振り続けているのが見えました。
その姿は今でも忘れることはできません。


これでアラブ圏三部作は完結です。
イエメンとシリア・パルミラ遺跡を紹介したコラムもあわせてぜひご覧ください。

【銀塩写真で甦る】危機に瀕した世界遺産の街
https://ima.goo.ne.jp/column/article/10389.html

もう一度見たい!古代ローマ時代に繁栄した世界遺産の街
https://ima.goo.ne.jp/column/article/10389.html