朝ドラ『カムカムエヴリバディ』2代目ヒロイン深津絵里の相手役が、深夜ドラマが似合うオダギリジョー?異例の朝ドラ出演の訳とは?

2022/1/28 17:30 龍女 龍女

オダギリジョーは、岡山県津山市出身で、映画館に入り浸っていた。
映画業界に入りたいと思うようになっていたようだ。
高校卒業後、映画監督になりたくて、カリフォルニア州立大学フレズノ校に留学。
演出コースを専攻する予定が、願書の記入ミスによって演劇学を専攻するようになったという。
しかし、せっかく俳優の勉強をしたので、そこから映画業界へ入る方法を模索しだしたかもしれない。
1999年に俳優デビューした。
デビュー作ではないが、TVドラマにおける最初の代表作が『仮面ライダークウガ』(2000年1月~2001年1月)である。
仮面ライダーシリーズは『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)以降、連続ドラマでは中断していた。
再開するにあたって新たに放送局を毎日放送(関東ではTBS)から、TV朝日に変更された。
製作会社の東映は、今までの仮面ライダーとは違う方向性で立ち上げていこうとオーディションを行った。
その中で初の主演に抜擢されたのが、特撮に全く興味のなかった新人俳優オダギリジョーであった。

これを機に仮面ライダーは元々その要素はあったが、若手俳優の登竜門の一つとして定着するきっかけになる作品になった。

視聴者としての筆者は仮面ライダーシリーズは『仮面ライダースーパー1』(1980年)で卒業していた。
2000年当時、まだ大学生だった。
主な視聴者である幼児と、一緒に観ている母親がイケメンの若手俳優にときめく新しい仮面ライダーの存在を知らなかった。
したがって、オダギリジョーの名前を覚えたのは、『号外!!爆笑大問題』(2001年4月~2002年9月)の日本テレビ系列の深夜のバラエティ番組レギュラーになった若手俳優としてだった。

オダギリジョーは後に大監督になる園子温(1961年12月18日生れ)のブレイク直前作『HAZARD』(2002年制作2006年公開)に主演した。

筆者がオダギリジョーの出演作でハマったのは、犬童一心監督と渡辺あや脚本のコンビで、『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)に次ぐ第2弾として制作された『メゾン・ド・ヒミコ』である。
彼が演じたゲイの青年・岸本春彦は退廃的な美しさで息をのんだ。

(映画『メゾン・ド・ヒミコ』のオダギリジョー イラストby龍女)

アート好きとしては、小栗康平(1945年10月29日生れ)が2015年に監督した作品が気になった。
『FOUJITA』(フジタのフランス語表記)。
藤田嗣治(1886~1968)は乳白色の裸婦と細い輪郭線を売りにして、1920年代にパリで成功した洋画家である。
1939年の第二次世界大戦で日本に帰国して戦意高揚のために戦争画を描いたが、敗戦後、戦争責任を問われ日本を離れフランスに帰化した波瀾万丈の生涯を送った。


(レオナール・フジタこと藤田嗣治。1922年の写真から引用 イラストby龍女)

オダギリジョーは独特の服のセンスでも有名だ。
藤田嗣治はおかっぱ頭でロイドめがねでちょびヒゲというトレードマークで名物男でもあった。
フランス時代の写真では、日本にとどまっていたら、当時でもかなり奇抜な衣装を着て写っている。
平気で着こなせる俳優として、この役に選ばれたのだろう。


(藤田嗣治を演じたオダギリジョー イラストby龍女)

近年は当初からの夢だった監督業にも進出し始めている。
2019年に長編映画監督デビュー作『ある船頭の話』は第76回ヴェネツィア国際映画祭のベニス・デイズ部門というインディーズ系の作品を対象とした作品部門に出品した。
長編デビューする前には、主演したTVドラマ『帰ってきた時効警察』(2007年6月1日)第8話で演出した。
自主映画で小学校の同級生にあたるお笑いコンビ次長課長の河本準一(1975年4月7日生れ)が出演した『さくらな人たち』(2009年)と言う作品もある。

NHKでは金曜日のドラマ10で3回放送された、池松壮亮主演の『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』(2021年9月~ 10月)で、演出・脚本・編集と更に
主人公と視聴者には犬の着ぐるみを着たおじさんにみえる警察犬、オリバー役を演じた。


(『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』のオリバーを演じるオダギリジョー イラストby龍女)

この作品ではオダギリジョーのTVドラマにおける代表作『時効警察』シリーズ(2006・2007・2019)を始め、映画『たみおのしあわせ』(2008年)でも共演した麻生久美子が出ていたり、『ある船頭の話』の主演の柄本明が出演していたりと、監督志望のオダギリジョーが俳優を経験したことで遠回りながらやりたかったことを実現している様子がうかがえる。

しかし、こうした自分のやりたい仕事を実現するためには資金が必要である。
俳優の職分として、自分がやりたい役柄を演じるというより依頼されて引き受けるのが通常だ。
それをうまく生かして、俳優として名を売っていくのもいつか自分がやりたい企画を通す説得材料にもなる。

次のページでは、『カムカムエヴリバディ』の大月錠一郎役に通じるNHKにおけるメジャーなドラマでの活躍を振り返っていこう。

    次へ

  1. 1
  2. 2
  3. 3