「バロックの街」の至宝が待望の来日!

2021/12/26 19:30 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今年(2021年)も残りあとわずか。
新型コロナウイルス感染症の影響はまだまだ続いていますが、今年も海外の美術館博物館から多くの作品が来日して私たちアートファンを楽しませてくれました。

そして、SNS上ではすでに来年(2022年)開催される展覧会の話題で盛り上がっていますが、注目したいのは、ラファエロの《システィナの聖母》と並んで「バロックの街」ドイツ・ザクセン州ドレスデンの至宝、フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》が展示される「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」。
修復によって後ろの壁に隠されていたキューピッドの画中画が現れたことが大きな話題になっている作品です。

「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」
 東京都美術館


https://www.dresden-vermeer.jp
※新会期決定!! 2月10日(木)~4月3日(日)←終了しました。

巡回展情報
 【北海道展】 2022年4月22日(金)~6月26日(日) 北海道立近代美術館終了しました。
 【大阪展】  2022年7月16日(土)~9月25日(日) 大阪市立美術館終了しました。
 【宮城展】  2022年10月8日(土)~11月27日(日) 宮城県美術館



ドイツでもフェルメールは大人気

修復後初めてのお披露目ということで、地元ドレスデンでは、9月10日から2022年1月2日まで、ドイツでも大人気のフェルメール作品が《窓辺で手紙を読む女》を含めて全部で10点展示される超豪華版の「フェルメール回顧展」が開催されて、会場は多くの方でにぎわっている・・・はずだったのですが、残念ながらコロナ禍でドレスデン国立古典絵画館全体が1月9日まで臨時休館になってしまいました。

ということは、ドイツの人たちには申し訳ないのですが、見逃してしまった多くの現地の人たちに先駆けて私たちが「バロックの街」の至宝を日本国内で見ることができるということなのです。

ドレスデン国立古典絵画館があるツヴィンガー宮殿入口の門


今回来日する17世紀オランダ絵画はじめドレスデン国立古典絵画館のコレクションは、17世紀後半から18世紀中ごろにかけてザクセンを支配した、アート好きな選帝侯アウグストスⅠ世親子が収集したもので、二人の姿は他のザクセンの君主たちとともに「君主の行列」の中に描かれています。


(下のコラムでは昼の写真を掲載したので、今回は夜景にしました。)

ドレスデンが第二次世界大戦末期の連合軍による大空襲で壊滅的な被害を受けたあと「バロックの街」として見事によみがえったことや「君主の行列」は以前のいまトピのコラムで紹介しています。

【ドレスデン】戦災からよみがえったバロックの街

また、戦災を逃れたものの、戦後、《窓辺で手紙を読む女》が《システィナの聖母》ほかの作品とともに数奇な運命をたどったことは、こちらのコラムで紹介しているので、ぜひご覧ください。

数奇な運命をたどったドレスデンの至宝《システィナの聖母》

ドレスデン国立古典絵画館のチケット

ドレスデン国立古典絵画館「フェルメール回顧展」はこんなに豪華なラインナップ

閉館中で見ることができない「フェルメール回顧展」ですが、展示室内の様子を少しだけ紹介します。
出展されているフェルメール作品10点のうち、5点はドイツ国内の美術館博物館が所蔵するもので、残りの5点がフェルメールの母国オランダをはじめとした国外からのもの。ドイツ国内の美術館博物館で所蔵されるフェルメール作品6点のうち5点が1か所で見られるというお得な内容でした。

ドイツ国内で所蔵されている6点は次のとおりですが、来日した作品をご覧になられた方も、ドイツでフェルメール作品めぐりの旅をされた方もいらっしゃるのでは。

ドレスデン国立古典絵画館
 《取り持ち女》《窓辺で手紙を読む女》
ベルリン国立美術館
 《真珠の首飾りの女》《ワイングラス》(←今回はこの作品だけ展示されません)
シュテーデル美術館(フランクフルト・アム・マイン)
 《地理学者》
アントン・ウルリッヒ公美術館(ブラウンシュバイク)
 《二人の紳士と女》

ドレスデン国立古典絵画館所蔵作品のうち《取り持ち女》は2019年に来日しているので、その時にご覧になられた方は今回《窓辺で手紙を読む女》を見れば同館所蔵フェルメール作品をコンプリートできますね。

フェルメール《取り持ち女》
※フェルメール作品の画像は2018年にそごう美術館で開催された「フェルメール 光の王国展2018」で撮影したリ・クリエイト(複製画)です。以下同じ。

ベルリン国立美術館は、以前、ベルリンに行ったときはペルガモン美術館でたっぷり時間をとったので行かれなかったのですが、その後、2作品とも来日してくれたので見ることができました。

フェルメール《真珠の首飾りの女》

ベルリンの2作品とは反対に、シュテーデル美術館所蔵の《地理学者》は、来日した時に見逃してしまったのですが、その後、現地でほとんど貸し切り状態の部屋で見ることができました。

フェルメール《地理学者》

こちらはアントン・ウルリッヒ公美術館が所蔵する《二人の紳士と女》。

フェルメール《二人の紳士と女》

ベルリンやフランクフルト・アム・マインは海外からドイツに入る玄関口ですし、ドレスデンはベルリンから特急で2時間ほどの距離なのでアクセスもいいのですが、アントン・ウルリッヒ公美術館のあるブラウンシュバイクはどちらからも少し離れているので、ドイツ国内のフェルメール作品めぐりをするにはある程度の日数が必要かもしれません。
それでもドイツ北部にあるブラウンシュバイクは人口25万人ほどの中都市ですが、ハンザ都市のなごりもあって歴史も古いので、いつかはぜい訪れてみたい街です。


ドイツ国外からの出展作品は次の5点です。

オランダ アムステルダム国立美術館
 《小路》《青衣の女》
イギリス ロンドン・ナショナル・ギャラリー
 《ヴァージナルの前に立つ女》
アメリカ フリック・コレクション
 《稽古の中断》
アメリカ ワシントン・ナショナル・ギャラリー
 《天秤を持つ女》

オリジナル言語はドイツ語ですが、動画では展示室内の様子や、修復の過程をこちらのサイトでご覧いただくことができます。
「Johannes Vermeer.Vom Innehalten」

エルベ川に架かるアウグスト橋からドレスデン旧市街地を眺めたところ。


ヨーロッパの街には路面電車と石畳がよく似合います。
アートファンのみなさまも《窓辺で手紙を読む女》を見たら、ドレスデンに行きたくなってしまうかもしれません。


さて、ちょうど一年前のコラムでも「いつかは安心して海外に行かれることを願いつつ、今年最後のコラムを終えたいと思います。」と書きましたが、残念ながら事態は好転せず、今年も同じ思いで一年を終えることになりそうです。

あらためまして、今年一年ご愛読ありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

みなさまにとって来年がよい年になりますように!