公開中の映画『リスペクト』の主人公で「ソウルの女王」ことアレサ・フランクリンを、アカデミー賞女優のジェニファー・ハドソンが演じることになった理由とは?

2021/11/16 23:00 龍女 龍女

①映画『リスペクト』あらすじ(前半)

アレサ・フランクリンの幼少期から歌手デビューして低迷した頃まで。


1952年、デトロイト。
10歳の少女、アレサ・ルイーズ(スカイ・ダコタ・ターナー)は裕福な暮らしをしていた。
家族の間ではリー(あらすじ紹介ではリーと表記)と呼ばれた。


(アレサの父、C・L・フランクリン。実際と演じたフォレスト・ウィティカー)

父はアフリカ系の住民が集まるコミュニティの名士、プロテスタント系の多数派バプテスト教会の牧師のクラレンス・ラヴォーン・フランクリン(以下C・L・フランクリン)。

母は歌手でピアニストのバーバラ・シガーズ(オードラ・マクドナルド)。

4歳上の姉のアーマ(セイコン・センブラ)、2歳上の兄のセシル(リロイ・マクレーン)、2歳下の妹のキャロリン(ヘイリー・キルゴア)の四兄妹の3番目。

父と母は別居中。幼いリーにはその理由が分からない。
面会日に母親が尋ねてきた。
昼の間、ピアノのある部屋で、鍵盤の前に一緒にピアノと即興の歌で会話をする。
母はまだ少女のリーには分からない父親の人柄を匂わせる意味深な言葉を残す。

後日、母バーバラが亡くなったと電話の向こうから知らせが届いた。


1953年、街の名士である父が立てた大豪邸、フランクリン家の屋敷は夜な夜なホームパーティが行われていた。


(ブルースの女王、ダイナ・ワシントン。実際と演じたメアリー・J・ブライジ イラストby龍女)

ブルースの女王ダイナ・ワシントン(メアリー・J・ブライジ)、スキャットの女王エラ・フィッツジェラルド、ソウル・ミュージックの開拓者の一人サム・クック等、きら星のごとくであった。


(テッド・ホワイトと演じたマーロン・ウェイアンズ イラストby龍女)

その中には、11歳上のテッド・ホワイトと言う怪しげだが、身なりの良い紳士がいた。
C・L・フランクリンは彼を嫌い出入り禁止にした。

リーは、子供部屋で1人ベッドで横になるが、ドアの向こうはパーティーに参加する大人達の談笑が聞こえなかなか眠れない。
起こされてパーティー会場に呼ばれたリーは、歌を披露する。
パーティー客は主宰するC・L・フランクリンの娘の歌を褒め称える。
用事が済むと、一人の部屋のベッドに戻る。
すると、不意にドアが開き。
10代の少年がリーに声をかけてきた。

翌日、フランクリン家を取り仕切るビッグ・ママこと祖母のレイチェル・ウォーカーは、リーの様子が何やらおかしいことに気づいた。
理由を聞いても分からない。
察したビッグ・ママは寡黙なリーを抱きしめた。


1959年、C・L・フランクリンはゴスペル・サーキットと呼ばれる講演旅行で、全米の黒人コミュティーを形成するバプティスト教会を巡業していた。
父の説教は評判が良く、レコードに録音したモノが地元デトロイトのレコード店を中心に売れるほど。
講演料も高額で、裕福な生活を送れたのはその為であった。
前座とピアノで説教のアシスタントをしていたのが17歳のリー(ジェニファー・ハドソン)。

デトロイトの豪邸に戻ってきたリーを出迎えたのは、ビッグママと2人の男の子。
リーは12歳で長男クラレンス、15歳で次男エドワードを出産していた。
リーは、学校よりも巡業が楽しく高校を中退した。他の兄妹は大学を卒業した知的な家庭環境でもあった。
久々に家族揃って食卓を囲むとき、全員で美しいコーラスを奏でる。

豪邸の庭でランチパーティが開かれる。
出席者の中には、兄セシルの友人のスモーキー・ロビンソン(ロドリック・D・コリンズ)がいた。
彼はデトロイトの新しいレコード会社モータウンの所属のシンガーソングライターで、リーを勧誘した。
リーの実力で、スカウトするレコード会社は多かった。
この日は、いよいよプロ歌手になろうとするリーの所属レコード会社が発表される。
リーのマネージメントを兼ねている父のC・L・フランクリンは
1888年創業の老舗コロンビア・レコードに決めたと発表した。


1960年、父とニューヨークの高層ビル街を見上げるリー。
その中の一室に、コロンビア・レコードのA&Rジョン・ハモンド(テイト・ドノヴァン)がいる。
父同伴の面接で、歌を一節奏でたリーは、ジョン・ハモンドに気に入られ、正式に契約を結んだ。

コロンビア・レコードのレコーディングスタジオでは、オーケストラの隣に、壁で狭く仕切られたヴォーカルブースがおかれて録音作業はすすむ。
アレサはジャズ・ヴォーカリストとして、レコーディングに挑むことになった。
様々な曲を吹き込んで、アルバムを次々と制作していくが売れなかった。

リーは、久しぶりにテッド・ホワイトと再会する。
ニューヨークのテッド・ホワイトのアパートには、リーのアルバムが飾られていた。
リーはアルバムの感想を聞くと、テッドは全部アルバムは聴いてると答えるが、納得していない様子であった。
夜になって、テッドは車でリーを返して、また会う約束をする。
後日、レストランで食事をして、その帰りにキスをした二人は恋人同士になった。


1962年、ニューヨークのジャズクラブでライブをしていたリーは、観客席で尊敬するダイナ・ワシントンが来ていると聞いた。
早速彼女の代表曲『アンフォーゲッタブル』をピアノで弾き語り始めると、突然、ダイナはテーブルをひっくり返し、演奏は止まり、リーは楽屋に逃げ帰ってしまった。
鏡の前に座っていると、楽屋にダイナ本人が入ってきた。
自分らしさを表現しろとダイナは教えていた。

リーは、テッドと実家に帰ってきた。
C・L・フランクリンは、出禁のはずのテッド・ホワイトがリーと深い仲になり、激怒した。
これまで、父の言うなりだったリーは初めて反抗した。
テッド・ホワイトと結婚すること、マネージャーをテッドに替えると告げた。

コロンビア・レコードとの契約を更新しないと決めたテッドは、新しい契約先を見つけた。
同じニューヨークに本社を持つ独立系のアトランティック・レコードであった。

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