とうとう初の女性総理に!『総理の夫』主演・中谷美紀がなぜか政治ドラマの出演が多い理由がわかった!

2021/9/22 22:00 龍女 龍女

②ドラマ『白洲次郎』の妻・白洲正子(2009年放送のスペシャルドラマ)


(壮年期の白洲正子。町田市民文学館のTwitterから引用 イラストby龍女)

筆者は白洲正子(1910~1998)の大ファンである。
ファンになったのは、1999年か2000年頃、実際の彼女が亡くなっておよそ2年後のことである。
2浪を経て京都の大谷大学の学生になっていたことが大きい。
大谷大学は仏教系の私立だ。大谷とは浄土真宗大谷派、正式宗派名『真宗大谷派』のことである。
白洲正子の著書が仏教に関する随筆が多かった事が、読者となる大いなる動機の一つにはなっている。

しかし、それ以上に白洲正子の終の棲家・武相荘の場所の近くに縁があったことの方が大きいかもしれない。
武相荘へ公共機関を使って行くには、電車の最寄り駅は小田急線の鶴川である。
筆者は同じ最寄り駅の和光学園高等学校にバスに乗って通っていた。
1993年から1995年頃のことである。
そんな近くに凄い人が住んでいたことに驚いた。
なんで早く存在を認識しなかったかと後悔した。
またこの場所はTBSを始めとして、様々な名作ドラマを生み出してきた緑山スタジオの最寄り駅でもある。


(白洲正子を演じながら著作に書かれた場所を巡る中谷美紀。写真集『白洲正子 TRAVELING DAYS』)より引用 イラストby龍女)

白洲正子は、日本文学のジャンルの一つ批評において長寿を誇ったことで貴重な証言者となった。
現在はママタレと呼ばれることが多い90年代にはやった『カリスマ主婦』の元祖のような存在でもあった。
日本の美に対する文章はどれも鋭さがあった。
理屈ではなく直感を好む行動的な性格が文章の癖にも現れており、「韋駄天お正」のあだ名にふさわしい。
筆者にとっても、幼少期から本を読んでいたが、文章の背後に書き手の人柄がみえてくる読書体験を初めて味わっただけに、特別な存在なのである。

中谷美紀はその役を見事にこなした。
昨年、映画『日本独立』で同じ役を宮沢りえが演じたが、申し訳ないが映画自体を観る気がしない。
俳優というのは、脚本の意図に沿って演じるのが仕事である。
ここ10年の日本近代史の描き方として、吉田茂と白洲次郎の扱いが美化されすぎてはいないだろうか?。

ドラマの主人公は白洲正子の夫の白洲次郎(伊勢谷友介)である。
彼がもっと歴史に残った仕事をした時期は、主に吉田茂内閣総理大臣が政権を握っていた時期と一致する。
吉田茂の重要な側近の一人であったのだ。
しかし、側近政治というのは江戸時代の側用人・柳沢吉保や間部詮房にみられるように、歴史を記述する目撃者には評判が悪いことが多い。
特に白洲次郎は前に触れた側用人同様に美男子であった。
しかも、周囲からみると、よく分からない実業家だったのが、災いした。
当時のマスコミにロシア・ロマノフ王朝末期の宗教家でアレキサンドラ皇后の相談役だった人物になぞらえて「日本のラスプーチン」と言われた状況が遠慮なく描かれている。
晩年に貴重な史料になりそうな文献を燃やしてしまうシーンも出てくる。
正子の骨董と文学批評の師匠の青山二郎(市川亀治郎・現4代目猿之助)や小林秀雄(緒形幹太)も登場してくる。
正子ファンとしては、アナザーストーリーとして正子を主人公とした白洲次郎の晩年あたりのドラマを長尺で観たかった。

中谷美紀にとって、長い期間に一つの役を演じる経験をしたほぼ初めての作品であろう。
大ヒットした日曜劇場『Jinー仁ー』や大河ドラマ『軍師官兵衛』の前にこの役を経験したことは大いに意義のあることにであったに違いない。

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