音楽ドキュメンタリー映画『サマー・オブ・ソウル』の舞台は1969年の夏のニューヨークのハーレム。当時19歳だったスティーヴィー・ワンダーが10年後に生み出した名曲との関係が分かった!

2021/9/17 15:00 龍女 龍女

③『ハッピー・バースデイ』の意味とは?
1980年9月29日に発売されたアルバム『ホッター・ザン・ジュライ』に収録された
Happy Birthdayである。

実は不特定の誕生日を祝った内容では無い。
1月15日のマーティン・ルーサー・キングの誕生日を祝日にするという法案が1979年にアメリカの連邦議会で否決された。
人種差別的な観点以外に前例主義の観点から、大統領経験者以外の誕生日の祝日はそれまで存在しなかったことが反対意見にあったかもしれない。
次こそ、法案を通すために書かれたキャンペーンソングだった。

この曲は当事国のアメリカではチャートインしなかったが、全英シングルチャートでは1980年の8月に2位を記録するヒットとなった。
色々あったがアメリカ合衆国の誕生にイギリスが関わっている以上、その現象は無視できなかったはずだ。

法案の具体案は、誕生日その日を祝日というわけでは無く、
「毎年1月の第3週目の月曜日を記念日とすること」
で、1983年の後半にレーガン政権下で承認された。
実際最初に行われたのは1986年の1月20日で、特別番組のエンディングで改めて大勢の豪華なミュージシャンが大合唱して演奏された。


(1986年のグラミー賞授賞式。
左からマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダー イラストby龍女)

2009年には南アフリカの黒人解放活動家で、アパルトヘイト解除後の初代大統領となったネルソン・マンデラの誕生日でも、演奏されている。
実はかなり政治的な意味を含んだ内容の楽曲ではある。
ただ、音楽として歌詞に耳を深く傾けなければ非常にリズムに乗って楽しさが強調されている名曲である。


未だにブラック・ライブズ・マター運動など問題が解消された訳ではない。
社会が成熟し、複雑化したからこそ新しい問題も山積している。
若いミュージシャンは、今の世の中を反映した曲を発表し続けて、問題提起をしている。
道のりは険しい。
しかし、続けていれば少しだけ前へ進めることは出来る。
ハッピー・バースデイはそのせめてものお手本である。


参考文献
スティーヴ・ロッダースティーヴィー・ワンダー ある天才の伝説ブルース・インターアクションズ


※最新記事の公開は筆者のFacebookTwitterにてお知らせします。
(「いいね!」か「フォロー」いただくと通知が届きます)
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4