全裸より妖艶な裸サスペンダー…シャーロット・ランプリングの成長を追ってみた

2014/11/27 17:12 星野小春 星野小春


現代の日本でも木村多江や小野ゆり子、黒木華を初めとする“一重まぶたの女優”が根強い人気を得ていますが、純粋なコーカソイドの中にもごく稀に一重に見える奥二重の美女が誕生することがあります。



今回は、正面から見ると一重に見える碧い三白眼とこけた頬が作り出す退廃的な色気が男達を魅了する、悪い妖精のような美女シャーロット・ランプリングをご紹介したいと思います。



映画好きの方の中には、シャーロット・ランプリング、という名前の響きだけでもう倒錯したエロスを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?



1973年制作のイタリア映画『愛の嵐』の中で強制収容所でナチスの高官に弄ばれる少女ルチアを演じたシャーロット…ナチ帽に長手袋に裸にサスペンダーでバレエを踊る姿はあまりにも衝撃的でした。



その妖気を帯びた美しさから、様々な作品で暗いエロスを醸し出す不遇な女性を演じてきた伝説の魔女・シャーロットとは、一体どんな女性だったのでしょうか?



■ 国際派女優への礎を築いた少女時代

「運命の女(ファム・ファタル)」と呼ばれる異色の女優・シャーロット・ランプリングは、1946年イングランド・エセックス州スターマーで生まれました。



父親のゴドフリー・ランプリングは英国陸軍の大佐で母親は画家。軍人の父とともにヨーロッパを渡り歩き、イギリスとフランスで教育を受け、後に国際派女優として活躍する土台となる堪能な語学力を身に着けます。



大人に囲まれ同世代と遊ぶことが少なかった少女シャーロットは、エレガンスな仕草と大人びた外見に反して、未成熟で痛々しい可憐さを併せ持つ二面性のある少女でした。やがて工業大学に進んだ彼女の個性的な美貌と美しい脚は人々の注目を集め、モデルデューを果たします。



1930年代のハリウッドで名声を得ていた大女優・マレーネ・デードリッヒを思わせる高い頬骨とこけた頬・ミステリアスな暗い瞳は人々を惹き付け、瞬く間に売れっ子モデルとなります。



モデル時代は、“ぱっちりした大きな瞳”のステレオタイプの美女が好みのエージェントから「そんな目つきでは商売にならないから整形をしろ」と薦められることもあったようです。



しかし、その唯一無二の魔力を秘めた瞳は後に映画女優となる彼女の最大の武器になります。1965年には『ナック』という青春コメディで映画デビューを果たします。



これといった役名の無い“ちょっとカワイイその他大勢”というエキストラ的出演ではありましたが、“その他”の中にはあのジェーン・バーキンとジャクリーン・ビセットも混ざっていたと言われており、偶然とはいえキャスティング担当者の飛びぬけたセンスに脱帽してしまいます。



■ ルキノ・ヴィスコンティを魅了した眼差し

1966年『ジョージ・ガール』という映画の中で、子供を産んでも育てようとしないドライな変わり者娘の役をクールに演じ、イギリス「ルック」誌の目にとまり次世代スターとして取り上げられます。



そんな彼女の仄暗い輝きを秘めた瞳に目をつけたのが巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督です。ナチスが台頭した1930年代前半の製鉄一族の凋落を描いた『地獄に堕ちた勇者ども』の登場人物の1人、強制収容所で悶死する薄幸の美女役として白羽の矢が立ちます。



当時23歳だったシャーロットは、30歳を過ぎた2人の子持ちを演じることに不安を覚えますが、ヴィスコンティ監督は「君のその目。その目があれば大丈夫だよ。何でも知り尽くした哀しい目だ」と、彼女の最大の特徴である眼差しを絶賛します。



『地獄に堕ちた勇者ども』の世界的大ヒットを受けて、シャーロットはイギリス・イタリアのみならず世界中から注目の的となります。同時に、美男美女揃いの“巨匠ヴィスコンティのお気に入りの俳優”のひとりとなりました。



■ スキャンダルで何故か飛躍してしまう個性…

1971年、25歳のシャーロットは三角関係のスキャンダルで世間を騒がせます。“男性2人とロンドンで同棲している”という不道徳にも思える報道を否定しなかったことが意外にも彼女の魔性のイメージとマッチして、潰されるどころか仕事の依頼が殺到してしまいます。



「私の愛情を1人だけに捧げるなんてできないわ」と語り、同棲していた2人の男性…モデルのランドル・ローレンスへの愛情も肯定しながらパブリシストのブライアン・サウルコムと結婚をしたシャーロットは、その容姿に見合った魔性属性を持つ女として人気が急上昇します。



後に彼女は「2人と同棲していたわけではなく、1人はただの友人でルームメイトだった」、「2人とも愛していると言ったのは、1人は兄弟みたいに、とわざわざ断る必要はなかったからだ」と語っています。



真相はさておき、“わざわざ釈明するのがめんどうだから認めちゃった”といった気だるげな言動からも、魔性の名に相応しいつかみどころの無さを感じます。



■ 「愛の嵐」が世間に与えた衝撃とは

冒頭でもご紹介した1974年の映画『愛の嵐』は、その倒錯的な内容と映像の美しさで全世界にセンセーショナルを呼び起こしました。



収容所で生き延びるためにナチスの高官の性の奴隷となった少女が戦後有名なオペラ指揮者の妻となり、ナチの残党として怯えて暮らすかつての高官と再会、立場が逆転した2人は再び愛欲の地獄に堕ちていく……。という陰惨なストーリーと激しい性描写、そして裸にサスペンダーという斬新なビジュアルは40年たった今でも色あせず語り次がれる衝撃作です。



当時のシャーロットは立派な成人ではありましたが、折れそうに華奢な痛ましいヌードは劇中の年齢・14歳そのものに見え、イタリアでは公開2週間で上映禁止になります。これに対し、著名なアーティスト達が連名で抗議したことによりかえって世界中の視線が集まり大ヒットを記録します。



妖気漂う魔性の女として映画界に君臨し始めたシャーロットですが、私生活ではブライアン・サウルコムとの間に男の子を設けており穏やかな母親でもありました。少女時代に培われた二面性は仕事と私生活を分けるために役立っていたようで、シャーロット本人も「私はきっと二重人格ね」と語っています。



■ 知的な母親の顔とSEXYな女優の顔

ニューズウィーク誌には「奇妙な女王」というタイトルで特集され、ハイファッション誌では表紙を飾り、私生活では一児の母。充実した生活の中で、ハードボイルド小説の映画化『さらば愛しき人よ』での悪女役や、パニック映画『オルカ』での知的な海洋学者役など当たり役をコンスタントにこなし着々とキャリアを積み上げます。



『オルカ』の撮影終了後、フランスの音楽家ジャン・ミッシェル・ジャールと恋に落ちたシャーロットは離婚を決意します。『アラビアのロレンス』などの映画音楽で知られる作曲家モーリス・ジャールの息子で、繊細な美貌を持つシンセサイザー奏者・ジャン・ミッシェルとの間に子供を身ごもり、1977年には男児が誕生します。



またもや恋の噂が彼女の魔性に箔を付け、今まで以上に出演依頼が舞い込みますが、夫と子供に囲まれた暮らしに焦点を絞ったシャーロットは映画出演を控え、変わりに趣味として続けていたカメラマンとしてのスキルを磨き、プロ並みといわれるほど腕を上げます。



■ 川端康成原作映画出演、日本文化との出会い

1985年には川端康成の小説をジョイ・フルーリー監督が映画化した『美しさと哀しみと』にも出演し、古い尼僧院でひっそりと暮らす彫刻家役を好演します。日本ではかつて、八千草薫と加賀まりこで映画化されたこともある名作のフランス映画版です。

加賀まりこが、彫刻家の弟子のレズビアン少女を演じた日本版でのエピソードは   「【悶絶】日本映画史上最強のSEXYロリータ?過去の加賀まりこが妖精すぎた」 でもご覧になれます。



元来、切れ長の瞳と寂しげな佇まいが東洋的と言われてきたシャーロットはこの映画がきっかけで日本文化に強く興味を持ち、度々お忍びで来日したとも言われています。



■ 衰えぬ魅力と近年の活動

90年代にはさほど目立った活動がありませんでしたが、2001年にはフランスの鬼才フランソワ・オゾン監督の「まぼろし」、2003年には同じくオゾン監督の「スイミング・プール」と立て続けに話題作に主演し、その円熟した凄みのある演技で再び注目を集めます。



オゾン監督の新しいミューズでもあるリュディヴィーヌ・サニエを初めとする様々な若手と共演し素晴らしい化学反応を見せてきたシャーロットですが、かつての彼女を思わせる退廃美を持つ若手女優と言えば「007 カジノ・ロワイヤル」で有名なエヴァ・グリーンではないでしょうか? 重い瞼の下で妖しく光る緑の瞳とエレガントなエロスはふとした瞬間にシャーロットを髣髴させ、共演する姿を是非見てみたいと思ってしまいます。



いかがでしたか? 「近代芸能史を彩る美女たちの全盛期を写真と共にご紹介する」というコンセプトのコラムということもあり、今までに取り上げた女性たちの年を重ねた姿は掲載しないことが多かったのですが、シャーロットに関しては例外的に是非今の姿も見ていただきたいと思ってしまいます。



一部のハリウッド女優のように“異常に若く見える”ということはまったくなく、きわめて年相応な姿です。にもかかわらず影のある静謐な佇まいと神秘的な瞳は相変わらず完璧なまでにスタイリッシュで見る人を惹き付けます。



繊細な芸術作品のような美脚やボディはやはり『愛の嵐』の頃…30歳前後が全盛ではありますが、そのイメージと瞳の魔力は驚くほど不変です。ジェーン・バーキンなどにもあてはまることですが、若い頃の美貌に甘さが少なく“中性的”な要素が濃い女優程、年を経てもイメージの変化は少ないように思えます。



フルーツなどでも糖度の高い部分から変質してゆきますが“愛らしい甘さ”の濃度が高いほどイメージの変化が大きいのかもしれませんね。もちろん一瞬の輝きだからこそ鮮烈で貴重ではありますが、無機質で無性別な魅力は年月を経ても個人の中にとどまり続ける傾向がありそうです。



10代の頃から何千年も生きた魔女のような瞳を持ち、巨匠ヴィスコンティに「彼女は悲劇的で美しい目をしている」と称えられた美少女は、若い頃のイメージを少しも損なわない洗練された魅力で今まさに魔性の女優として全盛期を迎えているようにすら思えます。

(星野小春)



【参考】
※ シャーロット・ランプリング―子鹿の肢体をもつ運命の女(ファム・ファタル) (シネアルバム)

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