映画「真珠の耳飾りの少女」の中の見逃せないポイント

2019/12/12 12:00 Tak(タケ) Tak(タケ)

【映画「真珠の耳飾りの少女」はひとつの物語】

その謎にひとつの答えを示したのがこの映画「真珠の耳飾りの少女」です。原作者のトレーシー・シュヴァリエは、フェルメールの家に住み込みで働いていた女中が「真珠の耳飾りの少女」のモデルになったと大胆な想像を試みたのです。



フェルメール(コリン・ファース)の家に奉公に出されたグリート(スカーレット・ヨハンソン)はいつの間にか画家のアトリエの掃除を任されることになります。

それは決して偶然でなく必然であったのです。グリートには構図や色の配置など絵画に関する天賦の才能があったのです。それはこの映画の冒頭でグリートが料理をしている場面で見事に暗示されています。

「真珠の耳飾りの少女」を美術館、画集、web等で観る者は、それぞれ違った物語を紡ぎ出し自分なりのイメージを少女に抱いているはずです。この映画は、そうした何万通りも想像される解釈のうちのひとつに過ぎないのだと割り切って観ることが肝心です。

自分自身の解釈と対比させ愉しんで観る心の余裕が必要な映画なのです。あくまでも物語のひとつに過ぎないのですから。



【映画の中の見逃せないポイント】

フェルメールは遠近の正しい透視画を描く際にカメラ・オブスクラを用いたのではないかと推察されています。巨大なピンホールカメラのようなかなり大仕掛けの機材がフェルメールのアトリエに登場します。

フェルメールとグリートが二人でカメラ・オブスクラに写った「絵」を覗くシーンはこの映画の前半の大きな見所でもあります。



フェルメール一家は11人もの子どもを抱え決して余裕のある家計ではありませんでした。それにも関わらず画家は当時、金と同じ価値を持つ高価な絵具ラピスラズリを使い青色を表現しました。数百年の時が経過した現在でもフェルメール作品が輝きを放ち続けているのはその為でもあります。

鉱石(宝石)であるラピスラズリを一体どのようにして絵具にしていたのか、中々説明してもピンとこないものですが、この映画の中ではそれをグリートが「実演」してくれています。

因みにフェルメール作品ではこの青色と黄色の二色を隣り合わせに配置させ補色の効果により、お互いの色を引き立てることに成功しています。



まるで絵に描かれているかのように映画の中で、グリートが青色、その隣りではフェルメールが黄色の絵具を準備している場面があるのです。何気ないシーンですが絵画との関連性を強く意識した場面と言えるでしょう。

台詞も少なく全体的に寡黙な映画です。登場人物のこころの葛藤や遣り取りが丁寧に描かれています。それはまるで“動くフェルメール作品”のようでもあります。

フェルメールの故郷デルフト

絵画も映画も、それぞれ一度観ただけは分からなかった何かがきっと顕れて来るはずです。是非あらためて「真珠の耳飾りの少女」をご覧になってみて下さい。

(CS外国映画専門チャンネルザ・シネマ「真珠の耳飾りの少女」特設ページの為に2012年に書いた原稿を加筆訂正しました。


『フェルメール会議』青い日記帳 (監修)

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