不在の中の存在を見る 塩田千春展:魂がふるえる

2019/6/24 20:35 虹

◆旅は終わり、また始まる

展覧会の終わりを締めくくるのは、夥しい数のスーツケースが浮遊する空間。 その数およそ430個。生きているように揺らめくこれらは、作家がベルリンの蚤の市で見つけた中古のスーツケースです。以前はどのような人が持っていたのでしょうか? ここでも「不在の中の存在」が見えてきます。

▲《集積―目的地を求めて》 会場風景


船に乗って出航した旅が、また新たな旅へと続くよう。
《集積―目的地を求めて》と題されたこの作品の先には、塩田が子どもたちに「魂ってなに?」「魂ってどこ?」と問いかけた映像作品が展示されています。

▲《魂について》展示風景


闘病中、身体の部位が摘出され、抗がん剤治療を受けるなか、魂が置き去りにされていると感じた塩田。展覧会の準備期間中、生きるのが精一杯だった彼女は、「魂ってどこ?」を自問し続けました。

▲《外在化された身体》展示風景

《外在化された身体》をはじめ、塩田の新作には身体のパーツが使われた作品が現れるようになります。
「繋がる」ものだった糸に「繋ぎとめておく」役割が加わり、身体が失われてしまったあとの「魂のゆくえ」を繰り返し模索する。それらの作品に対峙すると、塩田の心情が痛いほどに伝わってきます。
こうした作家の内なる声をダイレクトに受け取る展示は時として体力を使いますが、作家と同じ時代に生き、その生きた声を現在進行形のものとして体験できることこそ、現代美術の醍醐味なのではないでしょうか。


私の目的地はどこなのだろう?
私の魂はどこにあるのだろう?
塩田千春の世界を振り返りながら、静かに考えたくなる展覧会。

あなたの魂は、どこにありますか?


塩田千春展:魂がふるえる
会期 ~ 10月27日(日) 会期中無休
時間 10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで。ただし10⽉22⽇(⽕)は22:00まで
※いずれも最終入館は閉館の30分前まで
会場 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

★展覧会期間中、多彩な関連プログラムが開催されます!
森美術館ホームページ




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