不在の中の存在を見る 塩田千春展:魂がふるえる

2019/6/24 20:35 虹

六本木の森美術館にて、ついに待望の「塩田千春展:魂がふるえる」がスタートしました。
グローバルな活躍を見せる現代美術家・塩田千春。本展は、彼女の代表作や舞台美術の仕事、初期から最新作までといった25年の活動を網羅的に紹介する、過去最大の個展です。


▲ 《不確かな旅》 会場風景


GINZA SIXの吹き抜け空間にて、6艘の船が天へと進んでいくように見えるインスタレーションをご覧になった方も多いのではないでしょうか?
本展ではこのような広い空間を活かした、ダイナミックな没入型インスタレーションを中心に、圧倒的な作品群を鑑賞しながら、「魂」「存在」など、私たちにとって普遍的な概念と向き合うことができるようになっています。

▲ GINZA SIX 吹き抜け空間




◆塩田千春とは


▲ 塩田千春 会場にて

1972年に大阪に生まれた塩田は、京都精華大学にて絵画を学びました。しかし在学中、絵画での表現に限界を感じ、交換留学生としてオーストラリア国立大学へ渡ります。
そのときに見た「絵の中に自分が入っている夢」をきっかけとして、自らの身体を使ったパフォーマンスの試みを開始。作家の代表的な作風ともいえる「空間に絵を描くように糸を張った作品」も、この時期制作されています。

▲左より2枚目から《絵になること》 1994年 オーストラリア国立大学美術学部在籍時のパフォーマンス:塩田にとって「洗練された美術による美術作品ではなく、全身を投入した身体表現による最初の作品」となる。 左手前は塩田が在学中最後に制作した絵画作品。

当時海外で活躍していた塩田が本格的に日本で紹介されたのは、2001年に開かれた第1回横浜トリエンナーレでした。以降国内でも精力的に活動、「展覧会が好きでそれだけが生きがい」と語るだけあって、これまでにおよそ300本もの展覧会に参加しています。

▲《皮膚からの記憶》 2001年 横浜トリエンナーレ:衣服を第二の皮膚と考える塩田の作品には、しばしばドレスが登場する。

そんな塩田に本展の企画が寄せられたのは約2年前。展覧会が生きがいである彼女にとって、大規模な個展の開催はどれほど嬉しかったことでしょう。
しかし奇しくも本展の開催が決定した翌日、彼女に癌の再発が告げられます。
この先、どうなってしまうのか──。
死と寄り添いながら治療と並行して制作を続ける中で、塩田の中に去来したあらゆる思いや感覚。本展の副題にある「魂がふるえる」は、まさに病と向き合い、生と死を濃密に意識した彼女の、言葉にならない魂の機微が顕在化したものと言えるでしょう。

▲《小さな記憶をつなげて》 会場風景


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