【衝撃の破壊力】「へそまがり日本美術」展を見逃すな!

2019/3/21 09:40 虹

◆お殿様の絵の謎

冒頭でも紹介しましたが、おそらく本展で一番注目を集めているのが徳川家光《兎図》ではないでしょうか。家光公の作品はこのほかにも2点展示されており、いずれもこちらの心臓をわし掴みにする愛らしさです。


▲徳川家光《木兎図》 紙本墨画 1幅 江戸時代前期(17世紀後半) 養源寺蔵(東京都文京区)

家光のそばには狩野探幽など幕府お抱えの一流絵師がおりました。よって狩野派のお手本どおりの絵も描いていたそうですが、ではなぜこのような画風の作品を遺したのでしょう? 展覧会ではその謎が投げかけられています。
もしかしたら家光は、お手本とはまた別に自分だけのオリジナルの絵柄も大切にしていたのかもしれません。ちなみに所蔵先の養源寺は、彼の乳母であった春日局の子、稲葉正勝が創建したお寺です。

続いてこちら。さくらももこの絵と見紛うばかりのこの鳥は、なんと鳳凰を描いたもの。大きくゴージャスに描かれることの多い鳳凰ですが、今にも「ピヨピヨ」と鳴きそうなこの絵は愛らしさに満ちています。とはいえさすが将軍。表装の葵の御紋に圧がある……(笑)。


▲徳川家光《鳳凰図》※部分 紙本墨画 1幅 江戸時代前期(17世紀前半) 徳川記念財団蔵  展示は前期のみ


通常「鳳凰」と言えば、左側の呂健が描いたであろうと言われる《百鳥図》の鳳凰をイメージします。会場ではこうして比較して観ることができますが、はじめは「比べないであげて……」と思うものの、じっくり鑑賞するとそれぞれの良さが相乗効果で高められていくのを楽しむことができます。


▲左:伝 呂健《百鳥図》 絹本着色 1幅 明時代(16世紀) 個人蔵 


また、徳川家からは家光の子である家綱の作品も。大きく余白を残して描くのは父親譲りなのでしょうか。こちらを威嚇するかのような鋭い瞳、雛の愛らしさ、下手だと評してしまうには惜しいまっすぐな良さがあります。
殿様絵師には増山雪斎など玄人はだしの人もいますが、今回のラインアップは皆のびのび描いている人ばかり。パッと見は笑ってしまうけれど、じっくり観れば、なかなかどうして飽きることない魅力にあふれています。


▲左:徳川家綱《親鶏雛図》※部分 紙本墨画淡彩 1幅 江戸時代前期(17世紀後半) 徳川記念財団蔵 



◆「へそ展」の楽しさは作品だけじゃない!

府中市美術館は地域に根付いた美術館だけあって、大人も子どもも大いに楽しめる展覧会づくりに力を入れています。 難しい言葉を極力控えたキャプションはユーモアいっぱい、会場内にはためになる知識もいっぱいです。

子ども向けの無料ワークシートや、展覧会のおみやげとして掛け軸風のしおりが作れるサービスも。



特設サイトでは、展示作品を使ったミニ屏風などのペーパークラフトがダウンロードできてしまうなど、作品を鑑賞する以外にも楽しめる仕掛けがたくさんあります。





◆桜並木を通ってへそまがりに会いに行こう



府中市美術館は広大な「府中の森公園」の中に建っています。
駅から公園までは少し距離があるためバスが便利ですが、見事な桜並木があるので、これからの季節はのんびり歩いていくのも良いかもしれません。また、最寄り駅である府中駅、東府中駅どちらの駅前にもシェアサイクルが設置されていますので、美術館からほど近い府中市生涯学習センター前(シェアサイクルのポート)まで自転車を使うのもおすすめです(※利用には事前登録が必要です)。

風も和らいでほがらかな季節。愛すべきへそまがりたちに会い、大いに笑って日本美術をもっともっと好きになってしまいましょう!

へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで
会場 府中市美術館 2F 企画展示室
会期 2019年3月16日(土)~5月12日(日)
   前期:~4月14日(日)
   後期:4月16日(火)~5月12日(日)
電話 03(5777)8600 ハローダイヤル
時間 10:00 〜 17:00(入場は16:30まで)
特設サイト
※注 図録やグッズを購入できる特設ショップは現金のみ対応となります。

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