「モニターを超える世界が双眼鏡にはある」キヤノンに聞いた!コンサートにぴったりな「双眼鏡」を徹底解説〜後編〜

2017/12/24 13:32 柚月裕実 柚月裕実



■「よくみえる」とはどういう状態?実機を試せるキヤノンのショールームも



ユーザーの声を大切にされているキヤノンさん。その姿勢はインタビューの端々にも表れていて、胸を打たれました。


家塚:毎日使うものではないので、そもそもどうやってセットするかがわからない方も多いのではないかと思います。「まず目幅を合わせ、右と左の視力の差を合わせる」という基本があるんです。

ーーいつも「その時見えればいい」という感じで、説明書も読まずに手探りで調節していましたが、セッティングにも基本があるのですね。

家塚:双眼鏡をちゃんと合わせると全く見え方が違います。よくマンガで、双眼鏡を覗くと視野が8の字を横にした形になっていることがありますよね。目幅が合ってない場合こうなります。目幅を正しく合わせると視野は丸くみえるんです。
丸く見えた状態で、まずは左目だけでピントを合わせます。左右の視力が同じであればいいのですが、裸眼では左右に差があることが多いので、次に右目も調整していくと、ものすごく気持ちいのいい視界が出現します。
メガネの方はアイカップを折り返して使ってください。目の網膜の位置を前提としてアイカップが作られているので、メガネがある分、距離が離れてしまいます。

ーー借りた双眼鏡で自分のまつげが見えて違和感があったのは調節不足だったのか……。

家塚:ちなみに、視野のセッティング方法はキヤノンに限らず他社さんも同様で、50年以上前から変わっていません。すぐに買い換えましょうとは申しませんので、まずはご自分の双眼鏡を一番見える状態で見て、その上でこの(キヤノンの機種)どれかを試していただくと違いがわかると思います。
双眼鏡を実際に見たときに「気持ちがいい」というのは、ひとつは細かい部分がどれだけシャープに映っているかということ。もうひとつはコントラスト。黒いところがちゃんと黒く見えて、赤いものがちゃんと赤、青が青でみえること。コントラストがないとなんとなくガラス越しに見ているようなふわーっとした感じになります。ガラス越しに見ているようだと興奮が伝わってこないです。

家塚:ご利用いただいた方の書き込みを読んでいると、キヤノンの防振双眼鏡を使った時に「まるでBlu-ray画質のようにきれいに見えた」と投稿していただき、おそらく手ブレ補正で像が止まったというのもありますが、見えの部分でも高性能レンズを使っているからこそクリアに見えたことが、そうした表現につながっているのかなと思います。

家塚:レンズに使われるガラスの種類は200種類ほどあります。その中から双眼鏡にふさわしいレンズを選び抜き、双眼鏡の中には十数枚、プリズムも含めて入っています。それぞれのガラス材料を使ってそれぞれのレンズに反射防止のためのコーティグ処理をしています。どのレンズ面にどの種類のコーティングをするか、最適な方法を検討しています。
例えば、強い光が入ってきたときに、あまり手をかけない設計をしているとふわっと見えてしまう。ガラス越しに見ているのと同じ状態が双眼鏡にも出てしまうのですが、カメラを専門でやっているので、どういう時にフレアがでやすいか、何をすればそれが抑えられるかがわかっています。それらのノウハウを双眼鏡に応用しています。

ーー最近は特にレーザーなどの光を使った演出が多く、コントラストがあってクリアにみえるのはありがたいです。

家塚:いい双眼鏡で観ると黒の中にもさらに深い黒が見えます、白の中にも陰影が見えるとか、そういう細部まで見えると違いますよね。昔のテレビをみているとべたっとた感じに見えますが、いいモニターで観ると立体感がある。違いは一目瞭然、モニターを超える世界が双眼鏡にはあります

ーーモニターを超える世界がある、といわれるとぐっときますね。

家塚:4Kモニターで映像を見るとおおっとなりますよね、臨場感、クリアな視界が醸し出す感動がよい双眼鏡で見たときにはあると思います。

ーー諦めてモニターを見ちゃうことが多いのですが、それはDVDでもいいですね。

家塚:まずは販売店さんやキヤノンのショールームで実物を見ていただいたほうが良いかもしれません。東京ですと銀座、品川のショールームに置いてありますので、ぜひ覗いてみてください。調節の仕方もスタッフが教えてくれます。ちなみにショールームは名古屋、大阪にもあります。
ーー「ドームあるところにキヤノンあり」ですね。
家塚:コンサートの前日にぜひショールームにお越しください。


■双眼鏡のお手入れ方法

コンサート当日はバッチリメイクで参戦という人も多いはず。しかしレンズが汚れてしまうのも事実。細かいラメがついてしまった場合、どのようにケアしたらよいのでしょうか。

ーー双眼鏡のお手入れで気をつけることはありますか?

家塚:まずはカメラのブロワーでシュシュっと払っていただくのが理想ですが、ない場合は柔らかい布でそっとほこりや砂粒を払い、マイクロファイバーの眼鏡拭きなどやわらかい布で優しく拭いてください。知らないうちにレンズが汚れていることはあるものです。、汚れに光が乱反射すると、映像がクリアに見えなくなってしまいます。

島田:中心から外側へ円を描くようにして拭いていきます。

家塚:レンズのクリーニング液が市販されていますが、ものによってはレンズのコーティングを剥がしてしまうものもあったようなので、私どもとしては薬品なしを推奨しております。汚れがはげしいときは、先ほどの眼鏡拭きの一部を水で濡らしてよく絞って拭き、そのあとに乾いたところで拭きあげる。ティッシュペーパーはコーティングを傷をつけてしまうこともあるので避けたほうがいいです。肌と同じ扱いですね。

島田:また、電池を入れて使う商品ですので、長期間使わないならば電池を抜いて保管してください。
家塚:電池も信頼できるメーカーのものですと持ちが違います。万一のために予備電池もあると安心です。
ーーありがとうございます!とても勉強になりました。最後に、普段から双眼鏡ユーザーさんのTwitterやブログをよくご覧になっているということでしたので、みなさんにメッセージをお願いします。

島田:光GENJIさんをみてローラースケートを買っていた世代で、KinKi Kidsさんとか嵐さんがちょうど同世代でドラマなどよく見ていました(笑)
コンサートを楽しむことを含めてぜひ双眼鏡を愛用して使い倒していただきたいです。寄せていただいた声、ご要望など貴重な意見として参考にさせていただいているので、これからも防振双眼鏡の良かったところ、直してほしいところを教えて頂けると嬉しいです。

家塚:私はたのきんさんをよくテレビで見ていました(笑)コンサートは毎回思った通りに行けないですよね。せっかく限られた時間、機会をより価値のあるものに、より濃密なものにする。好きな自担の方を独占してその世界に浸ることを考えると、双眼鏡というのはそれを助ける役割があると思います。


ー編集後記ー
取材にうかがうと、広報部の新野さんが双眼鏡を持って出迎えてくれました。「よかったら試してみてください」と防振双眼鏡を試してみました。緑に囲まれたキヤノン本社、エントランスからのぞいてみると、緑一色に見えていた植え込みも、濃淡がくっきりはっきりと見える。裸眼よりも見えていることに衝撃を受けました。「ちゃんとみえる」とはこのことか……。双眼鏡を通してもっといろんなものが見たくなりました。

キヤノンの双眼鏡には10年以上販売している機種もあるそうで、言い換えれば陳腐化しないということになります。10年使うと考えたとして、スマホやPCよりももっと寿命が長いことになります。
用途はコンサートに限らず、海や山へでかけるときに携帯すれば違った景色が楽しめます。家塚さんのおすすめは沖縄の夜空。「七色に輝く小さな星がたくさん見えるんです」と教えてくれました。いろんな感動が味わえてこの価格はお手頃かも。

まずは手持ちの双眼鏡の視野をしっかりひとつに合わせた上で、防振双眼鏡との違いを見比べてみるのが良さそうです。


(取材・文/柚月裕実)


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