ときめきメルヘン三部作完結編…「ファンシー絵みやげ」で振り返るメルヘンイラストカード(1/3)
お久しぶりです。平成元年あたりのカルチャーを発掘調査している山下メロと申します。80年代とも90年代とも違うその時代を、平成レトロとして愛好しております。
当連載では、80年代から平成初期に流行した「ファンシー絵みやげ」から、当時の流行を紹介していきたいと思います。「ファンシー絵みやげ」とは80年代からバブル経済期~崩壊を挟んで90年代まで、日本の観光地で若者向けに売られていた、かわいいイラストが印刷された雑貨みやげのことです。
「ファンシー絵みやげ」については連載第一回をご覧ください。
■ ファンシー絵カードとは?
前回の連載では、メルヘンタッチのファンシー絵はがきについて、前々回の連載ではメルヘンタッチのファンシー絵しおりについて語りましたが、今回は最後にその仲間「ファンシー絵カード」とともに全体的に振り返っていきたいと思います。
↑こちらがファンシー絵カード。表紙は縦長になっている。
↑中のカードは横長であるため、フタのある裏側は横のイラストになっている。
これまで紹介してきたファンシー絵しおりセットやファンシー絵はがきセットは、もともと観光地の土産店で売られていたものから進化しました。それは、周辺の景勝地などの観光スポットや祭りなどの行事の写真を使った絵はがきやしおりをセットにして販売していたものです。その写真をメルヘンタッチのイラストに置き換えたのがファンシー絵はがきやファンシー絵しおりです。
↑こちらがファンシー絵はがきのセット。このように絵はがきと一緒にプチしおり3枚がセットになっているものも多い。イラストは高徳瑞女先生。
↑ファンシー絵しおりだけのセット。イラストは大門多美先生。
これらとファンシー絵カードの決定的な違いは、大きさが小さくてイラストの数が多いことです。ファンシー絵はがきは大体6枚+しおり3枚、ファンシー絵しおりも6枚で1組となっています。
↑山口県は秋吉台にある秋芳洞のイラストカードセット。
それに対しファンシー絵カードはなんと20枚ほど入っているのです。イラストを描いている人にとっても、特定の観光地で20種類にもおよぶイラストを作るのは大変でしょう。
↑三重県は伊勢志摩のイラストカードセット。
これらを見ても分かる通り、ファンシー絵はがきやファンシー絵しおりには採用されないようなマイナーな観光スポットまで網羅している……いや、網羅せざるを得ないというのが特徴ですね。
しかしここで疑問があります。ファンシー絵はがきは手紙をしたためて郵送できます。ファンシー絵しおりは読んでいる本に挟むことができます。ではファンシー絵カードは一体何に使うのでしょうか。裏を見てみましょう。
↑内側にもイラストのパターンが印刷されていて凝っている。
メッセージコーナーと、プロフィールを記入する場所があり「ミニミニ名刺」という文字が書かれています。誰かにメッセージを書いて渡すメッセージカードや名刺のような用途で使うものだったようですね。ちなみにファンシー絵しおりの裏面も、MEMOが書けるように罫線が引かれていたりします。
このイラストカードには作者名が書かれておらず、サインも見当たりません。ただメーカー名についてはフタの下にロゴマークが配置されているので確認できました。
↑すべて同じ仕様とイラストレーターなのだがメーカーはバラバラである。左からダイコク、SEIKYOKUDO、MORIKIN SHOTEN。
では一体このイラストレーターは誰なのでしょうか。さらにこのイラストレーターの仕事を追ってみたいと思います。