学芸会、東京最強?あなたには「BELLRING少女ハート」がどう見える?

2016/5/11 11:00 小池啓介 小池啓介




去る4月30日週末の夜、東京ドームシティホールに足を運んだオタクたちの記憶には、「東京最強」の文字が強烈に刻み込まれたのではないかと思います。

ステージには、スクリーンを頂上に掲げる岩山と廃墟のようなセットが鎮座。飛び交うレーザー、吹き上がる炎、舞い散る羽――ありったけの特殊効果で満たされた会場に、すさまじく重いビートと色とりどりの音が鳴り響く。

ホールの広がりを十全に活かしきった演出に酔いしれるオタク。そんな空間のなかを、いつもながらの調子のはずれた歌声が響き渡っていました。

38曲におよぶ楽曲を3時間ほぼノンストップで歌い、踊り続けたのは、BELLRING少女ハート。たった5人の少女たちです。


■学芸会アイドル?

BELLRING少女ハート(ベルリンしょうじょハート)略して「ベルハー」は、朝倉みずほ、柳沢あやの、カイ、甘楽、仮眠玲菜の5人組。

2012年に結成され、オタク泣かせの数多くのメンバーチェンジを経て(もえち……)、現在の体制になっています。ちなみに新メンバー募集中。

彼女たちのトレードマークは、黒いセーラー服と、その腕にくっついた黒い羽。歌う曲は、サイケデリック・ロックからプログレなどの影響を感じさせるマニアックなものが多く、その外見や自由極まりないステージ上の行動とあいまって、アイドル界でもひときわ異彩を放つ存在です。「まるでカラス」なんて呼ばれるアイドルは他にいません。

また、ベルハーは、インディーズ系の女性アイドルグループのなかでも比較的、地上波のテレビでとりあげられる機会があった人たちです。ただし、その主旨のほとんどが、“アイドルのレベルが低い”一例として……。いわく「学芸会」のようだというわけですね。

本当に失礼だな、と憤りをおぼえたものですが、とくに初期のパフォーマンスを見ると、好意的であるはずのこちらでさえも若干、むべなるかなという思いがわかなくもない。

ベルハーの楽曲をはじめて聴く人のほとんどは、その歌声に衝撃を受けると想像できます。率直にいえば“下手”に聴こえるからです。メディアが軽率に扱いやすい負の要素ですが、果たしてそれは単なるマイナスなのでしょうか?

ここで、最新アルバム『BEYOND』(傑作を超える傑作)より「すなっちゃん・なっぽー」を。堂に入った音程のはずれっぷりです。でも、サウンドはめちゃくちゃ格好良くありませんか? そして歌声も次第に体に沁み込んで……来ませんかね?





■最凶の共犯関係

“歌が下手”に聴こえる――歌手として致命的なはずの問題すら個性として受け入れるのが、オタクです(みんなじゃないけど)。

その習性に対して、ひたすら実験的な音楽と衝撃的なパフォーマンスを投げ続けてきたのが、BELLRING少女ハートにほかなりません。オタクは暴投が大好物。

でも、実はそれはただの悪球ではない。そこに散りばめられた喜び、哀しみなどのあらゆる感情のかけらを、彼らは自らのものとして受け取っているのだと思います。だから、結びつきは強い。

メンバー、オタク、スタッフ、そして音楽――関わる全てが異様なまでに強固な共犯関係にあるのがベルハーではないかというのが、これまでの僕のこのグループに対するイメージです。


たとえば最近でいうなら、今年の3月末をもって閉鎖されたスタジオアルタで、閉鎖直前に行われたイベント(電撃ネットワークのギュウゾウが主催する「ギュウ農フェス~スタジオアルタ電撃ジャック!」)での出来事。

スタジオ内でのライブのため、ジャンプ、モッシュ、ダイブなどの行為が禁止されるなか、ベルハーが登場するや、フロアの人たちが誰ともなしに座り出したのです。

体育座り、あぐらなど思い思いの姿勢でステージを見上げるオタク。他のグループのファンも追随していき、とりあえず僕も座りました。

要するに、立ち上げることが、すなわち推しジャンプ(好きなメンバーがボーカルをとっているさいにジャンプをする行為)なわけですね。円を描いて走り回るサークルの代わりに、中腰で無理矢理歩き回るというシュールな光景も忘れられません。

禁止事項を逆手にとって、楽しみの場を生み出すファン。なんだこいつらという困惑した表情を浮かべつつも、それを受け入れて全力のパフォーマンスで返すベルハー。その共犯関係を強固なものにするのは、もちろん音楽の力です。

続いては、ライブではこの20倍くらい格好良い「GIGABITE」。今よりメンバーが多いのは、悲しいけれどご愛敬。新メンバー募集中。





■東京最強?

活動期間も4年におよび、現代のアイドルグループのなかでも老舗に近くなってきた感があります。 そんなベルハーですが、誰がいい出したのか、今年あたりから「東京最強」あるいは「東京最凶」“自称”するようになってきました。

これまでの活動、ライブパフォーマンスでは、オタクの力によって助けられた部分が少なからずあったかもしれませんが、このたびの東京ドームシティホールのライブでは、完全にオタクを動かす側に回ったという印象を受けました。共犯関係のなかにあって絶対的な主犯の立場に、ベルハーはなったのだと思います。いまこそ、ご新規さんいらっしゃい状態のピークですよ。

繰り返しますが、会場を支配していたのは間違いなく五人の女の子から発せられた力であり、少なくともあの夜に限れば、ベルハーは「東京最強」の幻想を大きく引き寄せていたはずです。

最後に、活動3年目にしてついに生まれた至高のアンセム「asthma(アスマ)」のライブ映像をどうぞ。東京ドームシティホールのフロアでオタクに巨大な人間の渦を作らせた、人の理性を奪う、最強のアイドルにふさわしい最凶の一曲です。





さて、ワンマンライブは3部作となっており、今回のライブは2番目にあたるもの。
東京ドームシティホール強行によってディレクターさんが借金をかかえたという話もありますが、そこはそれ。 完結となる第3弾のワンマン(開催時期未定)には、ぜひともさらに多くの人に足を運んでもらいたいものです。

(小池啓介)


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