宮崎駿のジブリ最新作『君たちはどう生きるか』で木村拓哉や菅田将暉らが声優で起用されている理由って?宮崎駿が結局伝えたかったこととは

2023/7/21 17:00 龍女 龍女

7にんのばあや
大竹しのぶ(1957年7月17日生れ)
ばあやに起用された俳優は凄すぎて、他にも竹下景子・風吹ジュン・阿川佐和子がいる。
ただし、初見で耳を済ませて判別できたのは大竹しのぶだけであった。
これは実は他の3人は、普通に台詞を喋っているように演じて、結果ばあやとなっている。
それで誰が誰だったか初見では分からなかった。
大竹しのぶだけ全く別のアプローチでばあやを演じている。
それは『となりのトトロ』で
北林谷榮(1911~2010)が演じたおばあちゃんを完コピしていたからだ。


(大竹しのぶ イラストby龍女)

竹下景子(1953年9月15日生れ)
この中で実は声優としての経験が最も豊富な俳優である。
手塚治虫原作の『火の鳥』でアニメオリジナルの『愛のコスモゾーン』(1980)とNHKで放送されたTVアニメシリーズで、火の鳥を演じている。
(角川の劇場版とOVAでは池田昌子)
ジブリ作品でも
『借りぐらしのアリエッティ』(2010)
『コクリコ坂から』(2011)
『風立ちぬ』(2013)
と3作出ているので、常連と言えるだろう。
NHKのラジオ番組『日曜名作座』で西田敏行と二人だけで出演している。
一人何役も演じているので、その為に起用されたかもしれない。


(竹下景子 イラストby龍女)


老いたペリカン
小林薫(1951年9月4日生れ)
宮崎駿監督作品は『もののけ姫』のじこ坊以来だが
『ギブリーズ episode2』(2002)、『ゲド戦記』(2006)にも出演している。
美術ファンの筆者にとってはTV東京の美術番組
『美の巨人たち』のナレーターを20年間続けた声の持ち主なので、たった1シーンの出番でも初見で声を判別できた。


(小林薫 イラストby龍女)

インコ大王
國村隼(1955年11月16日生れ)
韓国で映画賞(『哭声 コクソン』2016年)を受賞した今や国際派でもある名優である。
低く美しい声に特徴があるので、これもすぐに分かる。
インコ大王は一応これまでの宮崎作品に出てきたボスキャラである。
恐らくキャストのオファーがあったと思われる2019年頃の時点でベストの悪役俳優であろう。


(國村隼 イラストby龍女)

大叔父様
火野正平(1949年5月30日生れ)
眞人の精神世界の象徴のような本の塔の主で、狂気をはらんでいる。
それで淡々とした佇まいが妙な安心感があって、確かに火野正平にピッタリである。
最近の火野正平は主人公を静かに見守る役が多い。

若い頃の火野正平はプレイボーイとして有名だった。
筆者は、大叔父様の役柄をこう考える。
老年に達した宮崎駿。
東映動画時代から先輩でジブリの創業者の一人高畑勲(1935~2018)。
この二人を反映したキャラクターではないかと考えている。
高畑勲は女性にもてたそうだ。
筆者は高畑勲監督作品を何本か観ているが、女性描写に関しては宮崎駿に比べて非常にリアルである。
特に遺作となった『かぐや姫の物語』に至っては、細かい女性の描写を共同脚本の坂口理子に委ねているので、演出家としては高畑勲が優れている点も多い。
高畑勲は絵が描けなかったアニメ監督なので、言葉の力でアニメーターに伝えなければならない。
自分の主張だけではなく、アニメーターの言葉を聞かないと前へ進めなかったからコミュニケーション力は高かったのだろう。
人の話をじっくり聞ける人はモテるのである。


(火野正平 イラストby龍女)


次の頁では、『君たちはどう生きるか』の豪華キャストを通して描きたいものと、ジブリがアニメ専門の声優の起用を徐々に減らしていった理由を明らかにしていこう。

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