岡田将生・中井貴一主演の『ザ・トラベルナース』は『ドクターX』の2番煎じ?ドラマ内でも見られる医師と看護師あるあるとは?

2022/11/18 17:00 龍女 龍女

中園ミホは、「取材力」に定評がある。
シナリオのキャラクターの作り方においては、ベタで外連味(けれんみ)を好むがそれを支える細部においてはかなりリアルであると断言できる。
どこがリアルなのか?
細かく観ていこう。

前提として、ナース・看護師・看護士・看護婦の違いを説明しておこう。
ナースは、日本の看護師の中では自分達をさすときに使われる頻度が高い用語だ。
しかし元々は保育士や乳母をさす広義の単語で、詳しくは後でフローレンス・ナイチンゲールの説明のところで述べる。
看護師は2001年から男女問わず看護職の資格名に統一された名称である。
看護婦が元あった名称で、1968年の保健婦助産婦看護婦法改正後に、男性看護師は「看護士」と呼ばれるようになり、2000年まで男性が「看護士」女性が「看護婦」である。
つまり看護師を小説なりシナリオなり創作物に登場させる場合、この時代背景さえ知っていれば、どの時代を舞台にしたいかで「看護婦」という名称を使うことも可能になる。

フローレンス・ナイチンゲールは何故偉大なのか?
ドラマの冒頭でナレーションの遠藤憲一はフローレンス・ナイチンゲール(1820~1910)について言及している。
ドラマ内でも主人公の那須田歩(岡田将生)に対する鬼軍曹的な(第5回の最後で、鬼軍曹どころではないと判る)役割の
九鬼静(中井貴一)が度々フローレンス・ナイチンゲールの言葉を引用している。

出典元は、フローレンス・ナイチンゲールの記述をまとめた『看護覚書き』を始めとする著作集である。
筆者の母も若い頃よく読んだそうである。


(フローレンス・ナイチンゲールの肖像写真の模写 イラストby龍女)

どうして、フローレンス・ナイチンゲールが偉大なのか?
ナイチンゲールが登場する以前の看護師は二つの階層が存在していた。
階級が低い人は家政婦や乳母の一種として従事していた。
時には売春婦まがいなことをしていたので、差別の対象にもなっていた。
一方で、上流階級に属する女性が無償ボランティアとして従事する仕事の一種としてだ。
どっちにしても重労働の割には、女性が従事する職もあって社会的に低く見られていた。
上流階級(ジェントリ)出身の子女だったフローレンス・ナイチンゲールは独立した職業としての看護師を確立した近代看護の祖と言われている。
1853年から56年まで帝国時代のロシアとイギリスを始めとする欧州数カ国で戦ったクリミア戦争で、フローレンス・ナイチンゲールは有名になった。
2014年、ロシアに一方的に併合されたクリミア半島は係争地である。
『ザ・トラベルナース』の第1回に、九鬼静(中井貴一)は掃除をひたすらして「天乃総合メディカルセンター」の状況を探っているシーンがあった。
これは、クリミア戦争時にナイチンゲールがまず最初に行った改革が野戦病院を清潔にすることだった。
だが、フローレンス・ナイチンゲールが現場の看護師として活躍したのはこの時くらいだ。
実は病気のため、ベッドで過ごすことが多くなった。
看護師の社会的地位の向上のための論文提出などで、統計学や衛生学を駆使して政府にプレゼンして新しい公立病院の建設に寄与している。
前堤は長くなったが、看護師あるある(+医師)、いってみよう。


①看護部長の立ち回り方は計算ずく
ドラマに登場する病院の外科のナースのリーダーの看護部長は
愛川塔子(寺島しのぶ)である。


(寺島しのぶが演じる愛川塔子 イラストby龍女)

下の立場の看護師が何か失敗したときに上司に謝って、次はどう身の処し方をするか計算している。
第6話では、彼女のメインのエピソードになるらしいので楽しみである。

ちなみに過去のTVドラマで、筆者が思う看護部長が似合う俳優は2人いる。
柄本明の妻で佑・時生の母でもある角替和枝(1954~2018)だ。
角替和枝は共働きの俳優で、筆者から観て看護師である母(父は会社員)とよく似たせっかちな性格がにじみ出ている。
もう一人は、大島蓉子(1953年1月22日生れ)である。
独身の看護師によくいる雰囲気で、ダメ男に引っかかりそうな危うさがにじみ出ている。
2時間ドラマで悪事に荷担してしまう役を演じていた。
二人とも違うタイプだが、仕切るのが上手そうな雰囲気は共通している。

②女性の看護師は離婚率が高い
民間のデータ(HATARAKI NURSE)だが、看護師を対象に行ったアンケート調査によると、離婚率が高いと思うと回答した看護師は全体の73.6%だったそうだ。

第5回のメインのエピソード主役は、金谷吉子(安達祐実)であった。
入院してきた講談師の五反田宝山(松尾諭)と、実は元夫婦というエピソードが興味深かった。
演じている安達祐実が実際に芸人のスピードワゴンの井戸田潤と夫婦だったので、余計面白かったが、調べてみると、芸人と看護師の夫婦は有名なのが3組あった。
オードリーの若林正恭、ピン芸人のあばれる君、アキラ100%である。
更に芸人になってしまった看護師に、おかずクラブのオカリナ、天才ピアニストのますみ(上沼恵美子の物真似で有名)がいる。
看護師は必ず需要のある職業なので、収入が女性の中で安定している側面があるせいか収入の不安定な職業の男性とのカップルが発生しやすい。
その一例が芸人であり、そこをついた看護師あるあるであった。
しかし、女性の方に経済的基盤がしっかりとあるために、離婚を決断しやすい側面もある。
看護師は体が元気な内は非常に忙しい仕事なので、私生活で男性が癒されることに期待をしてはいけない。


(安達祐実演じる金谷吉子 イラストby龍女)

では、次のページは医師と看護師の関係と、医師の労働環境の問題点と、最後にこのドラマの主役である男性の看護師についても取材で得た実態を紹介していこう。

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