長澤まさみ主演『エルピス-希望、あるいは災い-』を制作するために『カルテット』のプロデューサー佐野亜裕美がTBSを辞めて関西テレビに転職した理由とは?
最後に『エルピスー希望、あるいは災いー』が関西テレビで実現できた理由を見ていこう。
①キー局ではないので、内容に忖度しなくて良い
関西テレビは、フジテレビをキー局とする関西地方のTV局である。
月曜22時のドラマ枠は以前から持っている。
筆者が覚えている1番古い番組は眞栄田郷敦の父親である千葉真一主演の『影の軍団幕末編』だ。
次からバラエティ枠に変わり『三枝の愛ラブ爆笑クリニック』、『SMAP×SMAP』、いくつかのバラエティを経て、現在はドラマ枠に戻った。
更に加えると火曜21時の枠も持っている。
そこで放送された佐野亜裕美プロデュースの『大豆田とわ子と三人の元夫』が
第59回のギャラクシー賞(放送文化に貢献した優秀な番組・作品、個人、団体)を受賞したことが大きかった。
いよいよ企画にGOサインが出たようだ。
②長澤まさみが主役を引き受けてくれた
企画を通す場合、誰が主役かどうかは重要である。
TBSで企画していた時点から2話目まで書かれており、それを長澤まさみ本人にみせて
「やりたい」と返事が来たことから、諦めずに企画を温めることが出来たそうだ。
(長澤まさみ イラストby龍女)
長澤まさみは2020年7月に公開された『MOTHERマザー』(監督・脚本は大森立嗣。共同脚本は港岳彦)で実在の事件を元に、殺人事件の犯人の少年の母親を演じた。
強烈な毒親であった。
日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を獲得しているので、年月を経てやりやすくなったと思われる。
③政権が変わった
安倍政権下では放送局が自主規制してしまう忖度が横行した。
総務大臣は放送局を管轄する。
当時の大臣の高市早苗が、もし政府に批判的な放送局があった場合、許可をしないと思わせる発言をしたことからも、間接的に圧力をかけていた。
ところが、その高市早苗の選挙区の奈良で2022年7月8日に安倍晋三元首相が暗殺され、影響力が急激に弱まった。
偶然かもしれないが、
「安倍晋三の死がパンドラの箱を開けた」(ジャーナリスト有田芳生の発言)
ようである。
ギリシャ神話で、神から火を盗んだプロメテウスに怒ったゼウスが禍をもたらすために送り込まれた女性がパンドラである。
パンドラは箱を持って、プロメテウスの弟のエピメテウスと結婚した。
エピメテウスは、パンドラとイチャイチャしているときに、箱を開けてしまった。
そこから様々な災いの元が放出したが、「エルピス(一般に希望という意味で捉えられている)」だけが箱に残った。
ドラマのタイトルはエルピスの意味も含んだ言葉を示している。
では、どうしてこのドラマを作りたいと考えたのだろうか?
『カーネーション』を好きなドラマの一つに挙げるくらい、佐野亜裕美は渡辺あやと一緒に仕事がしたかったそうだ。
当初はラブコメでもしようかと思っていたが、話し込んでいく内に政治に対する不満の方で話が盛り上がってしまい、社会派の方向へ路線変更していったそうだ。
しかし、企画が立ち上がった時機が悪かったのは前述の通りである。
しかしこれはあくまでもドラマである。
どんなにシリアスな内容でも、フィクションという形だからこそ表現できるものがある。
ドラマに登場する神奈川県八飛市は架空の自治体であるが、八頭尾山とはおそらく古事記に登場する八岐大蛇(やまたのおろち)から命名したものだ。
渡辺あやが住んでいる島根県が出雲国と言われた頃から伝わる神話だ。
八岐大蛇が毎年山から降りていって食べていったのは、地元の神アシナヅチとテナヅチの娘達である。
8人の娘の内、すでに7人犠牲にしていたところに、高天原から追放されてやってきたスサノオノミコトが、嘆き悲しむ夫婦神の最後の娘クシナダヒメを救うために戦った有名な神話である。
特に渡辺あやの描く人間像は、デビュー作から誰一人清廉潔白な描き方をしないので、余計に信用できる書き手だと言える。
だから玄人好みの側面もあるし、厳しい視点のシナリオだが、最終的には面白いと筆者は断言できる。
最初に長澤まさみが読んだ2話目を読んで続きがどうしても読みたくなったはずだ。
この先自分が演じる浅川恵那はどうなるのか?
長澤まさみは面白いと感じたからこそ、引き受けた。
その確信を視聴者の一人である筆者も後を追うように続きが観たい。
※最新記事の公開は筆者のFacebookとTwitterにてお知らせします。
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①キー局ではないので、内容に忖度しなくて良い
関西テレビは、フジテレビをキー局とする関西地方のTV局である。
月曜22時のドラマ枠は以前から持っている。
筆者が覚えている1番古い番組は眞栄田郷敦の父親である千葉真一主演の『影の軍団幕末編』だ。
次からバラエティ枠に変わり『三枝の愛ラブ爆笑クリニック』、『SMAP×SMAP』、いくつかのバラエティを経て、現在はドラマ枠に戻った。
更に加えると火曜21時の枠も持っている。
そこで放送された佐野亜裕美プロデュースの『大豆田とわ子と三人の元夫』が
第59回のギャラクシー賞(放送文化に貢献した優秀な番組・作品、個人、団体)を受賞したことが大きかった。
いよいよ企画にGOサインが出たようだ。
②長澤まさみが主役を引き受けてくれた
企画を通す場合、誰が主役かどうかは重要である。
TBSで企画していた時点から2話目まで書かれており、それを長澤まさみ本人にみせて
「やりたい」と返事が来たことから、諦めずに企画を温めることが出来たそうだ。
(長澤まさみ イラストby龍女)
長澤まさみは2020年7月に公開された『MOTHERマザー』(監督・脚本は大森立嗣。共同脚本は港岳彦)で実在の事件を元に、殺人事件の犯人の少年の母親を演じた。
強烈な毒親であった。
日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を獲得しているので、年月を経てやりやすくなったと思われる。
③政権が変わった
安倍政権下では放送局が自主規制してしまう忖度が横行した。
総務大臣は放送局を管轄する。
当時の大臣の高市早苗が、もし政府に批判的な放送局があった場合、許可をしないと思わせる発言をしたことからも、間接的に圧力をかけていた。
ところが、その高市早苗の選挙区の奈良で2022年7月8日に安倍晋三元首相が暗殺され、影響力が急激に弱まった。
偶然かもしれないが、
「安倍晋三の死がパンドラの箱を開けた」(ジャーナリスト有田芳生の発言)
ようである。
ギリシャ神話で、神から火を盗んだプロメテウスに怒ったゼウスが禍をもたらすために送り込まれた女性がパンドラである。
パンドラは箱を持って、プロメテウスの弟のエピメテウスと結婚した。
エピメテウスは、パンドラとイチャイチャしているときに、箱を開けてしまった。
そこから様々な災いの元が放出したが、「エルピス(一般に希望という意味で捉えられている)」だけが箱に残った。
ドラマのタイトルはエルピスの意味も含んだ言葉を示している。
では、どうしてこのドラマを作りたいと考えたのだろうか?
『カーネーション』を好きなドラマの一つに挙げるくらい、佐野亜裕美は渡辺あやと一緒に仕事がしたかったそうだ。
当初はラブコメでもしようかと思っていたが、話し込んでいく内に政治に対する不満の方で話が盛り上がってしまい、社会派の方向へ路線変更していったそうだ。
しかし、企画が立ち上がった時機が悪かったのは前述の通りである。
しかしこれはあくまでもドラマである。
どんなにシリアスな内容でも、フィクションという形だからこそ表現できるものがある。
ドラマに登場する神奈川県八飛市は架空の自治体であるが、八頭尾山とはおそらく古事記に登場する八岐大蛇(やまたのおろち)から命名したものだ。
渡辺あやが住んでいる島根県が出雲国と言われた頃から伝わる神話だ。
八岐大蛇が毎年山から降りていって食べていったのは、地元の神アシナヅチとテナヅチの娘達である。
8人の娘の内、すでに7人犠牲にしていたところに、高天原から追放されてやってきたスサノオノミコトが、嘆き悲しむ夫婦神の最後の娘クシナダヒメを救うために戦った有名な神話である。
特に渡辺あやの描く人間像は、デビュー作から誰一人清廉潔白な描き方をしないので、余計に信用できる書き手だと言える。
だから玄人好みの側面もあるし、厳しい視点のシナリオだが、最終的には面白いと筆者は断言できる。
最初に長澤まさみが読んだ2話目を読んで続きがどうしても読みたくなったはずだ。
この先自分が演じる浅川恵那はどうなるのか?
長澤まさみは面白いと感じたからこそ、引き受けた。
その確信を視聴者の一人である筆者も後を追うように続きが観たい。
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