長澤まさみ主演『エルピス-希望、あるいは災い-』を制作するために『カルテット』のプロデューサー佐野亜裕美がTBSを辞めて関西テレビに転職した理由とは?

2022/11/11 17:00 龍女 龍女

TVドラマプロデューサーの佐野亜裕美(1982年生れ)は、2020年6月にTBSから関西テレビに転職した。


(プロデューサーの佐野亜裕美 イラストby龍女)

TBS時代の代表作は『カルテット』(主演・松たか子。脚本・坂元裕二。2017年)である。


(『カルテット』の松たか子 イラストby龍女)

TBSを辞めるときに転職先を関テレに勧めた脚本家が坂元裕二だ。
佐野亜裕美が関西テレビに移った翌年に坂元裕二・松たか子と再び組んで作ったのが
『大豆田とわ子と3人の元夫』である。


(坂元裕二 イラストby龍女)

局を変えたのは、どうしてもやりたい企画がTBSに在籍していては出来なかったからである。
1本は後にNHKで放送された『17歳の帝国』(脚本・吉田玲子。2022年5月~6月)。

そして、もう1本がこの『エルピス-希望、あるいは災い-』である。


TBSでは困難だった理由は三つほど挙げられるだろう。

①テーマが冤罪事件だから
佐野亜裕美は以前から、冤罪や死刑囚の裁判記録などを集めていたそうだ。
イラストの引用先はTBS時代に日曜劇場の『この世界の片隅に』(2018年7月~9月。脚本・岡田惠和)を担当したときのインタビュー記事だ。
その中でも居場所というキーワードでこの件に触れている。
ドラマの時代設定が2018年の春なので、この頃に具体的に企画が始まったのかもしれない。
モデルになった事件は、1990年に栃木県のパチンコ店で失踪した少女が翌日死体で発見された『足利事件』である。
しかしあくまでもモデルなので、被害者の年齢や時系列は実際とずらしてある。

②内容にマスコミ報道の批判が含まれるから
マスコミの過熱報道によって、犯人に疑われた人は地下鉄サリン事件(1995年)が起こる直前までの『松本サリン事件』を始めとして数例ある。
TBSは報道局として一定の評価を受けてはいるが、幾つか黒歴史が存在する。
オウム真理教に坂本弁護士一家殺人事件のきっかけを与えてしまった情報提供。
③で触れる不祥事もある。

③更に政府批判もしている
筆者はまだ現時点では3話しか観ていないが、鈴木亮平が演じている斉藤正一のモデルは2人いると思われる。
山口敬之だ。TBSのワシントン支局長まで出世したが、2015年の4月3日に知人女性に対して同意なく性行為に及んだ事件をきっかけに退職に追い込まれた。
安倍晋三を始めとする自民党幹部と親しい記者で有名だ。
もう1人が、和田圭(1952~2021)だ。同じく官邸付きの記者も経験している。フジテレビの解説委員まで出世した。
一時期フジテレビアナウンサーの有賀さつき(1965~2018)と結婚していた。
斉藤正一は、麻生太郎元首相と平沢勝栄(警察官僚出身の政治家。安倍晋三の元家庭教師)をモデルにしたと思われる大門雄二副総理(山路和弘)と親しい官邸付きの報道局のエースとして登場している。


次のページでは今になって放映できた理由も三つ挙げる。

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