宮崎駿と庵野秀明、アニメ界巨匠2人が選んだ松任谷由実(荒井由実)の50周年ベストアルバム『ユーミン万歳』にも収録されたあの2曲とは?

2022/10/7 17:00 龍女 龍女

『VOYAGER〜日付のない墓標』は1984年2月1日に発売された20枚目のシングルである。

小松左京(1931~2011)を中心にSF作家が集まり脚本を仕上げた東宝の大作
『さよならジュピター』の主題歌である。
筆者の記憶が間違いなければ、公開後、80年代半ばは何度かTVで放送されている。
幼少期に何度か観たはずだが、どんな内容だったかは覚えていない。
主役は三浦友和(1952年1月28日生れ)だったのは覚えているのだが。

監督は橋本幸治(1936~2005)
総監督は小松左京。
特撮部分を担当する特技監督は川北紘一(1942~2014)。

庵野秀明は特撮映画のファンとしても有名だ。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』と称されるTVアニメから再構築された4部作は
庵野秀明が総監督。
アニメ監督鶴巻和哉(1966年2月2日生れ)を始めとする複数の演出体制をとっている。
この作り方にも大きな影響を与えている。

松任谷由実はSF的な世界観の作詞を、これ以降の楽曲でも何度も手がけている。
そのきっかけは小松左京にレクチャーをうけたからだそうだ。
筆者は更に遡ると、ミュージカル『ヘアー』の中の曲『アクエリアス』(水瓶座のこと)もどこかで脳裏に残っていたからだと考えている。
新曲の『Call me back』もその延長線上にある。

『さよならジュピター』が制作できたきっかけは1977年5月25日にアメリカで公開された『スター・ウォーズ』から始まるSF映画ブームである。

庵野秀明は何でこの楽曲を選んだのか?
筆者は知るために、ヱヴァンゲリヲン4部作をアマゾン・プライムで一気に観た。
あれこれ難しい展開なので、最初は???まくりだった。
テーマに関しては
「なんだ!スター・ウォーズと同じじゃん」
と観終って思った。

スターウォーズは、スカイウォーカー家の確執を描いている。
エヴァンゲリオンは碇ゲンドウと碇シンジの親子の確執が描かれている。
キリスト教の世界観に基づいて、使徒とロボット生命体のようなエヴァンゲリオンの戦いを描いている。

エヴァンゲリオンは、ウルトラマンとガンダムを合わせた曲線と直線を組み合わせたデザインだ。
庵野秀明は宮崎駿監督の名作『風の谷のナウシカ』の巨神兵を描いたアニメーター。
巨大生物を描かせたら天下一品なのである。

一方でエヴァンゲリオンに乗る14歳の少年少女達はまるで特攻隊の若者のようだ。
『VOYAGER〜日付のない墓標』は戦士の恋人の立場から描かれた歌詞。
映画の本編中では綾波レイ役の林原めぐみ(1967年3月30日生れ)が歌う。
ちなみに荒井由実時代のプロデューサーの村井邦彦の代表作の一つ『翼をください』も第2作の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の挿入歌に起用されている。
それを歌っているのも林原めぐみである。

綾波レイは、碇シンジの母親、旧姓綾波ユイのクローンでもある。
感情がまだ理解できないキャラクターとして設定されている。
その役に合わせて歌唱しているので、機械の声のようなトーンで歌っている。
元々の松任谷由実の声のトーンに近い。
彼女の歌唱の特徴であるノンビブラート唱法は機械的な歌に聞こえる。
AIによる音声合成ソフトとの親和性も高い。


(松任谷由実 イラストby龍女)

松任谷由実は歌手としては音痴ではない。
それよりも、喉がか弱かったのでビブラートをかけて歌うと、ちりめんビブラートと呼ばれるか細い声が痛々しく聞こえてしまう。
そこで村井邦彦によってデビュー前にボイストレーニングに行かされて、ノンビブラートに改良させた。
結果その事で得したことがある。
それは歌詞のメッセージが直接届くことである。

しかし彼女にとっては歌はコンプレックスでもあった。
衣装を派手にして学芸会を意識したライブ活動を展開した。
ユーミンはとにかくオシャレだ。
歴代のレコードジャケットもアートコレクションとしても抜群なのである。
このようにヴィジュアルが充実してきた音楽活動の方向性は全ての面で売り上げの上昇に繋がった。
音楽活動とは一見関係なく見える美大での勉強が役に立っている。
歌詞の内容も感情表現にしても、具体的なモノに感情を乗せてくる。
聴いていると、絵が浮かんでくる。
もしシナリオの勉強をしたら、間違いなく長編のドラマや映画の脚本を作れるはずだ。
これらのユーミンの作品に、数多くのクリエイターもファンも刺激を受けてきた。

最後に筆者もこう叫びたい。
「ユーミン万歳!」


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